明治大の主将・上田は広角に長打が打てる俊足・強肩の内野手で、今秋のドラフト上位候補。有望選手が多いチームはリーグ4連覇を目指す 明治大の主将・上田は広角に長打が打てる俊足・強肩の内野手で、今秋のドラフト上位候補。有望選手が多いチームはリーグ4連覇を目指す

今夏の甲子園では慶応義塾が107年ぶりの全国制覇を成し遂げた。〝美白プリンス〟の異名を取った丸田湊斗ら、選手の多くは慶応義塾大に進学するとみられる。

慶応義塾大が戦う東京六大学リーグは、ほかに早稲田大、明治大、法政大、立教大、東京大と計6大学が所属する。

戦いの舞台となる神宮球場は東京六大学で使用するために竣工(しゅんこう)されたという歴史があり、本拠地とする東京ヤクルトスワローズであっても神宮球場を「借りている」立場。東京六大学が最優先で神宮球場を使用できるのだ。

そんな歴史と伝統がある東京六大学の秋季リーグ戦が9月9日に開幕した。有望選手がひしめくリーグの見どころをピックアップしてみよう。

近年、頭ひとつ抜け出したのは明治大だ。投打とも役者がそろい、今春にはリーグ3連覇を達成している。

毎年、甲子園を沸かせたエリートが明治大の門をくぐる。選手の質と量は大学球界屈指で「育成選手でプロに行くより、野球で明治大に入るほうが難しい」と語るスカウトもいるほどだ。

主将で三塁手の上田希由翔(愛産大三河)は身長183㎝、体重93㎏の大型の左打者だが、長打力だけでなくヒットゾーンに広角に打ち分ける確実性も光る。俊足と強肩も武器にし、今秋のドラフト上位候補に挙がっている。

その上田をしのぐ逸材と目されているのが、3年生遊撃手の宗山 塁(広陵)だ。華麗なフィールディングに魅了されるスカウトが続出しており、早くも「来年のドラフト1位は決まった」と断言するスカウトもいるほど。来年は争奪戦が繰り広げられるだろう。

投手陣は村田賢一(春日部共栄)、蒔田 稔(九州学院)、石原勇輝(広陵)と4年生のドラフト候補3人が中心。エース格の右腕・村田はリーグ通算12勝1敗、防御率1.54と難攻不落の内容だ。もっさりと厚みのある肉体ながら速球派ではなく、9球種を丁寧に投げ分ける技巧派である。

エリート軍団といっても「人間力野球」を標榜(ひょうぼう)し、おごり高ぶった部員がいないのも明治大の大きな特徴。寮では靴のそろえ方から細かく指導され、日常生活に乱れがある部員はどんなに実力があっても試合では起用されない。

春季リーグ2位だった法政大も明治大に負けず劣らずのスカウティング力があり、優勝を狙える陣容を整えている。特に投手陣は強力で、尾﨑完太(4年・滋賀学園)、篠木健太郎(3年・木更津総合)の左右二枚看板を擁する。

尾﨑は身長175㎝と上背はないものの、ゴムまりのような弾力性のある球質が光る。好調時の投球は手がつけられず、ドラフト上位候補に挙がっている。一方の篠木は、最速157キロと学生屈指の速球派右腕。潜在能力の高さを発揮できない時期が続いたが、今春はリーグ1位の防御率0.68をマークした。

野手では主将で遊撃手を務める今泉颯太(中京大中京)を推したい。本来なら浅村栄斗(楽天)のように逆方向にも長打を量産できる右打者だが、リーグ戦で思うような結果を残せずにいる。プロ側にとって需要が高い「右打ち内野手」でもあり、今秋の爆発次第ではドラフト上位指名される可能性もあるだろう。

今春3位だった慶応義塾大だが、2021年には春秋連覇を成し遂げたように地力と勢いがある。

慶応義塾大にはスポーツ推薦制度がない。AO入試という総合評価型選抜制度こそあるものの、プロ注目の逸材であっても不合格になるなどハードルが高い。髙橋宏斗(現中日)が高校時代に慶応義塾大のAO入試を受け、不合格になったのは有名だ。

それでも、AO入試を突破した有望選手や慶応義塾高などからの内部進学生、一般入学生が大学で大化けする土壌がある。特に筋力トレーニングのノウハウがあり、投手の球速が劇的に伸びていく。

慶応大4年の内野手・廣瀬は、同大OBで元巨人の高橋由伸が記録した通算最多本塁打数(23本)にあと5本と迫るスラッガー 慶応大4年の内野手・廣瀬は、同大OBで元巨人の高橋由伸が記録した通算最多本塁打数(23本)にあと5本と迫るスラッガー

今年のチームには廣瀬隆太(慶応義塾)というスラッガーがいる。今春までに放ったリーグ通算18本塁打は歴代7位タイの記録。今秋に5本塁打を記録すれば、大学の先輩である高橋由伸(元巨人)の大記録、23本塁打に並ぶ。

清原和博の長男・正吾は今春にリーグ初安打を記録。夏の甲子園に出場した次男・勝児に続き、神宮球場を盛り上げることができるか 清原和博の長男・正吾は今春にリーグ初安打を記録。夏の甲子園に出場した次男・勝児に続き、神宮球場を盛り上げることができるか

また、3年生の外野手には清原正吾(慶応義塾)がいる。球史に残るスラッガー・清原和博(元西武ほか)の長男で、甲子園で話題になった清原勝児(慶応義塾)の兄。

中学はバレーボール部、高校はアメリカンフットボール部に在籍した変わり種で、大学で硬式野球に転向した。今春にはリーグ戦初安打をマークしている。身長186㎝、体重90㎏と父親譲りの巨体を誇る正吾はどんな成長を見せてくれるか。

早稲田大は今春4位だったが、6勝(6敗)を挙げており戦力も悪くない。ドラフト候補の熊田任洋(4年・東邦)が牽引(けんいん)する強力打線は、どこからでも長打が出る。あとはエース右腕・加藤孝太郎(4年・下妻一)に次ぐ2番手格投手の成長がカギになる。

立教大は世代交代がスムーズに進まず、今春は5位に沈んだ。といっても、プロのスカウトも注目するエース右腕・池田陽佑(4年・智弁和歌山)ら、高校時代に甲子園で活躍したスター候補生も多い。今秋はきっかけひとつで上位進出も狙えるはずだ。

最後に、今春0勝10敗1引き分けで最下位に終わった東京大について。日本トップの国立難関大だけあって、スポーツ推薦制度はない。ここまでリーグ優勝0回と苦しい歴史が続いているが、東大生の野球にかける情熱は他大学の部員に決して劣っていない。

今春の開幕戦では、明治大を相手に延長戦にもつれ込む大熱戦を演じた。高校軟式野球出身ながら140キロ台中盤の快速球とカットボールを武器にする松岡由機(4年・駒場東邦)ら、強豪と渡り合える選手もいる。

甲子園の後は、神宮で。〝慶応旋風〟をきっかけに、東京六大学に注目してみてはいかがだろうか。