オリックスの山下は腰の故障で8月末に離脱も、先発として9勝3敗。新人王の最有力候補として名が挙がっている オリックスの山下は腰の故障で8月末に離脱も、先発として9勝3敗。新人王の最有力候補として名が挙がっている

両リーグともクライマックスシリーズに注目が集まるプロ野球だが、今季も多くの若手がグラウンドで躍動した。かつて大洋(現DeNA)などで活躍し、現在は野球解説やYouTubeでも活動する高木 豊氏は、パ・リーグには将来が楽しみな若手が多くいるという。その選手たちの評価を聞いた。

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――パ・リーグで一番印象に残っている若手の選手は?

高木 豊(以下、高木 プロ入り3年目の投手、山下舜平大(オリックス)です。開幕前の春季キャンプのときから「ポテンシャルが違う。軽く投げても球速は150キロ台中盤」と評判でしたが、それにたがわぬ活躍を見せました。

中嶋聡監督が開幕投手に指名したのも、将来のエースと見込んでの起用だったはずですし、開幕戦での堂々とした投げっぷりを見て、「これは大物になる」と思いました。

――山下選手は腰の故障で8月末に離脱するも、9勝(3敗)して防御率は1.61。先発陣の柱のひとりとしてチームのリーグ優勝に貢献しました。新人王の獲得も有力視されていますが、ここまでの活躍を予想していましたか?

高木 やはり開幕戦を見ていたときに、「勝っていける投手だ」と感じました。マウンド上ですごく落ち着いていますし、先発投手として大事な〝試合をつくる能力〟があります。真っすぐは150キロ台後半をコンスタントに投げますし、パワーも違いますね。

さらに、縦割れでキレが抜群のカーブをはじめ、覚えたばかりだというフォークもいい。体は大きいですが器用さも感じます。まだまだ伸びていくでしょうし、成長が楽しみな投手です。

――ほかに注目した選手は?

高木 西武のドラフト1位ルーキー、蛭間拓哉です。バットコントロールが良くてミート力が高い外野手ですね。左打者ですが、1軍の対左投手の打率が.297と高いのもいい(対右投手は.201)。

それと、「この球は、こう振ればあの辺りに運べる」といったように〝自分のヒットゾーン〟がある。僕は将来的な「首位打者候補」だとみています。

現状の課題はボールを引っ張りきれないこと。プロの投手の速くてキレのある真っすぐを一、二塁間を破ってライト前へ、もしくはポール際へのホームランにする、といった打撃ができるようになると首位打者が狙えるはず。とにかく非凡なものを感じます。

――近年の西武は、外野のレギュラーが固定できていません。一定期間は活躍を見せる若手も出てきますが、あまり長続きしない印象です。

高木 そうですね。ただ、蛭間の技術の高さは近年の若手の中でも頭ひとつ抜けていると思います。それと、早稲田大時代にはリーグ通算13本塁打を記録したように、パワーを感じさせる打撃も見せていましたから、期待していいと思いますよ。

――シーズン序盤、「将来的に井端弘和(元中日など)のようになれる」と評価していた、ロッテのドラフト2位ルーキーの内野手、友杉篤輝選手のプレーはどう見ましたか?

高木 スピードがある選手で、走塁や守備については、1軍の戦力としてやっていけることをある程度証明したと思います。ただ、課題は打撃です。シーズン序盤は食らいついて打っていましたが、対戦が増えれば相手にも研究されます。打てなければなかなか使ってもらえないので、どう改善するかでしょうね。

ショートで藤岡裕大と併用されていましたが、併用されているようじゃダメなんです。例えば巨人のルーキーの門脇誠は攻守でアピールし、坂本勇人をショートからサードにコンバートすることになった。そうやって先輩を本来のポジションからどかせるくらいじゃないといけません。

――育成ドラフト4位での入団ながら、オリックスで開幕スタメンに名を連ねたルーキーの外野手、茶野篤政選手はいかがですか?

高木 春先は良かったですね。ただ、疲れも出たのか〝尻すぼみ〟というか、弱点を突かれるようになると打率が下がっていきました。でも、ボールへの食らいつき方がいいですし、相手の投手に球数を投げさせたりと、「いやらしい打者」になれる素質を感じます。

――野手は来季以降が楽しみなルーキーが多いですね。

高木 日本ハムの奈良間大己(ドラフト5位)も頑張りましたね。打率は.243と低いですが、思い切りがいい。バットをあれだけ振れる選手はなかなかいないですし、伸びる要素を感じました。

さらに日本ハムでは、二刀流のドラフト1位ルーキー、矢澤宏太が注目でしたが、ホームにヘッドスライディングをしたときにケガをしてしまってもったいなかった。打撃は改善点がありますが、やはり将来が楽しみな選手であることは間違いありません。

――ポテンシャルを感じさせながら、ケガをしてしまう選手も多かった印象です。

高木 やはり日本ハムになってしまうのですが、ドラフト2位ルーキーの右腕・金村尚真の離脱は残念でした。開幕当初のピッチングは制球力と球のキレが抜群で、1年間ローテーションを守ったらけっこう勝てそうだったので。9月に復帰した楽天戦で2勝目を挙げましたが、来季はもっと勝ち星を挙げてほしいですね。

――そのほか、目に留まった若手の投手はいますか?

高木 楽天で勝ち試合の8回を任されたドラフト3位ルーキー、渡辺翔太は良かったですね。性格がすごく前向きですし、僅差のしびれる場面でも思い切り腕が振れる。今はセットアッパーですが、先発を任せてみても面白いと思いますよ。

先発ではドラフト1位ルーキーの曽谷龍平(オリックス)も魅力的です。真っすぐがクロス気味に入りますし、リリースポイントに特徴があってタイミングが取りにくい。10月9日のソフトバンク戦で初勝利を挙げましたが、今年の経験を糧(かて)に飛躍してほしいですね。