「今後に向けての課題は、強引な個人技で仕掛けてくる南米勢にも勝てるかどうか」「今後に向けての課題は、強引な個人技で仕掛けてくる南米勢にも勝てるかどうか」

最初に結論を言うと、すごくいい欧州遠征だった。ドイツに4-1、トルコに4-2と大量得点を奪っての2連勝だからね。ホメるしかない。その前提の上で日本代表の戦いぶりを振り返りたい。

まずドイツ戦は序盤から積極的に仕掛けたのが良かった。先制点を奪い、その直後に追いつかれたものの、早いタイミングでまた勝ち越した。あれで精神的な余裕が生まれたね。その後は守備を固め、じっくり試合を運んだ。

さらに後半に入ると、4バックから3バックに変えることで、得意のカウンターが威力を発揮。カタールW杯の対戦時ほどではないにせよ、またしてもドイツに押し込まれる時間帯が長かったのは確か。ただ、それを差し引いても、選手交代含めて森保監督の采配が素晴らしかった。

それとは反対にドイツは深刻だね。特にFWはいまだにベテランのミュラーに頼っているようでは厳しい。世代交代がうまくいっていない。日本サッカーが昔からずっとお手本にしてきた国だけど、今はもう横綱じゃない。

この試合で目についた選手を挙げるなら右SBの菅原。同じ右サイドの伊東との連携や1対1での仕掛けからチャンスを演出した。クロスもただ放り込むのではなく、高さやスピードなどで変化をつけていた。攻撃面は(長らく右SBのレギュラーを務めた)酒井(宏樹)を超えるかもしれない。

守備面に関しても、後半は無理して攻め上がらずに自分の役割をしっかりこなしていた。CKのキッカーを任せられているし、チーム内での評価も上がっているのだろう。このままどんどん伸びて欲しい選手だ。

続くトルコ戦は、正直、相手が物足りなかった。途中からエースのチャルハノールが出てきて少し変わったけど、トルコがずっとW杯に出ていない(5大会連続で欧州予選敗退)理由がわかった気がした。

日本はドイツ戦からスタメンを10人も入れ替えたこともあり、連携面がイマイチ。攻守にぎこちなかった。それでも勝つべく相手に勝てたのは良かった。

欲を言えば、伊東、遠藤、冨安らの主力を投入することなく、普段代表で出場機会の少ない選手たちを最後まで使えば、彼らにとってより自信になったんじゃないかな。

この試合で目についたのは、先制点を決めた伊藤(敦)。あの得点は見事。本人も驚いていたよね。日本代表のボランチは遠藤と守田の壁が高いけど、サイズが大きくて得点力があるのは魅力。所属の浦和でもっと得点に絡んで、チームを優勝に導くような選手になれば面白い。今後に期待したいね。

今回はドイツ、トルコと普段はあまり戦えないような相手と試合を組め、収穫も多かった。システマチックにプレーする欧州勢とは十分戦えることが証明できたのは良かった。

今後に向けての課題は、強引な個人技で仕掛けてくる南米勢にも勝てるかどうか。実際、今年3月のウルグアイ、コロンビアとの親善試合では勝利を挙げられなかったからね。

日本サッカー協会には引き続きマッチメイクを頑張ってほしい。欧州勢との対戦はもちろん、さらには欧州で南米勢との親善試合を組むことも考えてほしい。予算的に大変かもしれないけど、それだけの価値がある。本気でW杯ベスト8以上を目指すなら、そういう投資が必要だと思う。

●セルジオ越後 
1945年生まれ。72年の来日以降、指導者・解説者として活躍。活動の詳細は『セルジオ越後 オフィシャルサイト』にて

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