不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第73回のテーマは、10月13日、17日に行われる日本代表戦について。9月の欧州遠征でドイツを破り、世界に日本の力を見せつけた代表チーム。11月のW杯予選、1月のアジアカップを控える中、今回の強化試合で注目するポイント、選手を福西崇史が解説する。
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各国リーグがインターナショナルマッチウィークに入り、日本代表も10月13日(金)にカナダ、10月17日(火)にチュニジアとの強化試合が組まれています。その試合に臨む代表メンバーが先日発表されました。
9月に行われた欧州遠征のメンバーをベースに鎌田大地と堂安律がコンディション不良で招集外、三笘薫が体調不良で辞退となり、モナコで好調の南野拓実がカタールW杯以来、怪我により長期離脱していた中山雄太も昨年9月以来の招集。旗手怜央も6月ぶりのメンバー入りし、三笘の代わりに奥抜侃志(おくぬき・かんじ)が追加招集となりました。
この2戦では、いよいよ始まる11月のW杯予選や1月のアジアカップという公式戦が迫ってきている中で、選手たちがどんなパフォーマンスを発揮するのかが注目されます。
本番が近いこともあって、新しい選手を試すよりも良いゲームをした9月のドイツ戦、トルコ戦、特にドイツ戦のメンバーのベースアップがメインになる中で、久々にメンバー入りとなった南野や中山など、フレッシュな選手たちがどう組み込まれていくのか。
また、古橋亨梧や田中碧、中村敬斗らドイツ戦では控え組だった選手たちもどのようにアピールをしていくか。特に鎌田のところに好調の久保建英が入ると思いますが、どんな変化があるのかは楽しみです。
個人的に注目したいのは、今季好調の南野が、メンバーのほぼ固まりつつあるチームの中にどう入っていくのか。
今季からザルツブルク時代の恩師であるアドルフ・ヒュッター監督がモナコの監督に就任し、本来の力を発揮できるようになったことで、ここまでリーグ8試合で3ゴール3アシスト。首位を走るチームの中で大きく結果を残し、代表チームでもどんなパフォーマンスを見せるのか楽しみな一人です。
ただ、代表歴の豊富な南野であっても、カタールW杯の頃と比べてチームもレベルアップしているし、周りのコンビネーションもできあがってきている。その周りに合わせながら今の自分のパフォーマンスをアピールするのは、言葉で言うよりもずっと難しいことです。
当然ながら代表はモナコとは違うスタイル、違うメンバー。モナコは基本のシステムが3-4-2-1で南野は2シャドーに入りますが、代表の基本システムは4-2-3-1。南野はこのシステム自体は経験があるので慣れているとは思いますが、クラブ通りのパフォーマンスを発揮できるかと言われれば難しいでしょう。
出場するとなればトップかあるいはトップ下か。難しいとはいえ代表でのプレーで必要なことを熟知している南野が、どんな刺激を与えてくれるのか注目です。
もう一人の注目選手は田中碧。前回の遠征ではドイツ戦で途中出場、トルコ戦で先発したわけですが、個人的には以前ほど代表の中でパフォーマンスを発揮できていない印象を受けました。
特にゲームメイクという部分で、もの足りなさは否めません。伊藤敦樹や毎熊晟矢など代表デビュー組がプレーしたトルコ戦では、田中がもっとチームを落ち着かせ、前線とスムーズにつなげる役割を担わなければならなかったと思います。
いまや代表の中盤は遠藤航がリヴァプール、守田英正がスポルティング、鎌田大地はラツィオと、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場するビッグクラブに所属する選手たちです。欧州のトップレベルでプレーする彼らのレベル、基準が大きく上がっていることはドイツ戦で証明されました。
田中もドイツ戦でゴールを決めているし、トルコ戦のパフォーマンスも悪かったわけではない。もの足りないというのはかなり厳しい見方だと思います。しかし、彼の持っているポテンシャル、代表のレベルアップを考えると、もっとできるし、やらなければいけないと思います。
これは田中に限った話ではなく、古橋や今回未招集の堂安も同じようなもの足りなさを感じました。彼らが代表で持っているパフォーマンスを発揮できるようになれば、日本の選手層はさらに分厚く、強力になるわけです。1ヶ月前の欧州遠征での刺激によって、代表のさらなるレベルアップが感じられる国内シリーズになることを期待したいと思います。