三笘が! 久保が! 伊東が! 堂安が! エルサルバドル、ペルーとの親善試合2連戦、前線の選手がことごとく躍動し、ゴールを量産した。第2次森保ジャパンが掲げる攻撃的サッカーへのシフトは今のところ順調そうだ。
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■W杯と同じ布陣でもチームは攻撃的に!
今年3月の親善試合(ウルグアイ戦、コロンビア戦)で再始動した森保ジャパン。その2試合では勝利を収めることができなかったが(1分け1敗)、今回の6月の2連戦でカタールW杯後の初勝利を目指し、15日にエルサルバドル代表、20日にペルー代表を迎え撃った。
第2次森保ジャパンが目指すサッカーは、「自分たちが主体となってゲームを運ぶ、攻撃的なスタイル」だ。ベスト16で敗退したカタールW杯では、典型的な「堅守速攻型の守備的スタイル」で強豪のドイツとスペインを相手に〝ジャイアントキリング〟を起こした。
だが、2026年の北中米W杯(アメリカ、メキシコ、カナダの3ヵ国共催)では、より攻撃に重きを置いたサッカーでベスト8以上を目指すというわけだ。
今回の2試合でも攻撃における機能性に注目が集まった。特に、森保監督がどのような選手起用とチーム戦術によって、自分たちが目指す攻撃的スタイルを実践するのかが最大の焦点となったが、2試合で採用された布陣と選手の起用方法に、森保監督の狙いがはっきりと見て取れた。
まず、今回の2連戦で森保監督が採用した基本布陣は4-3-3。この陣形は、森保ジャパンがカタールW杯アジア最終予選の途中から採用したことでも知られているが、当時は中盤に遠藤航、守田英正、田中碧の3人を配置。いずれも守備能力の高いボランチタイプの選手だったため、「守備的布陣」とされた。
しかし今回のエルサルバドル戦では、守田、旗手怜央、堂安律を4-3-3の中盤に起用。続くペルー戦でも、遠藤、旗手、鎌田大地の3人を先発させている。
つまり、通常はトップ下やウイングなど、前線でプレーする攻撃能力の高い堂安や鎌田を中盤(右インサイドハーフ)に配置したことで、同じ4-3-3を攻撃的な布陣へと変化させたのである。
では、森保監督が今回テストした攻撃的な4-3-3は、実際にどのように機能したのか。2試合それぞれで確認してみたい。
■「永遠の課題」も解消!? 多彩な得点パターン
15日に対戦したエルサルバドルは、最新のFIFAランキングで75位。同20位の日本にとってはかなり格下の相手だったが、日本が開始早々の1分にフリーキックから先制した。
その直後の3分には、相手DFのファウルによってPKを獲得し、それを上田綺世が決める。しかも、ファウルしたDFは退場処分となったため、日本は2点リードした状況で試合を優位に運ぶことができた。
そんなアドバンテージがあった中、25分に久保建英が、44分には堂安が加点。後半も相手を圧倒し続け、中村敬斗の代表初ゴールと、スコットランドリーグ得点王の古橋亨梧のゴールもあって6-0と圧勝した。
もちろん「勝って当然」の相手にひとり多い状態で戦ったので、この結果について驚きはない。ただ、それを前提としても、日本が見せた攻撃のバリエーションは特筆すべきものがあった。
谷口彰悟が挙げた先制点は、森保ジャパンの「永遠の課題」とされていたセットプレーから生まれたもの。そのほか、敵陣に押し込んだ中で横幅を使ってから決めた久保のゴール、GKからのロングキックを起点に縦に速く攻めたことで生まれた堂安のゴール、相手GKのミスパスからショートカウンターで奪った中村敬のゴール、そして相馬勇紀のピンポイントクロスをヘッドで叩き込んだ古橋のゴールと、すべてのゴールが異なる攻撃パターンから生まれた。
とりわけ、カタールW杯では実力を発揮できずに終わった久保が、自身が得意とするポジションの右ウイングで躍動。所属クラブのレアル・ソシエダ(スペイン)での成長ぶりを存分に発揮し、三笘薫、堂安との同時起用で、お互いの良さを引き出し合うこともできていた。
試合後、この試合で1ゴール2アシストをマークした久保が「やりたい放題だった」と振り返ったのもうなずける。
チームのシュート数でも、エルサルバドルの4本に対し、日本は20本。ボール支配率でも上回っており、ほぼパーフェクトで非の打ちどころがない試合内容だったことは間違いない。
■ボールを持たせつつ、決定機をつくり続ける
その5日後に対戦したペルーは、FIFAランキング21位。同じ南米勢としては、3月に対戦したウルグアイやコロンビアよりも実力で劣るが、日本とはFIFAランキングで見てもほぼ同格だ。そういう意味で、日本の攻撃的サッカーの機能性を確かめるためには「もってこい」の対戦相手だった。
日本はGKを含め、エルサルバドル戦から先発7人を変更。立ち上がりこそ互角の攻防を強いられ、前半12分には相手のロングカウンターを受けてピンチを招いたが、それ以降は危なげないゲーム運びを見せた。
前線から積極的に守備をすることを控え、相手のカウンターアタックによってピンチを招かないように守備ブロックを形成する戦い方に舵(かじ)を切ったことが功を奏した格好だ。
この戦い方のメリットは、敵陣でボールを保持されることを前提に中盤でブロックを形成することで、相手の前進ルートを遮断できること。そして、相手が自分たちの守備網に引っかかってボールを奪取したら、縦に速い攻撃でフィニッシュに持ち込みやすいという点だ。
実際に、最終的に4-1で勝利した日本のボール支配率は、ペルーの58.2%を下回る41.8%だったが、シュート数は日本の10本に対し、ペルーは4本のみ。カタールW杯で見せた「少ないチャンスをモノにする」堅守速攻と違い、今回はボールを相手に持たれた日本がチャンスをつくり続け、試合内容で完勝したことは明らかだ。
縦に速い攻撃が何度も炸裂(さくれつ)したこの試合において、最も際立っていたのは、2試合連続で左ウイングとしてスタメン出場した三笘だ。
エルサルバドル戦でも久保のゴールをアシストした三笘は、このペルー戦でも傑出したパフォーマンスを披露。前半37分には、自陣からのカウンターで得意のカットイン(サイドから中央への斜めのドリブル)によって2点目のゴールを決めたほか、63分にもショートカウンターから伊東純也の3点目のゴールをアシストした。
3バックシステムを基本に戦ったカタールW杯では、三笘は左ウイングバックで〝ジョーカー起用〟されたが、第2次森保ジャパンでは3月の2試合に続き、今回も左ウイングでプレー。
所属のブライトン(イングランド)でも同じポジションでセンセーショナルな活躍を見せたが、「三笘の左ウイング起用が、いかに大きな武器になるか」が再証明されたといえる。
それも含めて、森保ジャパンはこの2試合で攻撃における確かな手応えをつかんだはず。9月に予定されるアウェーでのドイツ戦がますます楽しみになってきた。