フィンランド戦の勝利を喜ぶ日本代表の選手たち。ネブラスカ大で活躍する富永啓生(左から2人目)も3Pシュートなどで存在感を示したフィンランド戦の勝利を喜ぶ日本代表の選手たち。ネブラスカ大で活躍する富永啓生(左から2人目)も3Pシュートなどで存在感を示した

格上フィンランド相手の劇的な逆転勝利など、ホーバスジャパンの奮闘に沸いたバスケW杯。だが、本当の楽しみはこれから。4年後のさらなる躍進を期待せずにはいられない、期待の逸材たちを紹介する。

* * *

■NBA入りも期待の未来のエース候補

バスケットボールの世界一を決めるW杯で日本代表が躍動した。

予選リーグのフィンランド戦は最大で18点差をつけられながら、25得点を挙げた司令塔の河村勇輝、超長距離の3Pシュート〝ディープスリー〟を随所で決めた富永啓生の「22歳コンビ」を中心に流れを引き寄せた。

インサイドでは、今年2月に日本国籍を取得した28歳のジョシュ・ホーキンソンが体を張り、28得点・19リバウンドとMVP級の活躍で逆転勝利を呼び込んでいる。

もちろん世界のトップチームと比べれば、まだまだ大きな差があるのは確か。だが、今後に目を向ければ明るい材料が多い。

現在NBAでプレーする渡邊雄太(28歳)や八村 塁(25歳)に関しては読めない部分もある。とはいえ、河村や富永をはじめ今大会のメンバーの半数程度は、年齢的に4年後のカタールでのW杯、その翌年のロサンゼルス五輪でも活躍を期待できそう。

さらに強烈な追い風となるのは、NCAA(全米大学体育協会)1部のネブラスカ大学に所属する富永のように、アメリカの大学でのプレーを選択し、奮闘している逸材がかつてないほど多くいることだ。

19歳のジェイコブス晶は来季からハワイ大でプレー。W杯前のA代表合宿にも参加した、身長203㎝のオールラウンダーだ19歳のジェイコブス晶は来季からハワイ大でプレー。W杯前のA代表合宿にも参加した、身長203㎝のオールラウンダーだ

中でも最も楽しみなのは、2022-23シーズンからハワイ大学でプレーする19歳のジェイコブス晶。

アメリカ人の父を持ち、神奈川県横須賀市出身でアメリカ育ちのジェイコブスは、コロナ禍で高校のチームの活動が停止したため、プレー環境を求めて日本に帰国。Bリーグの横浜ビー・コルセアーズのU18チームに加入し、17歳でトップチームでもデビューを果たした。

昨年3月には世界の有望選手が集まるオーストラリアの「NBAグローバルアカデミー」に入団するなど多くの関係者が関心を寄せる中、ハワイ大への進学を決めた。

203㎝と長身ながらシュート力も優れ、NBA入りも期待させるオールラウンダー。今夏にはU19バスケW杯に出場し、日本代表の史上最高位となる8位に大きく貢献した。

大会前には「2027年のカタールW杯と、翌年のロサンゼルス五輪には100パーセント出たい。できるだけ早くA代表に入りたいと思っています」と意気込みを語っていた。

そして、大会終了後には、W杯を控えるA代表の候補者合宿にも合流。本大会への出場は実現しなかったものの、将来の日本のエースとして期待される選手だ。

■米大学からオファー殺到の高校生PG

昨季にアメリカに渡った山﨑一渉と菅野ブルースは、八村らを輩出した宮城県の強豪、仙台大学付属明成高校の主力として活躍した20歳の「同級生コンビ」だ。

身長201㎝、父がギニア人の山﨑はラドフォード大学所属。高校時代から海外進学を視野に入れ、3Pシュートを含めたアウトサイドの技術を高めてきた。アメリカに渡ってからはウエイトトレーニングなどのおかげで体が大きくなり、約10㎏増量している。

1年生だった昨季は平均8.8分の出場で2.2得点を記録し、渡米2年目の今季はチームの中心的な役割を担うはずだったが......今夏に右膝の前十字靱帯を断裂するなど大ケガを負った。

八村 塁の高校の後輩で、ラドフォード大2年の山﨑一渉。現在は右膝のケガのリハビリ中だが、その期間もプラスに変えて成長を目指す八村 塁の高校の後輩で、ラドフォード大2年の山﨑一渉。現在は右膝のケガのリハビリ中だが、その期間もプラスに変えて成長を目指す

「こうなってしまったことはしょうがないし、前の姿よりも成長して帰ってきている人は何人も見ている。自分もそうなれると思っています」

リハビリに専念するため2023-24シーズンはコートに立つことはないが、山﨑本人は前向きだ。

一方、アメリカ人の父を持つ菅野は昨季、米アイオワ州のエルスワース短大でプレー。201㎝ながら高校時代からポイントガードに取り組み、鋭く力強いドライブによる得点を武器としていた。

アメリカに渡ってからはシュート力にも磨きをかけ、昨季は30試合の出場で平均6.6得点、4.7リバウンド。その活躍が認められ、NCAA1部のステットソン大学からオファーを受けて編入することになった。

山﨑と菅野は2021年のU19W杯にもそろって出場。他国のスター選手候補らと戦ってきた経験も豊富で、さらなる成長も見込める。

さらに、現在は高校生だが、ボストン大学への進学が決まっている185㎝のポイントガード、テーブス流河(19歳)にも触れておきたい。カナダ人の父は国内女子リーグのチームでHC(ヘッドコーチ)を務めるBT テーブス、兄はW杯の日本代表候補にもなったBリーグ・アルバルク東京のテーブス海だ。

パスセンスに優れ、スピード感あふれるドリブルから視野の広さを生かしたアシストを量産。報徳学園高校(兵庫)では1年時からスタメンでプレーし、20年のウインターカップではチームを準々決勝まで牽引(けんいん)した。

2年時の夏にアメリカ留学を決断し、ボストンの高校や、トップ選手が集まるクラブチームの大会で能力を磨いたことで、約10の大学から奨学金付きのオファーを受けるまでに成長した。 

ボストン大が所属する「アトランティック・コースト・カンファレンス」はNCAA主要リーグのひとつで、マイケル・ジョーダンらを輩出したノースカロライナ大学も所属するなどレベルは最高峰。その中で揉まれていけば、NBA入りの可能性も見えてくる。

ほかにも、ポートランド大でプレーする207㎝のセンター・山ノ内勇登ウィリアムズ、ジェイコブスも所属したNBAグローバルアカデミーに所属し、近い将来、NCAA校に進む可能性が高い200㎝のオールラウンダー、川島悠翔といった選手もいる。彼らが期待どおりに成長すれば、日本はより世界と伍して戦えるチームになるだろう。未来は明るい。