今日も暑いですね。こんな日は謎かけをひとつ。

「野球とかけて、乱闘と解く。その心は、どちらも『ごしん』(誤審・護身)が重要です」

こんにちは、野球大好き山本萩子です。最近、審判の誤審が話題になることが増えた気がします。なぜなのかしら。今日はそれらを解決するひとつの手段になるかもしれない、審判のAI導入問題についてお話ししたいと思います。

あっという間にもう9月。ですが、まだまだアツき野球の季節は終わりません!あっという間にもう9月。ですが、まだまだアツき野球の季節は終わりません!

誤審は試合の勝敗を左右しかねませんから、ファンが目を釣り上げて怒るのもわからなくはありません。野球でリクエスト制度が導入されたのは2018年のこと。そこからさかのぼること2年前、サッカーワールドカップでビデオアシスタントレフェリー(VAR)が導入され、最初は賛否があったものの、多くの人がリプレーでジャッジを検証する重要性を認めています。

本来はあってはいけないのですが、スポーツに誤審はつきものです。ただ、現代社会で誤審がこれだけ取り沙汰されるのは、やはりSNSが普及したからでしょう。

ひとつのプレーに対して、違う角度からの映像などを使って誤審を明らかにする動画を私も何度も目にしました。そうやって「誤審は許せない」という空気が広がっていき、審判への心無いバッシングが始まります。

審判の名前と顔が一致するようになったのも、やはりここ最近の潮流だと思います。昔は誰が主審なのかを気にする方は多くなかったはず。しかし現在では、誤審があった際に名前を挙げてバッシングします。たったひとつのミスがSNSで拡散していく様子は、審判にとって心臓に悪いものでしょう。

そう考えると、リクエスト制度は「審判を守る」という側面もあるのかもしれません。

8月に夏の甲子園が行なわれた高校野球でも、審判のジャッジが取り沙汰されていました。確かに、誤審かもしれないというシーンはあったかもしれません。ただ、高校野球の審判は "アマチュア"です。プロとして生活しているわけではなく、他に本業があるボランティア。特別な訓練を受けているわけではない(決して「レベルが低い」と言っているわけではありません)ので、完璧なジャッジを要求するのは酷だと思います。

しかしアマチュアでも、審判として多くの経験を積んだ人のみが、甲子園などの大きな試合を担当できることを忘れてはいけません。アマチュア界で最高の人材がグランドに立っているということです。

AI導入についても、審判にとって一番いい形になってほしいですね。AI導入についても、審判にとって一番いい形になってほしいですね。

プロ野球の審判になるには、専門資格が必要です。審判になるには、まず「NPBアンパイア・スクール」という研修を受講する必要があります。そこで優秀な成績を残すと、審判としてスタートを切ることができます。最初は2軍で研修を積みながら、1軍の試合を目指しますが、その間に独立リーグで修行をする方もいます。

以前、取材に行った時にご挨拶させていただいた審判の方は、「プロ野球の舞台を目指しています」とキラキラした目で語ってくました。

こちらも高校野球と同じく、経験を積んだ審判のみが1軍の試合を担当できるわけです。ただ、そんな最高峰の審判も人間ですから、間違えてしまう時はあります。弘法も筆の誤り。河童の川流れ。宮本慎也のエラー......どれも起こりうることなのです。

ただ、誤審は遺恨を残しますから、その点ではリクエストが導入されたのはいいことだと思います。アメリカの場合は、リクエストが入った場合はすぐに映像が外部に送られ、第三者が映像を見て冷静に判断します。

マイナーリーグでは、すでにストライクゾーンの判定にAIを導入しています。これによってジャッジのブレがなくなるのであれば悪いことではないでしょう。そういった新しいチャレンジは、野球ファンを増やすためにとても大事な試みだと思います。

現代社会では将来的に、多くの仕事がAIに取って代わられることが指摘されています。では審判もそうなるかといえば、そんなことはないと思います。

たとえば、原稿を読むだけだったらAIでもできます。でも、キャスターは"機微"が大切。ゲストのトークの最中に適切なタイミングで間合いを測ったり、時間を上手に調整したり。手前味噌ですが、これは経験を積んだ人にしかできないスキルであると思っています。

私の個人的な意見は、審判はAIと人間のハイブリッドがいいのかなと。メジャーの取材に行って感じるのは、野球というのは選手だけではなく、お客さんも含めてみんなが盛り上げるエンタメだということ。審判もその大事な要素のひとつです。プロレスでも、審判がAIだったら面白くないですよね。つまり、審判は試合を盛り上げる"名脇役"であってほしいんです。

AIがストライク判定をする時代になったら、キャッチャーが使う「フレーミング」という技術もなくなるかもしれません。時代とともに、スポーツは進化を遂げていきます。野球も100年かけてどんどん面白くなってきたのでしょう。これから先も野球の進化からますます目が離せなくなりそうです。

それではまた。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!