プレミアの日本人選手3人をフカボリ!プレミアの日本人選手3人をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第71回のテーマは、プレミアリーグで活躍する3人の日本人選手について。昨季から続いて冨安健洋、三笘薫に加え、遠藤航がリヴァプールに電撃加入。3選手の現状や期待するプレーについて福西崇史が解説する。

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今シーズンのプレミアリーグも第6節まで消化し、序盤戦の戦いから各クラブの状況が少しずつ見えてきました。そんな中で、今季はアーセナルの冨安健洋、ブライトンの三笘薫、そしてリヴァプールに移籍した遠藤航を加えた3人の日本人選手がプレミアでプレーしています。

アーセナルの冨安はケガから復帰し、先日の日本代表のドイツ戦でハイパフォーマンスを見せ、クラブでも後半から出場して主に守備面で安定をもたらしています。アーセナルで3年目となり、周りのレベルやプレミアという舞台、チームの戦い方にも慣れたと思います。

ここまでは左サイドバックのバックアップが主で、ユリアン・ティンバーの長期離脱もあり、冨安は今季も重要な戦力だと思います。一方で唯一の懸念はやはりケガでしょう。

それは本人が一番わかっていることで、ケガに対するケアや対策は十分しているとは思います。それでも昨季、一昨季とシーズンを通して戦えたことがないので不安は拭えません。コンディションを維持できれば、レギュラークラスの実力があるのは間違いないだけに悔しい思いをしてきました。

アーセナルでは主にサイドバックで出場していますが、個人的にはガブリエウ・マガリャンイスとCBのポジションを争ってほしいと思っているし、そこでレギュラーになれると思っています。

また、ドイツ戦でレロイ・ザネの決定機を阻止したときに、ガッツポーズで気持ちを爆発させた冨安を見て、あの試合だけでなく、今季に懸ける思いの強さを感じました。おとなしい冨安がああいった気持ちを表現すると、味方やサポーターの士気は高まるでしょう。

今季はUEFAチャンピオンズリーグもあるので、どうかケガなくシーズンを戦い抜いてよりレベルアップしてほしいと思います。

ブライトンの三笘は、プレシーズンの段階から自分のクオリティをしっかりと出せるコンディションが整っていました。開幕してからもここまでリーグ戦で3ゴール3アシストと、そのハイパフォーマンスは見事の一言です。

ブライトンのサッカーの性質上、周りの選手にどれだけ助けられるかというのは三笘にとって大きなことで、アレクシス・マク・アリスター、モイセズ・カイセドという二人の主力の移籍がどう影響するか注目していました。

やはり気の利いたパスというのは確かに少なくなった印象です。ただ、そのぶんサイドに張るだけではなく、中にポジションを取ったり、足元ではなく、動きながらスペースでもらったりという動きなど、自分がパスをもらう動きの質の向上は本人もかなり意識していると思います。

そして第2節のウルヴァーハンプトン戦で見せたドリブルからのスーパーゴールですが、縦に突破するだけではなく、中へ侵入してシュートを狙っていく。そういったプレーをより強く意識しているんだろうなというのを印象付ける圧巻のゴールだったと思います。

今季はより警戒される存在だと思いますが、その中でも自分の持ち味の出し方をブラッシュアップして、プレーの幅をより広げていってもらいたいと思っています。バルセロナからアンス・ファティが加入しましたが、彼らがどう共存するのかも大変楽しみです。

最後にリヴァプールの遠藤ですが、期待しかないですね。加入から2試合連続で一人少ないシチュエーションでのプレーを余儀なくされましたが、緊張もあった中で落ち着いてプレーしていたと思います。

遠藤にとって初めてのプレミアリーグ、リヴァプールというビッグクラブでのプレーは、どうしても浮ついてしまうこともあるだろうし、ミスをしてはいけないというプレッシャーは、これまでのクラブとはまったく違うと思います。そこでうまく乗り切れたのは経験豊富な遠藤だからこそだと思います。

これからはシュトゥットガルトとは異なるリヴァプールのスタイルにどれだけスムーズに適応していけるか。それからボール奪取ではすでにトップレベルだと思いますが、能力の高い選手ばかりのプレミアでは1発で入れ替わられる場面もあるので、そこの距離感やスピード感にどう慣れていくか。

その上で、リヴァプールでゲームコントロール、前に運んでいくプレーが向上し、マク・アリスターやドミニク・ソボスライといったトップクオリティの選手たちと主力として中盤を形成できることになれば、遠藤は別格の選手に化けると思います。

ジョーダン・ヘンダーソンやファビーニョといったトップレベルの前任者たちと比べられるのは、相当なプレッシャーだとは思いますが、そこにチャレンジできるというだけで遠藤にとってはとてつもなく大きな経験となるのは間違いありません。

それぞれ立場や役割、求められるプレーはまったく異なりますが、3人の日本人選手が、世界最高峰のプレミアで今季どれだけ飛躍できるか、ぜひ注目してください。

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