「サッカーを好きになってくれれば、たとえ選手になれなくても、将来、観客席を埋めるお客さんになってくれる」 「サッカーを好きになってくれれば、たとえ選手になれなくても、将来、観客席を埋めるお客さんになってくれる」

びっくりしたというのが本音。僕は日本人ではないし、何より、煙たがられるようなことも平気で言うので、こういうものには縁がないと思っていたんだ。

私事で恐縮だけど、日本サッカー殿堂入りすることになり、先月、その掲額式典に出席してきた。

会場には日本サッカー協会の名誉総裁であられる高円宮妃殿下をはじめ、多くの関係者や報道陣が集まってくれた。懐かしい顔ぶれも多く、川淵三郎さん(元日本サッカー協会会長)とも久しぶりに話をした。

選考理由は「サッカーの普及に貢献した」ということらしい。今でこそ評論活動をメインにしているけど、1978年から24年間に渡り全国各地を回った「さわやかサッカー教室」は僕の原点。それを評価してもらえたのはありがたいことだ。

また、漫画家の高橋陽一先生と、現国士舘大学理事長の大澤英雄先生と同時に掲額されたことに不思議な縁を感じている。

高橋先生は漫画『キャプテン翼』で多くの子供に影響を与え、サッカーブームを巻き起こした。漫画の内容についての相談を受けたこともあるし、実は誕生日が同じ日で、一緒にお祝いしたこともある仲。

大澤先生は大学での指導だけでなく、少年サッカーの普及にも尽力し、よみうりランドで開催された全日本少年サッカー大会を立ち上げたひとり。僕もお手伝いをしたことがあるけど、当時のサッカー少年の憧れとなった大会だ。

同じ時代にサッカーの普及に関わった3人が一緒に殿堂入りするのは感慨深いよ。

ちなみに今回、チームでの殿堂入りとなったなでしこジャパン(2011年ドイツW杯優勝チーム)で監督だった佐々木則夫さん、GKだった海堀あゆみさんも、僕のサッカー教室に来てくれたそうだ。皆どこかでつながっているものだね。

ただ、「サッカー教室から良い選手がたくさん育ってすごい」とよく言われるけど、それは違う。選手になるのはほんのひと握りだし、彼らが自分の努力でうまくなっただけ。そもそも僕は何も教えていない。サッカー教室には一度に数百人来ることもあるのに、まともに教えられるわけがないよ。

普及活動の最大の目的はサッカーファンをひとりでも多くつくること。「教室」という言葉には堅苦しいイメージがあるけど、実際は遊び感覚で楽しみ、サッカーを好きになってもらうことを心がけていたんだ。

そういう人たちが将来、観客席を埋めるお客さんになってくれるわけだからね。日本でそのお手伝いができたことにあらためて感謝したい。

そして、今回はせっかくの機会だから協会、およびJリーグにひとつ提案をしたい。少子化が進んだ今は子供を11人集めるのも大変。チームを組めず、結局、子供がほかの個人競技に流れてしまうケースも多くあるそうだ。

そこで、例えば代表歴のあるOBチームを作って、水戸黄門のように全国行脚させるのはどうだろう。ネームバリューのある元選手が地元に来れば、大人が興奮して子供を連れてくる。そこで子供にサッカーのファンになってもらうんだ。スポンサーをつけて、参加する元選手にもしっかりとギャラを払えば、好循環が生まれると思う。

実はこのプラン、Jリーグの野々村芳和チェアマンには雑談中に提案済み。ぜひ前向きに考えてほしいね。

●セルジオ越後 
1945年生まれ。72年の来日以降、指導者・解説者として活躍。活動の詳細は『セルジオ越後 オフィシャルサイト』にて

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