カナダ、チュニジア戦をフカボリ!カナダ、チュニジア戦をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第74回のテーマは、日本代表のカナダ、チュニジア戦について。先月にドイツ、トルコを破り、好調を維持する日本は、カナダ、チュニジアにも勝利して6連勝を飾った。そんな絶好調の日本代表の戦いを福西崇史が解説する。

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10月のインターナショナルマッチウィークで、日本代表はカナダに4-1、チュニジアに2-0と連勝を飾りました。6月のエルサルバドル戦から6連勝となり、好調を維持して来月から始まるW杯アジア予選に入ることになりました。

13日に対戦したカナダ戦ではトップ下に南野拓実、左サイドバックに中山雄太が入るなど、久々に召集されたメンバーが先発に名を連ねました。

日本は立ち上がりから集中力高く、良い守備から試合に入ったと思います。前から積極的なプレッシングでカナダにプレッシャーをかけ、ゴール前でバタついたところを田中碧がこぼれ球を拾い、早々と先制点を決めました。

その後も森保一監督が落とし込んだ守備の意識を高く持ちつつ主導権を握り、前半で3-0とカナダを圧倒しました。前半途中よりカナダが慣れてきてからは、日本が我慢する時間帯もありましたが、冷静にしのげたこともよかったと思います。

昨日のチュニジア戦では久保建英がトップ下、旗手怜央が左ウイングに入るなど、カナダ戦から先発7人を代えたメンバーが先発となりました。

メンバーが代わっても森保監督が求める前からの積極的なプレッシングと、攻守の切り替えの早いサッカーがよく落とし込まれていました。日本が主導権を常に握り、狙い通りのゲーム運びができていました。終盤には選手交代で守り切る布陣に代え、失点ゼロに抑えたということも非常に評価できると思います。

注目選手を個々に見ていくと、南野は非常にアピールできたと思います。チャンスの場面で点を取らなければと力んでしまったところもありましたが、カナダ戦4点目の場面のように得意の裏へ抜ける動きで何度も起点になりました。

裏だけでなく、ライン間でパスを受けて随所に気の利くプレーを披露していました。タイプ的にも鎌田大地と似ていて、今後は良い競争になると思います。

チュニジア戦で同じトップ下に入った久保は、コンディションの良さは感じさせました。ただ、やはり右サイドでボールを受けてからの仕掛けのほうが怖さはありました。中にいてライン間で良いパスを受けられればまた違ったかもしれませんが、チュニジアが後ろに人数を割いていたこともあり、サイドに流れたときでなければ良いボールはなかなか入りませんでした。

伊東純也との共存を考えるとトップ下で使いたいはず。守田英正が左サイドで旗手をサポートしたように、周りとの連係が確立できてくればトップ下でも面白いとは思います。

チュニジア戦でトップに入った古橋亨梧は、相手に5バックで深く構えて守られ、持ち味がなかなか活かしづらい試合だったと思います。裏へ果敢に走り込んではいましたが、縦の揺さぶりがない中ではパスが出てきませんでした。ただ、その中でもワンチャンスを決めた冷静さ、フィニッシュワークはさすがのクオリティだったと思います。

チュニジア戦後半から古橋と代わって入った上田綺世は、得点はありませんでしたが、ポストプレーや裏に抜けるタイミングもよく、オールマイティな能力を発揮していたと思います。古橋にはない高さという武器は、周りの選手に選択肢を与え、相手にとっても嫌だと思います。

カナダ戦2ゴールの田中碧も非常にアピールできたと思います。彼はやはり前に飛び出していって持ち味の発揮できる選手だということを再確認できた試合になりました。途中から伊藤敦樹が入ったときにボランチの位置で動きすぎていて、改めてゲームをコントロールするタイプの選手ではないと感じました。

そのぶん、遠藤航とボランチを組むときには、積極的に前に出ていき、カナダの守備の隙を巧みに突いていました。日本の2点目では浅野拓磨がCBを釣り出して生まれたギャップに入って起点を作り、3点目のシーンでも守備ラインの裏へ流れて伊東純也からのパスを呼び込みました。

ポジションを争う守田とは異なる持ち味をアピールできて、ボランチの位置でも良い競争が生まれると思います。

その守田はチュニジア戦で攻守にさすがの安定感を見せました。前半途中から左ウイングの旗手をサポートするようなポジショニングを取ると、やや停滞していた左サイドのコンビネーションを活性化させました。あのゲームを作る働きは、田中を上回る部分だと思います。

中村敬斗もアピールできた選手の一人で、代表キャップはまだ4試合ですが、すでに4得点と結果を残しています。先発したカナダ戦は冷静さ、上手さを見せ、フィニッシュの場面で仕事ができる選手だと感じさせました。

代表でのプレーにも慣れてきて、ボールを触る機会もかなり増えてきました。これからはより彼の持ち味が発揮されてくると思います。ただ、一方でボールを失う回数も多すぎるので、三笘薫とポジションを争う上ではそこの改善は必要だと思います。

同じ左ウイングでは旗手を森保監督がどう評価するのかは気になるところです。個人的には前線で複数のポジションをこなせて、どのポジションに入っても高いクオリティを発揮できるので、重要な選手の一人になると思います。

チュニジア戦では周りとのコンビネーションがない状態で、三笘のように独力で突破する場面は見られませんでした。彼をあの位置で使っていく場合はまだまだこれから周りと擦り合わせることが多いですね。旗手を使いたいけれど、どこで使うかというのは森保監督をかなり悩ませると思います。

怪我から復帰した中山雄太は、2試合連続先発で非常に良いパフォーマンスだったと思います。カナダ戦前は左サイドの攻撃はどうリズムを作るのかなと思っていましたが、縦関係となる中村とは初めて一緒にプレーするとは思えないほどスムーズに連携が取れていて、パスの精度、判断も良かったと思います。守備もそつがなく、安定していました。

最近では左SBは伊藤洋輝が定着してきましたが、攻撃では中山、守備の質では伊藤といった感じで、それぞれに違った魅力があります。中山が復帰したことで森保監督は左SBでもかなり頭を悩ませることになると思います。

カナダ戦で冨安健洋とコンビを組んだ町田浩樹も良いパフォーマンスでした。強みである高さ、左足のフィードはもちろん、対人守備でも強さを見せ、冨安と安定した守備ラインを築いていました。またチュニジア戦では左SBと新しいポジションもチャレンジできました。

これで板倉滉、谷口彰悟、伊藤洋輝も含め、守備ラインは4バック、3バックどちらも高い質で対応できる厚い選手層が揃ったと思います。

この2試合を通じて、改めて日本代表のレベルアップを感じました。誰が出ても自分たちがボールを持って主導権を握りながらゲームを進めることができます。11月からW杯予選が始まりますが、予選ではもっと日本がボールを持つ展開が続くことになります。

今回のカナダ、チュニジアはそういった展開で日本がどう崩していくかという良いテストになったと思います。これだけ進化した日本が、アジア予選や1月のアジアカップでどのような戦いを見せてくれるのか、今から楽しみです。

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