大谷翔平選手の活躍が話題です。話題になりすぎていて、どこか麻痺している自分がいます。
まずはオールスターに3年連続で選出。ア・リーグ最多の260万票を獲得しましたね。現地時間6月21日のドジャース戦では7回を投げて1失点。味方の援護が得られず負けがついてしまいましたが、12三振と圧巻のピッチングを見せました。
6月23日時点で打率.292 、24本塁打、10盗塁と、日本人初のメジャーでのトリプルスリー(3割・30本塁打・30盗塁)も現実的に狙える成績ですが、実は、メジャーではトリプルスリーはあまり話題になりません。
ファンが注目するのは「三冠王」です。
メジャーの三冠王といえばベネズエラの英雄、ミゲル・カブレラ選手。2012年には45年ぶりとなる三冠王を獲得し、40歳になった今なお現役で活躍するレジェンドです。カブレラ選手は今シーズン限りでの引退を表明していますから、彼の偉業は今後しばらく語り継がれることでしょう。
それでは、今シーズン絶好調の大谷選手は三冠王を狙えるのでしょうか。答えは「わかりません」。
打者としては毎日のようにホームランを打っているように感じるほどですが、シーズン中はもちろん調子の波があります。昨年は真っ直ぐが打てない時期があり、6月半ばには復調しましたが苦しみました。
「投手・大谷」は開幕からすごくよかったものの、5月は苦しみました。シーズンが進むにつれて、相手チームの打者も大谷選手の球に慣れてきますし、徐々に調子も上げてくるのが一般的だからです。と、どちらも悲観的な見方をしてしまいましたが、もちろんそれをあっさり覆すような活躍を期待しています!
ただ、大谷選手の活躍は数字だけでは語れません。メジャーの"レジェンド"ベーブ・ルースさんが比較対象になるくらい、野球史に残るすごい選手であることは間違いなく、「100年に一度の選手」という表現もまったく大袈裟だとは感じないです。
大谷選手は、歴史を作ってきました。昨年MVP争いをしたアーロン・ジャッジ選手も、ずっと更新されていなかったホームラン記録を61年ぶりに塗り替えましたが、大谷選手は二刀流で活躍し、それによって先発投手が指名打者(DH)を兼務できる「大谷ルール」が作られたりしました。
メジャーの試合中にも、大谷選手の偉大さが垣間見られます。それは、彼が塁に出た時に、相手チームの選手が大谷選手と話したがる様子でもわかります。
昨年のオールスターでも、そうそうたる選手たちが大谷選手と写真を撮りたがるのを見て、あらためてすごいなと。WBC決勝直前のロッカールームのペップトークで「アメリカに憧れるのはやめましょう」とみんなに呼びかけたシーンはとても印象的でしたが、今や大谷選手はメジャーリーガーから憧れる存在なのです。
人間らしさを全開にしているところも、今年の大谷選手の魅力ですね。これまでは「品行方正すぎる」という声もあったようですが、今年は試合中でも感情をむき出しにするシーンが多く見られて、ますますファンが増えているのを感じます。
個人的に、大谷選手の原動力は何なのか知りたいです。一般的な社会人であれば、仕事の後のビールだったり、家族だったり、あるいはお金だったり、いろいろな目的があると思います。でも、大谷選手は野球をすることが楽しくて、そこで完結していそうなところがすごい。未来からやってきた"猫型ロボット"が少年を助ける有名な漫画がありますが、もしかすると大谷選手は、未来からやってきた"大谷型ロボット"である可能性も否定できません。
冗談はさておき、今後の大谷選手は果たしてどうなるのでしょう。
エンゼルスでプレーオフに進めたらいいですが、やはりワールドシリーズという最高峰の舞台で戦うところを見たいですし、本人もそこに行きたいと思っているはず。「ヒリヒリするシーズン」を求めて、さらなる高みを目指すんでしょうね。
さらに、タイトルもしっかり狙っていると思います。大谷選手がこれまで獲得したタイトルはMVPのみ。今年は打撃で複数のタイトルを狙えそうな位置につけています。ここまできたら三冠王を狙っていただきたいです!
先ほどは「わからない」と言いましたが、最後に大予想。大谷選手が三冠王を取る確率は......35%!これからも、大谷選手から目が離せない日が続きそうです。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン