前半戦で印象的だったボランチをフカボリ!前半戦で印象的だったボランチをフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第63回のテーマは、2023年J1リーグ前半戦で印象的だったボランチコンビ。近年の国内のボランチ事情に触れながらとくに印象に残っている、あるいは注目しているボランチを福西崇史が解説する。

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ボランチのコンビというのは、二人のタイプによってバランスの取り方が変わってくるものです。最近のJリーグを見ていると、守備での役割に重きを置いて、守備的な二人を並べたり、攻撃時の縦へのスピードが上がったことで高い機動力によって前に出ていける選手と、それをカバーできる選手でき組ませたり。そういった傾向が強くなってきたと感じています。

一方でジュビロ磐田の遠藤保仁のような"ゲームを作れるボランチ"という存在が少なくなってきていると感じています。例えば首位のヴィッセル神戸は守備の強い山口蛍と齋藤未月を並べて、ボランチから作るのではなく、トップの大迫勇也に当てて、そこを起点に強力な前線のタレントで攻め切るサッカーをしています。

今季はそれが見事にハマって、ここまで好調を維持しています。ただ、仮に日本代表がそうしたサッカーを選択して世界のトップレベルと対戦するとき、あるいは極端に引いて守られたとき、それだけでは打開し切れない場面が訪れることもあります。そこでゲームを作れるボランチがボールを回して、全体をコントロールしながら打開の糸口を見つける必要性が出てくると思います。

そうなったとき、今のJリーグにそういったボランチがいるかと言うと、昔よりもなかなか見つけるのが難しいというのが現状の国内に対する見方です。遠藤をはじめ、小笠原満男や中村憲剛、名波浩など、一昔前は国内にゲームメイクの名手と言える選手たちがJリーグを彩ってきましたが、時代とともに減少しているのは寂しくも感じます。

そんな時代の中で、個人的に注目しているボランチは浦和レッズの伊藤敦樹です。伊藤が優れていると感じるのはボール奪取能力が高くて、前線に出ていくタイミングが非常に良く、得点も取れる。さらに185cmと大柄であること。世界のトップを相手にする場合、サイズがあるというのは重要な要素です。

ロングボールに対してボランチがヘディングで勝てるとDFラインは非常に助かるし、上がるタイミングが良いのでクロスに合わせることもできる。もちろん攻守のセットプレーにおいても貴重な高さになります。大柄な良いボランチが台頭してこないかと常日頃探してきましたが、伊藤のポテンシャルの高さには非常に注目しています。

コンビを組む岩尾憲とのバランスも優れていると思います。岩尾は気の利く選手で、ゲームメイク能力も高い。うまく前線に行かせてあげるようバランスが取れるので、伊藤も思い切って前線に出ていけています。縁の下の力持ちというタイプで、伊藤・岩尾は非常に高く評価しているコンビです。

バランスの良いボランチといえば、横浜F・マリノスの喜田拓也と渡辺皓太はJリーグでは屈指のコンビです。縦に速い攻撃の中でも渡辺は前線を追い越していくだけの機動力と運動量があって、高いテクニックでチャンスを作れることができる。喜田はそこをうまくカバーできるし、逆に喜田が前に出れば、渡辺もカバーに回れる。互いを補い合えるバランス感覚が抜群で、攻守において横浜FMを支えているコンビだと思います。

名古屋グランパスの米本拓司と稲垣祥のコンビにも触れないわけにはいきません。キャスパー・ユンカー、永井謙佑、マテウス・カステロという強力な3トップを活かす堅守速攻で好調なシーズンを送る名古屋ですが、そのスタイルを屋台骨として支えるのが米本と稲垣の二人です。

毎試合のように尋常じゃない運動量と高い守備能力によって、3トップだけでなく、アグレッシブに攻撃参加するウイングバックの背後など、ピッチを広範囲にカバーして守備のバランスを保っています。さらに米本が鋭い読みで積極的にインターセプトを狙ってカウンターの起点になると稲垣は米本が空けるエリアをカバー、あるいはボールを奪った稲垣がその勢いで前線まで上がってフィニッシュに顔を出すと米本が後ろをカバーする。

圧倒的な守備をベースにチームのバランスを取るだけでなく、攻撃的な選手たちを思い切り前へ押し上げることができる米本・稲垣は、今季を象徴するボランチコンビだと思います。

3組ともタイプが異なるコンビですが、それぞれが今の好調なチームを攻守に支える存在であることは共通しています。後半戦もぜひ注目して見てもらえればと思います。

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