今回は興行ではなく強化を最優先。お金をかけて強い相手のホームに乗り込む。親善試合のマッチメイクが難しい時代にあって、日本サッカー協会はいい仕事をしたと思う。
森保ジャパンが二期目では初となる海外遠征に臨む。相手はドイツ(日本時間9月10日)とトルコ(同12日)。レベルの高い欧州勢との対戦が久しぶりに実現した。
特に注目はドイツ戦だね。昨年のカタールW杯では日本が逆転勝ちして番狂わせを起こした。あの結果は妥当だったのか、偶然だったのか。再び勝って実力を証明したい日本、リベンジしたいドイツ。
親善試合とはいえ、わかりやすい構図で、盛り上がりが期待できる。僕もずっと楽しみにしていた。
ドイツからすれば、今回の日本戦は絶対に負けられない。カタールW杯でグループリーグ敗退に終わってからも不振が続いていて、今年の親善試合はこれまで1勝1分け3敗。
来年の欧州選手権開催を控え、世代交代もスムーズにいっておらず、強豪国というイメージも崩れつつある。国内では激しい批判にさらされているそうだ。
もし再び日本に、それも今度はホームで負けるようならフリック監督の解任は必至。しびれる状況だ。親善試合でも手抜きナシ。試合開始から全力で来るだろう。
一方で、日本にとってはいいテストの機会。次の2026年北中米W杯でベスト8以上を目指すなら、このクラスの相手を倒す必要がある。今年3月の親善試合ではウルグアイ(△1-1)、コロンビア(●1-2)相手にホームでも勝てなかっただけに、低迷中のドイツ相手に勝利を収め、いけるぞという手応えをつかみたい。
最近の日本は、相手がどこでもある程度は守備の計算が立つ。板倉(ボルシアMG)や遠藤(リヴァプール)を中心とした組織的な守りは安定している。だからカギを握るのは攻撃陣。カウンターはいいけど、それ以外にも攻撃のパターンが欲しい。
この原稿の締切り時点で招集メンバーはわからないけど、個人的にまず注目しているのは、この夏に欧州でステップアップを果たした鎌田(フランクフルト→ラツィオ)と上田(セルクル・ブルージュ→フェイエノールト)のふたり。新天地で大いに刺激を受けていると思うし、それを日本代表にも還元して、「さすが」というところを見せて欲しい。
あとはやはり所属クラブで好調の三笘(ブライトン)と久保(レアル・ソシエダ)にも期待したいね。
特に三笘は昨季よりも相手に警戒され、3人、4人がかりで守られてやりづらそうにしているけど、それでもチャンスを演出するのだから大したもの。選手としてのステータスが一段上がった印象だ。ブライトンで見せているようなプレーを日本代表でも見せられるか。期待しない人はいないよね。
日本サッカーの歴史を振り返ると、ドイツは常にお手本であり、実際に深いつながりもあった。そういうチームを相手にアウェーで勝つことは、単なる親善試合の1勝以上の価値があると思う。
先頃、バスケットの日本代表がW杯でいい試合を見せてくれて大いに盛り上がった。ドイツ戦の翌日にはラグビー日本代表のW杯初戦が控えている。森保ジャパンもいいプレーを見せて明るい話題を提供してほしい。
●セルジオ越後
1945年生まれ。72年の来日以降、指導者・解説者として活躍。活動の詳細は『セルジオ越後 オフィシャルサイト』にて