「移籍先で出場機会を得られない状況が続くなら、それは移籍ではなく留学。さっさとJリーグに戻った方がいい」「移籍先で出場機会を得られない状況が続くなら、それは移籍ではなく留学。さっさとJリーグに戻った方がいい」

今夏も多くの日本人選手が欧州に渡ることになりそうだ。

すでに正式発表された伊藤(新潟→ベルギー・シント=トロイデン)、町野(湘南→ドイツ2部・キール)のほかにも、小川航(横浜FC)、半田、山本理(共にG大阪)、松木(FC東京)らの名前が取りざたされている。

海外組はブランド。現状、活躍度が同じならJリーグでプレーしている選手よりも海外組のほうが日本代表に呼ばれる可能性は高い。また、お金もたくさん稼げる。選手たちが少しでも早く欧州に渡りたいと考える気持ちは理解できるよ。

また、海外移籍のハードル自体もずいぶん低くなった。昔は日本代表の主力クラスの選手でも、露骨にお土産(ジャパンマネー)を求められていたからね。そうした時代に比べれば、日本サッカーがある程度認められたということだろう。

だから、Jリーグで結果を残していない選手でも移籍できる。クラブのレベルを問わなければ、誰でも欧州に行ける。

そして、それは悪いことじゃない。どんな形でも目の前にチャンスがあるなら挑戦すべきだし、より多くの選手にそういう機会が与えられるわけだからね。今夏に海外移籍する選手たちにも大いに期待したい。

ただ、いつも言っていることだけど、プロは試合に出てなんぼ。そこは忘れないでほしい。もし移籍先で出場機会を得られない状況が続くようなら、それは移籍ではなく留学だ。そんな状態でクラブを渡り歩いて、ダラダラと何年も欧州にしがみつくのなら、さっさとJリーグに戻ったほうがいい。

若い選手は試合に出ることで一気に伸びることがある。逆もまたしかりで、試合に出なければさびつくのも早い。やっぱり練習だけではうまくならないからね。

外国人枠の問題もないし、欧州よりはJリーグの方が試合に出られそうなクラブを探しやすいはず。そこからまた這い上がって、再挑戦すればいいだけの話だ。何も恥ずかしくない。

実際、今季、豊富な運動量で神戸の中盤を支えている齊藤(昨季途中までロシアのルビン・カザン所属。G大阪を経て今季、神戸に加入)などは、またチャンスがありそうだよね。

もちろん、欧州でプレーすることにこだわって、結果的にチャンスをつかんだ選手もいる。

例えば鎌田。最初に移籍したフランクフルト(ドイツ)ではほとんど試合に出られなかったものの、レベルの落ちるシント=トロイデンに移籍して、そこで試合に出て、しっかり結果を出して、再びフランクフルトに戻って今度は主力になった。でも、これはレアケース。

移籍時には大きなニュースになったのに、今はサッカーファンにさえ「そういえば、そんな選手もいたね」「どこにいるの?」と忘れられてしまう選手のほうが多い。そういう状況はさすがにどうかと思う。もったいないよ。

Jリーグのクラブ側にしても、強化としてはもちろん、話題性でもうまみがあるのだから、欧州でくすぶっている選手、宙ぶらりんになっている選手を獲りにいく動きがもっとあっていい。別に、古巣じゃなければ獲得に名乗りを挙げてはいけないというルールはないのだから。

将来有望な若手をタダ同然で獲られてばかりではファンも寂しい。リーグ全体の価値を高める意味でも一考の余地があると思う。

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