未来の日本を背負うスラッガーの闘いがアツい夏の甲子園!未来の日本を背負うスラッガーの闘いがアツい夏の甲子園!

盛り上がりを見せている夏の甲子園。今大会ぜひ注目したいのは一塁手のスラッガーの活躍! そのほかにもさまざまな見どころを紹介します!

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■今大会は打の闘いに注目!

東の佐々木、西の真鍋。今夏の甲子園に出場する大物といえば、この二大巨砲だ。

佐々木麟太郎(花巻東・岩手) 高校通算140本塁打を放つ巨漢スラッガー佐々木麟太郎(花巻東・岩手) 高校通算140本塁打を放つ巨漢スラッガー

佐々木麟太郎(花巻東・岩手)は高校生として史上最多となる通算140本塁打を放つ巨漢スラッガー。チームの佐々木洋監督との親子鷹で、中学時代の恩師は大谷翔平(エンゼルス)の父・徹氏とドラマ性も抜群。「型にはまるのは好きではない」という本人の言葉どおり、身長184㎝、体重113㎏という規格外のサイズを誇る。

バットに当たった瞬間「ドカーン!」という爆発音とともに、全方位のフェンスを軽々と越える打球を放つ。ただパワーを求めるだけでなく機能性も重視したトレーニングを積んでおり、下級生時は鈍重だった身のこなしが少しずつ機敏になってきている。

ただし、現段階では骨が成長中ということもあって、故障が多いのが難点だ。今夏の岩手大会でも背中の痛みを訴えて先発メンバーから外れた試合があった。まずは体調を少しでも回復させ、自身2度目の甲子園で初めてのアーチを架けたいところだ。

真鍋 慧(広陵・広島) 身長190cm、体重93kgの大型スラッガー真鍋 慧(広陵・広島) 身長190cm、体重93kgの大型スラッガー

真鍋 慧(広陵・広島)もまた、身長190㎝、体重93㎏の大型スラッガー。高校通算本塁打数は62本と佐々木には及ばないものの、素材として佐々木より評価するスカウトもいる。

今年4月に実施されたU-18日本代表候補強化合宿では、木製バットを使いこなして長打性の快打を連発。「普段の練習でも木のバットを使っているので」とプロ入りに向けて意欲的に取り組んでいる。

今春までに甲子園には2度出場し、通算6試合で.476と高打率を残している半面、佐々木と同様に本塁打はまだない。下級生時はライナー中心だった打球が、今は放物線中心へと変わっているだけに今夏に集大成を見せたい。

そして佐々木と真鍋のつばぜり合いは、今秋のドラフト会議にも大きな影響を及ぼすはずだ。聖地でインパクトを残せた者が「秋の主役」になるかもしれない。

佐倉俠史朗 (九州国際大付・福岡) 昨冬減量に成功。打撃に足を使えるようになった佐倉俠史朗 (九州国際大付・福岡) 昨冬減量に成功。打撃に足を使えるようになった

今夏の甲子園は佐々木と真鍋だけでなく、「一塁手の大砲」が数多く出場する。佐倉俠史朗(九州国際大付・福岡)仲田侑仁(沖縄尚学)熊谷陽輝(北海・南北海道)の3人も超高校級の爆発力を秘めた強打者だ。

特に佐倉は1年秋から佐々木や真鍋と比較されてきた注目打者。体重をキープしつつ動きにキレを出した佐々木とは対照的に、佐倉は一時115㎏まで増えた体重を昨冬に100㎏まで減量。「足がそれなりに速くなって、打てるようになりました」と自信を深めている。

高校通算本塁打数は31本。打者としての存在感は佐々木と真鍋の両雄に水をあけられた感はあるものの、自分自身を客観的に見つめるクレバーさも併せ持っている。3度目の甲子園となる今夏、まずは初長打をマークしたい。

山田脩也(仙台育英・宮城) 華麗なフィールディングが見どころの遊撃手山田脩也(仙台育英・宮城) 華麗なフィールディングが見どころの遊撃手

プロ側からの需要が高い遊撃手では山田脩也(仙台育英・宮城)横山聖哉(上田西・長野)中澤恒貴(八戸学院光星・青森)髙中一樹(聖光学院・福島)百崎蒼生(東海大熊本星翔)に注目。

山田は見る者をとりこにする華麗なフィールディング、横山は投手としても150キロ近い剛球を投げる強肩、中澤は雄大なフォロースルーのスイング、髙中はヒットならいつでも打てると言わんばかりのミート力、百崎は長打力と確実性を併せ持つ打撃が光る。

なお、百崎は1年時に名門・東海大相模(神奈川)で脚光を浴びていたが、諸事情で転校。地元・熊本で再出発し、規定のため公式戦に1年間出場できない時期を乗り越えて甲子園出場をつかんだ。

湯田統真(仙台育英・宮城) 最速153キロに加え、高速スライダーも武器湯田統真(仙台育英・宮城) 最速153キロに加え、高速スライダーも武器

髙橋煌稀(仙台育英・宮城) 投手としての総合力が高く、崩れる姿が想像できない髙橋煌稀(仙台育英・宮城) 投手としての総合力が高く、崩れる姿が想像できない

仁田陽翔(仙台育英・宮城) ずばぬけたポテンシャルを持った左腕仁田陽翔(仙台育英・宮城) ずばぬけたポテンシャルを持った左腕

投手では昨夏の王者・仙台育英の充実度が群を抜いている。ベンチ外メンバーを含めると、最速140キロを超える投手は13人。そんな中、湯田統真髙橋煌稀仁田陽翔の3人は最速150キロ超と別格の存在だ。

今春以降に急成長を見せた湯田は最速153キロの快速球に加え、初見では攻略困難な高速スライダーを武器にする。髙橋は投手としての総合力が高く、昨夏の甲子園でも活躍した経験があり崩れるイメージが湧かない。

そして、左腕の仁田は須江航監督が「モノが違う」と語るようにポテンシャルはずばぬけている。今春までは不安定さが目立っていたものの、甲子園連覇のキーマンになりそうだ。

大阪大会決勝で大阪桐蔭を3安打完封した福田幸之介(履正社・大阪)も大会の顔になりうる好左腕。捕手のミットを強く叩くストレートは一見の価値あり。今春のセンバツでは被安打1の快投を見せたものの、制球に苦しみ初戦敗退。今夏は最速151キロをマークするほどスケールアップし、大阪桐蔭をねじ伏せた。

平野大地(専大松戸・千葉) 本領発揮できればドラフト戦線に浮上してくる右腕平野大地(専大松戸・千葉) 本領発揮できればドラフト戦線に浮上してくる右腕

ほかにも右投手では甲子園出場実績のある平野大地(専大松戸・千葉)武内涼太(星稜・石川)は要チェック。共に地方大会では本調子ではなかったが、本領発揮できればドラフト戦線に浮上してくるだろう。

菅井 颯(日大山形) 左足を高々と上げるフォームを取り入れ、才能が開花菅井 颯(日大山形) 左足を高々と上げるフォームを取り入れ、才能が開花

春から夏にかけて出現した新星は菅井 颯(日大山形)森 煌誠(徳島商)近藤愛斗(浜松開誠館・静岡)の3右腕。

菅井は佐々木朗希(ロッテ)ばりに左足を高々と上げるフォームを取り入れたところ、豊かな才能が開花。低めに角度よく突き刺さるストレートと、空振りを奪える縦のスライダーは甲子園でも猛威を振るいそうだ。

森は高い潜在能力に実績がついてこない雌伏の時期を過ごした。今春はU-18日本代表強化合宿に招集されながらも、紅白戦で打ち込まれ辛酸をなめた。だが、最速149キロをマークする剛速球の球威は本物。今夏にかけて安定感も増し、徳島大会では全5試合を一人で投げ抜き、わずか3失点と抜群の内容だった。

近藤は春から夏にかけてパフォーマンスがめきめきと向上し、最速149キロをマーク。夏の静岡大会ではやや状態を崩したものの、決勝戦では交代の打診を断って一人で投げ抜いてみせた。強いプロ志望を秘めており、大舞台でのアピールに期待したい。

■今大会は初出場校が6校と激増!

昨夏の甲子園は初出場校がゼロという異例の大会だった。ところが今夏は一転、6校が甲子園初出場を決めている。春のセンバツ王者の山梨学院や甲子園の常連、大阪桐蔭が敗れるなど、地方大会で異変が相次いだ。

近年の甲子園出場校は特定の高校に偏っており、毎年同じような顔ぶれが並んでいたが、今夏は煮え湯を飲まされてきた新興勢力が奮闘し、初出場切符を手にするケースが続出している。

共栄学園(東東京) 強豪ひしめく東東京を勝ち上がり、見事初出場を決めた共栄学園(東東京) 強豪ひしめく東東京を勝ち上がり、見事初出場を決めた

象徴的だったのは、東東京大会を制した共栄学園。女子校から共学化され、野球部創部18年目にして初めての快挙を成し遂げた。

帝京、関東一、二松学舎大付、修徳と名門や有力校が次々と敗れる中、準決勝、決勝と9回2死から逆転勝ちする快進撃を展開。中学時代に控えや目立たなかった選手を鍛え上げ、運を味方につけて激戦区の頂点に上り詰めた。甲子園でもミラクルは続くのか。初出場校の戦いぶりから目が離せない。

■元プロ野球選手の2世たちも出場

今春のセンバツでは、「清原が甲子園に帰ってきた」と大きな話題になった。かつての大打者・清原和博(元西武ほか)の次男・清原勝児(慶応・神奈川)が甲子園の土を踏み、大喝采を浴びたのだ。

今夏も慶応は春夏連続での甲子園出場を決めたが、地方大会での清原は背番号2桁と控え選手に甘んじている。それでも、衆望を一身に集めたセンバツの第1打席でヒットを放ったように、大舞台になるほど燃えるメンタリティは父譲り。今夏も重要な場面での出番がありそうだ。

元プロ野球選手を父に持つ甲子園球児はほかにもおり、2年生ながら注目選手に挙がる洗平比呂(八戸学院光星)三井雄心(浦和学院・埼玉)は必見。

洗平の父・竜也(元中日)は青森大会で3年連続準優勝という悲運の投手だった。2年生にして早くも2度目の甲子園となる洗平は、最速147キロをマークするなど本格派投手として順調に歩んでいる。

三井の父・浩二(元西武)はプロ通算36勝、54ホールドを挙げた左投手。息子の三井雄心は2年生にして高校通算30本塁打を数える左の強打者。5月に熱中症でダウンして以降、体調不良が続いていたが、今夏は休み休みの起用でも存在感を見せた。

故障のためベンチ外となったものの、元木翔大(履正社)は父・大介(元巨人)の血を引く内野手。加藤愛莉(日大三・西東京)は健(元巨人)を父に持ち、記録員としてチームを支える女子マネジャーだ。

■気になる深紅の優勝旗はどの高校に!?

優勝争いの焦点は「仙台育英の連覇なるか?」に絞られる。昨夏に東北勢として初めて甲子園を制したが、投手陣の3本柱など経験者が多く残る今夏も大きなチャンス。

チームとして「関西基準」を合言葉に、近畿勢に強いライバル心を燃やして取り組んできた。今春のセンバツは準々決勝で報徳学園(兵庫)に延長10回タイブレークの末に敗れているだけに、近畿勢との対戦は特に注目だ。

対抗馬はセンバツベスト4の広陵と、大阪桐蔭を破って甲子園に出場する履正社。広陵はこの1年間で敗れたのは、明治神宮大会の大阪桐蔭戦とセンバツの山梨学院戦の2試合のみ。練習試合は無敗という恐るべき戦績を誇る。

スター候補の真鍋だけでなく、2年生エースの髙尾 響 や強打の遊撃手・小林隼翔らバランスの取れた役者がそろう。

履正社はエース左腕の福田が大阪大会と同様に〝無双状態〟なら、優勝のチャンスは一気に広がる。正捕手で主軸の坂根葉矢斗が故障から復活できれば鬼に金棒だ。

対抗馬として挙げたいのは、共にセンバツ不出場ながら充実した戦力を誇る愛工大名電(愛知)智弁学園(奈良)

愛工大名電は来年のドラフト候補になりうる2年生右腕・伊東尚輝が甲子園でブレイクなるか。チームとして「夏に弱い」イメージが定着していたが、昨夏のベスト8進出で払拭した感があり、期待が持てる。

智弁学園は決勝で2本塁打を放った松本大輝を筆頭に強打者がひしめき、奈良大会5試合で12本塁打をマーク。猛暑で各チームの投手の体力が奪われる中、猛打で流れを呼び込みたいところだ。

投手陣の状態次第では花巻東専大松戸慶応も十分に優勝を狙える。意外なダークホースが優勝旗をさらう可能性もあるだろう。

今回で105回目となる夏の甲子園。灼熱の聖地での激闘から目が離せない。