なでしこジャパンをフカボリ!なでしこジャパンをフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第65回のテーマは、FIFA女子W杯オーストラリア&ニュージーランド2023で躍動した"なでしこジャパン"について。準々決勝でスウェーデンに敗れ、ベスト8で敗退となったなでしこの戦いを福西崇史が解説する。

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オーストラリアとニュージーランドで開催されているFIFA女子サッカーW杯。日本代表の"なでしこジャパン"は準々決勝でスウェーデンと対戦しましたが、1-2で一歩及ばず。惜しくもベスト8での敗退となりました。

大会前は、一時はなでしこジャパンの試合がテレビ中継がされないのではないかと、ピッチ外のところで心配されることもありました。しかし、大会が始まるとピッチ内で選手たちが躍動し、良い意味で大きな話題となりました。

グループリーグ初戦のザンビアはFIFAランキングで77位と、11位の日本にとっては格下に当たる相手でしたが、W杯初戦はどの国にとっても難しく、苦戦する可能性がある中で5-0と大勝できました。

W杯という舞台で自分たちのサッカーに自信を得られて、大会への入り方としてはこれ以上ないスタートだったと思います。良い流れで迎えたコスタリカ戦も前半で2-0と先行し、後半もリードを守り切って2試合通じて無失点での2連勝は見事でした。

そして3戦目のスペイン。優勝候補にも挙げられ、FIFAランキングでも6位と今の日本にとって格上を相手に4-0。カタールW杯で男子がスペインに2-1で勝利した以上に完璧と言える快勝だったと思います。

文句なしのグループリーグ首位通過を決めたなでしこジャパンですが、とくに良かったのは3試合で失点0の守備だと思います。基本は3-4-2-1でスタートして、守備時には5-4-1になるシステムは非常に機能していました。

埋めるべきスペースをきっちりと埋め、相手が入ってきたときに誰が行き、どうカバーするか。チームとしての優先順位とその方法がしっかりと整理され、チームに落とし込められていました。

スペイン戦では中央を閉めながら横に揺さぶられたとしても宮澤ひなたと猶本光が下がってサイドを守り、ボールを奪った瞬間に逆サイドのどちらかが出ていく。この守り方が徹底された上で、宮澤の圧倒的なスピードで仕留めた3点目のカウンターはあまりに鮮やかでした。

このスペイン戦での自信は非常に大きかったでしょう。試合後だけでなく、先制点、2点目と決めるうちに試合の中で自分たちのサッカーへの自信がどんどんと深まり、時間が経過するごとに落ち着いてゲームをコントロールしていたと思います。

ラウンド16のノルウェー戦は、スペイン戦とは打って変わって日本が多くの時間でボールを握り、相手陣内に押し込む展開となりました。先制点はラッキーなところもありましたが、相手が徹底して守るエリアへも果敢に侵入する積極性は素晴らしく、2点目はその積極性が相手のミスを誘い、奪えた得点だと思います。

今大会初失点を喫しましたが、日本はまったく慌てることなく、自分たちのやるべきことをやり続けることができました。そして宮澤が再び鮮やかなカウンターから3点目。宮澤はこれで、初優勝した2011年ドイツ大会で澤穂希が得点王となった5得点に並びました。

フィニッシュでの落ち着きはもちろん、抜け出したときのボールコントロールなど、一つひとつのプレーが非常に丁寧で、全体を通して落ち着いていました。アンダー代表での経験もあるとはいえ、初めてのA代表のW杯という大舞台でこの冷静さは見事のひと言です。

良い形で準々決勝へと駒を進めたわけですが、ここまでの試合と比べて消極的になってしまっていた印象を受けました。対してスウェーデンは非常に積極的で、その相手の圧力に日本は屈していました。相手の横の揺さぶりに対して、良い距離感で逆サイドの選手が素早くスライドする守備もこの試合ではあまりできていませんでした。

ただ、失点のシーンは1点目も2点目も不運なところがあったし、終盤にはようやく積極的にいけるようになり、良い時間帯を作ることもできました。「あの積極性を前半の最後にも出せていたら」「植木理子のPKが入っていれば......」など、"たられば"を言っても仕方ないですが、それくらい惜しかったなと思います。

裏を返せば、そういう少しのところで勝敗を分けてしまうのが、サッカーという競技でもあります。そういった意味でも今大会のチームの若さ、経験のなさという面が出てしまったと思います。

ベスト8で敗退とはなりましたが、今大会を通して池田太監督率いるなでしこジャパンは非常に良いチームでした。それだけに「準決勝を経験してほしかったな」とも思います。

"決勝"や"優勝"は大会前から目標にかかげてはいますが、準決勝はそれが目前にある状況です。それらを意識したリスクとチャレンジの配分がまったく違うシビアな戦いは、大会本番のこのラウンドでしか経験できないものです。

いずれにしても池田監督は若い選手を主体に舵を切り、素晴らしいチームを作り上げました。パリ五輪はもう来年に迫っていますが、そこへも非常に期待を抱かせてくれる大会になりました。今大会のリベンジをパリで果たしてくれることを楽しみにしたいと思います。

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