「神戸は今後もしっかりイニエスタとの関係をキープすべき。鹿島にとってのジーコみたいな存在になるのが理想だ」 「神戸は今後もしっかりイニエスタとの関係をキープすべき。鹿島にとってのジーコみたいな存在になるのが理想だ」

あれだけのスーパースターがよく日本に来てくれた。それに尽きるね。

イニエスタ(39歳)が7月1日の札幌戦をもって神戸を退団する。振り返れば、2018年に彼が来日すると聞いたときは衝撃だった。バルセロナやスペイン代表での実績はもちろん、その年のロシアW杯にも出場する現役バリバリの代表選手だったからね。

年俸(約32億円)もインパクトがあった。サッカーファンじゃなくても、どんなプレーをするのだろうと世間の注目を集めた。

実際に試合に出れば、美しいシュートも決めたけど、やっぱり彼の魅力はパス。正確なロングパスやミドルパスはもちろん、スルーパスで決定的なチャンスを何度も作った。誰もが一度でいいからイニエスタを見に行きたいとなり、ホームはもちろん、アウェーの試合もチケットが完売した。

注目していたのは選手も同じで、最初の頃は味方の選手も対戦相手の選手も、試合中なのに彼のプレーに見入ってしまうことがあった。リスペクトしすぎなのか、相手の選手が守備で寄せるタイミングが遅れることもあったね。

彼の体形(171㎝、68㎏)は日本人に近いから、しっかりとした技術があれば世界でも十分に通用する。そういうお手本にもなった。

また、彼の影響で日本人FWも育った。それが古橋。イニエスタと同じ時期に神戸に移籍して、もともといいものを持っていたけど、イニエスタとのコンビでさらに成長した。いいパスが出てくれば決められるとね。イニエスタと組むことで何かをつかんだんじゃないかな。それが代表入りのきっかけになったと思うし、セルティックでの活躍にもつながった。

残念だったのは、神戸に続いてほかのクラブが大物外国人選手を獲りにいかなかったこと。神戸が獲るなら俺たちも獲るぞと刺激を受けるライバルが出てきてほしかった。せっかく鳥栖にフェルナンド・トーレス、神戸にイニエスタとJリーグがサッカーファン以外からも注目を集められる状況になったのに、それを継続できなかったのはもったいなかった。

また、神戸のチーム作りにしても、監督を次から次に代えて、外国人選手も獲っては切り、獲っては切りを繰り返して定着しない。あれではイニエスタがいても強くならない。もっと、じっくりと腰を据えた強化ができなかったのかなと思う。

今季の神戸は体力が必要なハードワークのサッカーに変えて成功した。いわゆる"脱バルサ"だね。このサッカーではイニエスタのプレースタイルや年齢的な衰えを考えれば厳しい。出場機会は激減。それで自ら退団を申し入れた。プロなら仕方のない判断だ。

ただ、これで関係が切れてしまうのはもったいない。退団発表会見のときに神戸の三木谷会長は、「今後もクラブとの関係は続く」と言っていたし、イニエスタ本人も「今後は違った角度からクラブをサポートしていきたい」と言っていたけど、鹿島にとってのジーコみたいな存在になってくれれば理想だ。まだまだ日本サッカーに貢献してもらいたいね。

7月1日の札幌戦、神戸にとっては優勝を狙うためにも負けられない大事な一戦だけど、この試合くらいはイニエスタを先発で出場させ、いけるところまで使ってほしいね。そのくらいの価値はあると思う。

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