不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第67回のテーマは、J1リーグ残留争いについて。例年とはレギュレーションが変わり、降格は最下位の自動降格1枠のみ。それによってどんな影響があるのか、熾烈な残留争いのポイントを福西崇史が解説する。
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前回は優勝争いについてお話ししましたが、残留争いも今季は目が離せない展開になっています。例年であれば17位、18位の下位2枠が自動降格、16位が参入プレーオフに回るというレギュレーションです。
しかし、今季降格するのは、18位の自動降格1枠のみ。とにかく最下位にならなければいいということで、毎年最後まで諦めない気持ちで戦うものですが、今年はよりその思いが強く、クラブや選手はまったく心持ちが違うでしょう。
戦い方や補強という面で見ても、各クラブはより現実的になっていて、個人的には例年よりも厳しく、熱い戦いになっていると思うし、終盤になるほど面白い展開になっていくと思っています。
第25節が終わった時点で最下位は勝ち点17の湘南ベルマーレ、17位が勝ち点20の柏レイソル、16位が勝ち点21の横浜FC。そして、ややポイント差が離れて15位が勝ち点28のアルビレックス新潟、14位が勝ち点29で京都サンガF.C.、13位が勝ち点29で北海道コンサドーレ札幌となっています。
第25節終了時点では、湘南、柏、横浜FCの3つが、残留争いの中心にいると言えます。しかし、新潟や京都、札幌なども今後の展開では、ここに絡んで来る可能性は十分にあると思います。
移籍期間を挟んだ7月の中断期間明けの下位3クラブのリーグ結果を見ると、湘南は1勝1分2敗、柏は1勝3分、横浜FCは2勝2敗。再開初戦は3クラブ揃って勝利し、良い再スタートを切れたと言えますが、その後の試合でやや差が生まれています。
前回の優勝争いでは、とにかく勝ち切ること、勝ち点3を奪うことが大事だとお話ししました。残留争いにおいても勝ち点3を奪えるに越したことはありませんが、いかに負けないか。サッカーなので点を奪うことはもちろんですが、どれだけ失点を抑え、勝ち点1を拾えるかが重要です。
その点で言うと、再開後は湘南が5失点、柏が2失点、横浜FCが2失点。当然ですが、失点数が結果にも表れています。
横浜FCは再開後にヴィッセル神戸と横浜F・マリノスというどちらもそのときの首位に金星を挙げ、堅守速攻スタイルにかなりの自信を得られたと思います。
柏は5月に井原正巳新監督になって1勝もできていませんでしたが、7月に犬飼智也を補強して守備の立て直しに成功し、再開後の京都戦でようやく1勝できました。ここで得た自信はかなり大きかったと思います。
その後も神戸やサンフレッチェ広島、セレッソ大阪など上位相手にも簡単には負けないチームになってきました。あとはエースの細谷真大を中心に、どのように点を取って勝ちにつなげるかでしょう。
湘南も同様に鹿島アントラーズからキム・ミンテを獲得し、守備の立て直しを図りましたが、直近で2連敗と結果がついてきませんでした。
どんなチームでもそうですが、一つひとつの成功体験がよりどころになってチーム状況が変わっていくというのは、サッカーではよくあることです。そういった意味では横浜FCと柏は良いきっかけを掴んだと思います。
一方で湘南の連敗は厳しい結果です。ただ、幸いまだ残りは9節あり、横浜FCや柏は手の届く位置にいます。
序盤戦であれだけ苦しんだガンバ大阪が調子を上げて下位グループを抜け出したように、あるいは逆に上位にいた新潟が、気がつけばこの位置にいるわけです。終盤戦でなにがあるかまだまだわかりません。
次節は湘南が鹿島、柏が横浜FM、横浜FCが名古屋グランパスと、いずれも上位との対戦です。厳しい戦いになると思いますが、その分、結果が出ればさらに自信を深められ、あるいは大きなきっかけを掴むことができるはずです。どんな戦いになるか、ぜひ注目してください。