関西日本シリーズも現実味を帯びてきた今、両軍のファンは何を思っているのか。現地の生の声を聞いてみた!
■関西両軍のファンの思いは!?
まずは、3連覇したオリックスファン。リーグ優勝を決めた9月20日、オリックスファンの集う店として知られる大阪市北区の野球酒場「酔勝家(すいしょうか)」に向かうと、店の中で乾杯が繰り返されていた。店主の中村豊和さんが語ってくれた。
「突然強くなった2年前の優勝時は信じられない気持ちでドキドキ。去年はゲーム差がほとんどない状態からの優勝でドキドキ。それに比べて、今年はゲーム差もけっこうあったし、優勝するのは当然として、本拠地の京セラ(ドーム)で胴上げができるかどうかだけ心配しながら見ていました」と強豪となったチームに余裕の声。
ただ、「日本シリーズで阪神と対戦することになるかも?」と聞くと、皆ほころんだ表情を引き締めて「絶対負けたくない」「勝つに決まってるやろ」と語気を強めた。店にいたファンはこう語る。
「阪神というよりも、阪神ファンが許せません。球場に野球を見に来ているんか、騒ぎに来ているんかわからへん。優勝したら道頓堀川に飛び込む。オリックスファンにはなんでそんなことするのか考えられません」
なぜそんなにバチバチなのか。前身の阪急ブレーブスの頃からのファンが悔しさいっぱいに語る。
「元阪急と阪神は同じ兵庫・西宮市にある球団でした。けど、ファンは阪神が圧倒的に多くて、子供の頃、阪急ファンや言うだけでバカにされました。その悔しさは死んでも忘れません。絶対に阪神相手には負けられへんのです」
隣の女性ファンも続ける。
「私はな、西勇輝が絶対に許せへん。西君のユニフォームを着て、スタンドから応援してたけど、オリックスから阪神にFA移籍。ものすごく裏切られた気分になった」
すると隣の男性が、「阪神の岡田監督も似たようなもんや。阪神の監督からオリックスの監督に来て、オリックスの内部をぐちゃぐちゃにしていった。岡田監督も許せん」。
確かに、岡田監督は2008年に阪神の大逆転V逸の責任を取り、阪神の監督を辞任。その後10年から12年までオリックスの指揮を執ったが、5位、4位、6位とBクラスに低迷。期待を裏切った監督と見るファンもいるようだ。
では、先ほども話に上がった道頓堀川はどうなっているのかと、そちらに急行。阪神優勝時(9月14日)は川への飛び込みを阻止しようと、戎橋(えびすばし)周辺を警察官約1300人がガード。
しかし、今日はひとりも警官を見つけられず......。普通に人が往来する橋の上に、京セラドームから駆けつけたオリックスファンと思われる数十人ほどが集まり、応援歌を歌い、雄たけびを上げて解散、を繰り返していた。
そんな橋の上で3連覇を喜ぶオリックスファンに「阪神相手の日本シリーズはどうか?」と聞くと、やはりライバル心むき出しの発言が返ってきた。
「3連覇した常勝軍団と18年間優勝できなかったチームを比べんといてください。結果は明らかでしょう(笑)。オリックスファンは『交流戦で阪神に勝つとめちゃくちゃスッキリする』『阪神戦勝利は格別』と言う人が多いですよ」
一方の阪神ファンも負けじとメラメラ燃えている?
阪神を応援し続け、日本一早い阪神の優勝マジック点灯で有名な「尼崎中央三丁目商店街振興組合」(兵庫県尼崎市)理事長の寺井利一さんに話を聞いた。
「いや、オリックスさんと20年に一回のペースでしか優勝できひんうちらを比べるのはおこがましいですわ(笑)」
そんなおとなしいコメントでいいんですかとたきつけてみても、「あんまり熱くなりすぎると、クライマックスシリーズで肩透かしを食らわされたときのダメージが大きいからね。何十年も応援していると痛いほどわかってるんで(笑)」と温かいコメントに終始。
それならと、大阪市北区の阪神ファンが集う喫茶店「まる虎(こ)ぽーろ」のマスター、盛林文男さんにも話を聞いてみた。
「オリックスはもともと阪急やった球団。阪神も阪急と経営統合してひとつになりましたから、阪神もオリックスも阪急と関連の深い親戚みたいなもんですわ。
親戚同士が日本一を争うことになったという意味で、関西にとってはめでたいこと。実際セ・リーグは阪神、パ・リーグはオリックスを応援しているという阪神ファンは多いですよ」
と、こちらも現状は静かな様子。
だが、いざ勝負となると違うはず。実際、交流戦で両球団が対戦するとスタジアムの雰囲気はどうなるのか。オリックスファンに聞いた。
「正直、京セラでの試合でも7、8割が阪神ファンで黄色く染まるのが常。一塁側に座っているはずなんですが、周りを見たらみんな阪神ファンなんてことも。さすがに日本シリーズは京セラでの開催試合はオリックスファンクラブの人に優先販売して、5対5にはすると思うのですが」
とファンの数では、やはり阪神に分があるようだが、こんな強い味方も。オリックスファンの女性が語る。
「強くなるにつれて、女性ファンが激増したように感じます。特に若い女性ファンが増えました。その理由? それは単純明快でイケメン選手が増えているからです。
特に推しが多いのは、山﨑颯一郎(そういちろう)、山岡泰輔(たいすけ)、山﨑福也(さちや)、山本由伸などで、名字に"山"が入っているのにちなんで、チームも『バファローズ山脈』と名づけて、アイドルのように売り出そうとしていたりします(笑)」
前出の喫茶店マスター、盛林さんもこれには同感する。
「試合中継を見てても、阪神戦とオリックス戦では観客が明らかに違う。オリックスの試合は客席映すときは、キレイな女のコが映るねん。阪神戦はおっさんやけどな(笑)。えらい甲子園と違うなあと」
若い声援で巻き返しといったところか。まずはクライマックスシリーズだが、もし関西日本シリーズが実現したら、関西は熱狂の渦に巻き込まれるのは間違いなさそうだ。