主要リーグの新シーズンが開幕したヨーロッパでは、早くも日本人選手の活躍が際立っている。
とりわけプレミアリーグの三笘 薫(ブライトン)、ラ・リーガの久保建英(レアル・ソシエダ)、フランスのリーグ・アンの伊東純也(スタッド・ランス)や南野拓実(モナコ)は、開幕直後からゴールやアシストを量産。日本のサッカーファンをワクワクさせてくれるような活躍を見せている。
そんな注目のヨーロッパサッカーでは、今夏にステップアップ移籍を果たし、新天地で新シーズンを迎えた注目の日本代表選手がいる。
そこで、イングランドの名門リバプールに電撃移籍を果たした遠藤 航、昨シーズンのセリエAで2位のラツィオに移籍した鎌田大地、オランダの名門フェイエノールトに加わった上田綺世、そしてフランスのスタッド・ランスに活躍の場を移した中村敬斗に注目。すでに新天地デビューを飾った彼ら4人の今後について占ってみたい。
まず、4人の中で最も熱い視線が注がれているのが、リバプールに加入した日本代表キャプテンの遠藤だ。現在チームを率いるのは、かつてドルトムント時代に香川真司を、リバプールでは南野を指導したこともある名将ユルゲン・クロップ。日本人選手との相性は上々で、指揮官自身も「ピッチではリアルモンスター」と遠藤を評するなど、大きな期待を寄せる。
その証拠に、移籍発表翌日(現地時間8月19日)のボーンマス戦の62分から遠藤を起用。退場者が出てひとり少ない状況だったにもかかわらず、遠藤は及第点のプレーで勝利に貢献した。
過去4シーズンにわたってドイツのシュトゥットガルトで実績を積んだ遠藤ではあるが、練習もできていない中、いきなりレベルの高いプレミアリーグでのプレーは簡単ではなかったはず。そういう意味で、今後はチーム戦術やチームメイトの特徴を理解すること、そしてプレミアリーグ特有の速さと激しさにも慣れる必要がありそうだ。
幸い、今シーズンのリバプールは中盤の主力が複数流出したことで、遠藤に出番が回ってくる可能性は十分。すでに年齢は30歳だが、世界的ビッグクラブでレギュラーの座をつかめば、選手としてさらにレベルアップできることは間違いない。
同じく、マウリツィオ・サッリ監督から期待されてラツィオに加入した鎌田も、開幕スタメンを飾ってセリエAデビューを果たした。ポジションは本人が望む4-3-3の右MF、いわゆるインサイドハーフでのプレーとなったが、監督が要求する少ないタッチ数でのプレーを忠実に体現し、即戦力であることを証明してみせた。
当初は本田圭佑も所属したことがあるミランへの移籍が濃厚とみられていたが、ラツィオに新天地を求めたことは決して悪い選択ではない。欧州チャンピオンズリーグに出場できることもあるが、何より高いレベルのテクニックと戦術眼を併せ持つ鎌田のスタイルは、サッリ監督のサッカーに適応しやすいとみられるからだ。
課題を挙げるなら、高いレベルで求められる守備面の貢献。それを身につければ選手としてさらに進化を遂げられるだろう。
一方、昨シーズンの活躍によってステップアップを果たしたのが、得点力を武器とする上田と中村だ。
昨シーズンのベルギーリーグで初年度ながら22得点を量産した上田の移籍先は、現オランダ王者。かつて小野伸二や宮市亮も在籍したことのあるオランダの名門が、クラブ史上最高額の移籍金900万ユーロ(約14億円)を投じたことからも期待の大きさがうかがえる。
そんな重責を担う上田は、早速第2節のスパルタ戦で66分にデビューを飾ると、オフサイドで幻となったアシスト〝未遂〟を見せるなど、上々のパフォーマンスを披露。得点こそなかったが、今後が期待できそうなプレーを随所に見せている。
もっとも、4-2-3-1を基本布陣とするフェイエノールト不動の1トップは、昨シーズンのチーム内得点王だったサンティアゴ・ヒメネスだ。上田は、今夏に流出した控えFWダニーロの抜けた穴を埋める戦力としての獲得という背景がある。つまり、上田はまずヒメネスとのレギュラー争いに勝つことが、最初のハードルになる。
それでも、ヨーロッパ2年目の上田にとって、欧州チャンピオンズリーグの舞台に立てることは何より貴重な経験になるはず。ベルギーリーグとオランダリーグの差もそれほど大きいわけではなく、今後の活躍は十分に期待できる。
伊東と同じフランスの古豪スタッド・ランスに加入した中村も、昨シーズンのオーストリアリーグで14ゴールを叩き出した実績を評価されてのステップアップ。クラブが投資した移籍金も1200万ユーロ(約19億円)で、30歳の青年監督ウィル・スティルも期待を寄せる。
その中村は、開幕戦は途中出場でリーグ・アンのデビューを飾り、続くホームでの第2節ではスタメン出場。4-3-3の左ウイングとして61分までプレーし、右ウイングの伊東とのコンビプレーも何度か見せていた。
その試合でも別格のプレーを見せ、勝利の立役者となった伊東と比べると物足りなさは否めなかったが、それほど悲観するようなものではなかった。独特のフィジカルバトルが特徴のリーグ・アンにおいて、アタッカーが即活躍できるのはまれなケースで、それは昨シーズンの南野が最も苦労した部分でもある。
すでにヨーロッパでは5年目を迎える中村だが、年齢はまだ23歳。レベルの高い新しい環境で生き残ることができれば、いずれは日本代表の主力になれるだろう。
果たして、新天地で新たな挑戦に挑む彼ら4人の行方はいかに。今後の彼らのプレーぶりは、要注目だ。