ほかのアジア勢が苦戦する中、グループリーグ3連勝、しかも無失点での決勝トーナメント進出は上出来だ。
熱戦の続く女子W杯、今回はなでしこジャパン(FIFAランキング11位)のグループリーグでの戦いぶりを振り返りたい。
初戦の相手はザンビア(同77位)。FIFAランキングは低いとはいえ、大会前の親善試合で強豪ドイツに勝ち、不気味な存在だった。でも、フタを開ければ5-0の大勝。シュート数も26対0という一方的な内容だった。
前日には、ライバルのスペイン(同6位)もコスタリカ(同36位)に3-0で快勝。シュート数は46対1だった。この時点でなでしことスペインの勝ち抜けを確信した人は多いだろう。なでしこは次のコスタリカ戦に2-0で、スペインはザンビアに5-0で勝ち、両チームとも早々に決勝トーナメント進出を決めた。
FIFAは女子サッカーの発展のためにW杯の参加国を24から32に増やしたのだろうけど、まだ早かったかな。上位2チームと下位2チームでレベルの差がありすぎた。
その意味で、3戦目のスペイン戦からが本当のW杯。FIFAランキングでも格上だし、過去の対戦成績でも日本はスペインに勝ったことがなかった(4戦1分け3敗)。
試合は立ち上がりからスペインに押し込まれ、このままズルズルと失点してしまうのかなと不安になったんだけど、守ってカウンターのサッカーがハマって4-0という予想外の快勝。
なでしこは相手をよく分析していたのだろうね。スペインは狭いスペースでのショートパスはうまかったけど、ミドルパスやロングパスは正確性を欠き、シュートミスも多かった。そういう特徴を事前にわかっていたのか、なでしこはカウンター狙いで、無理せず意図的にスペインにボールを持たせているように見えた(この試合の日本のボール支配率は21%)。
ただ、さすがのスペインも前半だけで3点も取られるとは思っていなかっただろう。それもシュート3本で3点だからね。ショックは大きいし、なでしこの選手もビックリしたはず。
それでも、守りであれだけ相手を追いかけていたのに、ボールを奪って攻撃に転じた際には、一気にスピードを上げてシュートまで持っていくのは大したもの。スピード、体力、決定力、集中力の全部がそろっていた。素晴らしいプレーを見せてくれたよ。
今回の女子W杯は、開幕直前まで日本でのテレビ中継が決まらないことが話題になった。厳しいことを言えば、グループリーグを3戦全勝で突破した時点でも、世間の盛り上がりはいまいち。まだまだ選手の顔と名前が一致していない人も多い。
男子は負けてもニュースになるけど、女子は勝ち上がらないと大きく取り上げてもらえない。それはなでしこの選手たちもわかっているだろうし、だからこそ、よりいっそう応援したい。
12年前に優勝した時も、一戦、一戦勝ち上がるごとに盛り上がっていった。また、看板選手の長谷川には、澤(穂希)のような存在感のある選手になれる可能性があると僕は思っている。
この原稿の締切り時点で決勝トーナメント1回戦(vsノルウェー)の結果はわからないけど(※)、スペイン戦のようなカウンターサッカーがどこまで通用するか。勝利を願っているよ。
(※)その後日本はノルウェー戦に3対1で勝利し、準々決勝に進出
●セルジオ越後
1945年生まれ。72年の来日以降、指導者・解説者として活躍。活動の詳細は『セルジオ越後 オフィシャルサイト』にて