まさか横浜FMがここまで失速するとは。予想が外れたよ。
今季のJ1は残り8節。優勝争いはここにきて上位チームの取りこぼしが目立ち、例年以上の大混戦だ。
首位の神戸(勝ち点52)、2位の横浜FM(同50)の2強以外にも、名古屋(同46)、C大阪(同45)、浦和(同45)、鹿島(同43)くらいまでは可能性があるんじゃないかな。
横浜FMは夏の中断期間前まで、昨季同様の安定した戦いぶりを見せていた。2点以上奪う試合も多く、僕は連覇の可能性が高いと思っていた。
ところが、中心選手の故障、移籍が相次ぎ、一気に選手層が薄くなった。特に右サイドのヤン・マテウスの負傷離脱が攻撃面で大きなマイナス。そして、ここ数年はシーズン途中でも効果的な補強をしていたけど、今季は予算の問題があるのか、後手に回った。
もちろん、王者の意地と経験で立て直してくるとは思うけど、エースのアンデルソン・ロペスにサウジアラビア移籍の噂が出たのも気になる。彼が抜けたらさすがに厳しいからね。
一方、神戸はエースの大迫が相変わらず元気だ。継続して結果を出しているし、今回の日本代表の欧州遠征に呼ばれなかったのが不思議なくらい。3年後の北中米W杯はともかく、少なくとも来年1月開幕のアジア杯には彼の力が必要になると思う。それくらいいいプレーを見せている。Jリーグでの活躍を侮るべきじゃないよ。
セットプレーでの競り合いひとつ見ても、ポジショニングと動き出しのタイミングがいいから、ほとんど相手に勝っている。そんな大迫がいるのが神戸の大きなアドバンテージだね。
豊富な運動量で中盤を支えていた齊藤が大怪我を負って離脱したのはかなり痛いけど、すぐに元スペイン代表のマタ、ハンガリー代表のヴェーチェイのふたりを獲得した。
35歳のマタに関してはハードワークが持ち味の選手ではなく、フィットしない可能性も考えられる。相変わらずネームバリュー優先の補強方針に関してもいろいろな声がある。
でも、プロである以上、話題性は大事だし、何より今回は齊藤の穴を埋めるべく、マタと同時にヴェーチェイも獲得している。うまくいくかどうかはわからないけど、この夏、優勝をするための努力(補強)を一番しているチームだと評価したい。
2強を追いかける4チームも、それぞれ盤石ではない。
名古屋はマテウスがサウジに移籍してから攻撃力が明らかに落ちた。エースのユンカーが点を取れなくなった。
C大阪はエースのレオ・セアラが好調で、そのほかの選手もよく頑張っているんだけど、優勝するにはもうひとつ決め手に欠ける印象。
浦和もせっかく守備がすごくいいのに、相変わらず課題の攻撃面を改善できず苦しい。夏に加入した中島の出場時間も伸びないね。
柴崎が復帰した鹿島はちょっと面白い。まだまだ活躍できる選手だと思うし、攻守共にいい影響をもたらすはず。鹿島は2強との直接対決を残しているので、そこで意地を見せてくれればますます混戦になる。
いずれにしても、どのチームにも不安材料があるので、優勝争いは最後までもつれるだろう。まずは9月29日の横浜FMと神戸の直接対決に注目したい。
●セルジオ越後
1945年生まれ。72年の来日以降、指導者・解説者として活躍。活動の詳細は『セルジオ越後 オフィシャルサイト』にて