クライマックスシリーズの真っ最中に失礼します! 熱戦のウラですでにオフシーズンを迎えている6球団を含め、水面下では選手や首脳陣の"人事ネタ"が日々、飛び交うこの季節。現場で取材を続ける記者の皆さんが、取れたてホヤホヤの㊙ネタを大放出!
■山本、今永の球団選びの条件
スポーツ紙デスク レギュラーシーズン終了前後から堰(せき)を切ったように監督・コーチ陣の去就や選手の移籍、戦力外などの人事ネタが表面化したね。とはいえ、CS(クライマックスシリーズ)やドラフト、日本シリーズには大きな人事報道をぶつけないという"暗黙のルール"があるから、またしばらくはさまざまな動きが水面下に潜ることに。
記者A 移籍関連の注目は、やはりメジャー志望組の山本由伸(オリックス)、今永昇太(DeNA)らの動向ですね。ふたりに関しては球団が今オフのポスティングを容認済み。
記者B 山本の移籍先はジャイアンツ、ヤンキース、レッドソックスなどが有力とされているけど。
記者C 本人は金銭面の条件や球団の強さ・カラーよりも「住み心地の良さ」を重視しているらしく、「大都会じゃなく、ちょっと田舎くらいの温暖でのんびりした地域」が希望なのだとか。
デスク マイペースで心優しい彼らしい話だ(笑)。
A だとすると、ニューヨーク(ヤンキース、メッツ)やボストン(レッドソックス)よりサンフランシスコ(ジャイアンツ)、サンディエゴ(パドレス)あたりが本命?
B 山本はもともとメジャー志向が強かったわけではなくて、治療を受けていた施設で知り合ったDeNA時代の筒香嘉智(つつごう・よしとも/ジャイアンツ3A)の話を聞いて、より上の世界でやってみたいと憧れたのが始まり。ワールドシリーズを見に行ったときも、選手の名前すら知らなかったとか。
C 筋金入りのメジャー好きで、英語もかなり勉強していた藤浪晋太郎(オリオールズ)とは対照的ですね。
デスク 逆に、今永は藤浪タイプかな。英語も、メジャーのこともよく勉強している。
A 今永は登板機会の確保を重視しているようです。有名球団と高額で契約できても、チーム内が競争過多では意味がない、という現実主義者。
B ただ、彼らのサイズを気にするメジャースカウトもいる。2mの長身剛腕投手も珍しくない中、小柄な投手はどうしても「見劣りする」という印象を持たれがち。
C 海外FA権を行使する予定のパ2年連続セーブ王・松井裕樹(ゆうき/楽天)も、その点は同じですね。もともと家族を置いて単身赴任になることへのためらいもあったようで、本当に移籍するか、するとしても行き先がメジャーかは、オファー次第でしょうか。
デスク 上沢(うわさわ)直之(日本ハム)、髙橋光成(こうな/西武)は、まだポスティングを球団が認めていない。
A ただ、髙橋光はアメリカの大手代理人事務所と契約したようですし、両球団とも最終的には認める可能性が高いと思います。
B メジャースカウトの声を聞くと、評価はいまひとつのようですけどね。上沢は球威不足、髙橋光は変化球の精度が物足りないと。
C 国内FA組では、加藤貴之(日本ハム)が注目ですね。全国区とはいえない知名度ですが、安定感のある貴重な先発左腕が欲しい球団は多そう。
デスク 本命は巨人かな。近年は財布のヒモが固くて大型補強が鳴りを潜めているけれど、このオフは阿部慎之助新監督への"ご祝儀"としてFA2枠(A・Bランク)は使うとみられている。
A あとひとりは、「メジャーを断念したら」という条件つきで松井が最優先候補ですかねえ。松井が無理なら、今季ヤクルトのクローザーを務めた田口麗斗(かずと/ヤクルト)。
B 21年にトレードで放出した選手だけど、FAで"合法的に"呼び戻すと(笑)。ただ、ヤクルトも3年5億円前後の条件で引き留めにかかるみたい。ヤクルトはさらにオリックスの山﨑福也(さちや)の獲得にも乗り出す可能性があるけど、5位に沈んだチームを立て直すためとはいえ、資金、大丈夫かね。
C 今オフのFA市場は左腕が豊富で、松井、加藤、田口、山﨑に加えて石田健大(けんた/DeNA)も宣言の可能性ありです。Cランクで人的補償がいらないこともあり、複数球団が手を挙げるかも。
■巨人・坂本の三塁コンバートの影響
デスク 別の意味で注目のFA選手が山川穂高(ほたか/西武)。不祥事で謹慎すること5ヵ月、ようやくフェニックス・リーグで実戦復帰したけど......。
A 残留か、もともとは既定路線のはずだったソフトバンク移籍か。本人もまだ気持ちが固まっていない様子。
B "迎える側"のソフトバンクも難しさはあるよね。世間の風当たりも読めないし。今オフはFAを封印して、来年は西武でプレーというのが落としどころのような気が。
C さすがに巨人はないですか(笑)。
デスク 坂本勇人(はやと)の三塁コンバートで、主砲の岡本和真がほぼ一塁固定になりそうだからなあ。むしろ山川が来なくても、中田翔が出場機会を求めてFA宣言するんじゃないかという報道もあった。
A あの話、巨人の親会社グループのスポーツ紙だけが報じましたよね。球団からの「出ていってもいいよ」というメッセージ込みだったりして。
B サイ・ヤング賞右腕バウアー(DeNA)の去就も気になる。投げっぷりはいいわ、中4日で回れる上に疲れても続投を直訴するわで、ファンの人気も絶大。
C あまり条件闘争せずDeNAに残ってほしい気もするけど、メジャーを追われる原因となった性的暴行の訴訟は和解が成立しましたね。
デスク ただ、現段階ではまだメジャー球団からオファーが来そうという話は聞かない。来季も日本で投げる可能性は十分にあるよ。
A 問題は年俸ですね。今季、DeNAが負担したのは出来高も含め総額約6億円でしたが、そこからさらに上がるとなると払えるかどうか。
B 今季は1年契約だから、このオフはどの球団にも獲得のチャンスがある。
C ソフトバンクが代理人と接触しているなんていう噂も聞きますが、さてどうなるか。
■「中日・清原ヘッド」の報道はなんだったのか?
デスク しかし、3年契約をあと1年残して巨人・原辰徳監督が退任したのは意外だった。本人も直前までやる気満々だったようだし。
A 球団内や親会社筋では「原監督は限界」という声もあったものの、誰が首に鈴をつけるかが見えませんでしたよね。結果的に、それは山口寿一(としかず)オーナーだった。
B 結局、原監督は説得に応じて「辞任」の形を選び、代わりに阿部ヘッドコーチを後任にするという意向を通した。
C 最終戦後のセレモニーで"禅譲"を高らかに宣言し、新監督の就任会見にも登壇し、「オーナー付特別顧問」の肩書で引き続き球団に在籍。影響力は残りそうです。
デスク 表向きの編成部門トップは吉村禎章編成本部長だけど、実態としては原さんが"陰のGM"だろうな。
A 巨人の問題は、原さんに"全権監督"を委ねてから、フロントの人材育成も停滞してしまったことですね。結局、大きな話をまとめられるパイプは原さんが握っている。
B とはいえ、世間で持たれているイメージほど権力に固執しているわけでもないと聞くけどね。故・星野仙一氏が果たせなかった初の選手出身コミッショナーを目指しているとか、いろいろ言われていて、もちろん野心はあるだろうけど、敵をつくってまで動こうというタイプじゃない。
C 周囲が御輿(みこし)に担いでくれれば「やるよ」と首を縦に振る。そういう性格でしょう。
デスク で、阿部新政権の動きだけど、早速、西武から内海(うつみ)哲也投手コーチを呼び戻した。かつてFAの人的補償、つまり球団の都合で放出したわけだけど、こういう面倒見のよさは巨人らしいよね。
A 同じくヘッド兼打撃コーチとして1軍入閣が決まった二岡智宏2軍監督も、現役時代にトレードで日本ハムに移籍したものの、引退後に巨人へ復帰していますね。
B 両者とも阿部新監督とは仲がいいから、監督と選手とのつなぎ役だろうね。阿部新監督は44歳と年齢こそ若いけど、今の若い選手たちと同じ目線の指導者というタイプではないだけに、コーチ陣の役割は重要だと思う。
C いずれにしても原政権はもう求心力を失っていましたから、風通しはよくなっていくんじゃないですか。
デスク パ・リーグでシーズン最終戦にCS進出を逃した楽天の石井一久監督も、「Bクラスなら辞める」という事前の予想どおり退任。
A 後任は今江敏晃打撃コーチの監督昇格が発表されました。
B 世間に知られた有名人よりも、チームを熟知している指揮官を立てるのは手堅い。
C 予算が限られている親会社の事情もあるでしょうけど(笑)、OBが監督をやるほうがファンも納得できていいんじゃないですか。
デスク 監督の去就といえば、ソフトバンクの藤本博史監督がCSには進出したものの2年連続V逸で退任した一方、続投でファンからブーイングが出てしまったのがセ最下位の中日・立浪和義監督。
A シーズン終盤、清原和博氏をヘッドコーチに招聘(しょうへい)か、という報道が出ましたよね? 実はあれ、球団による"観測気球"だったという噂が。
B さすがに親会社の新聞では出せないから、つながりのある別のスポーツ紙に書かせたってことか。
C その後、すぐに球団幹部が否定したということは、世間や関係者の反応が芳しくなかったんでしょうね。
デスク まあ、いくら立浪監督との"PL学園つながり"はあっても、清原氏とは縁もゆかりもない球団だし。
A そのPL人事でいうと、片岡篤史2軍監督が来季は1軍ヘッドコーチに。
B 中日ファンからしたら、立浪続投に続くモヤモヤ。2軍は今季、ウエスタン・リーグで最下位独走だったから。
C 立浪監督、ほかに心を開いて話せるコーチがいないんですかねえ......。
■井端ジャパンの発足がここまで遅れた理由
デスク それと、いっこうに決まらなかった侍ジャパンの新監督は井端弘和氏でようやく決着。大変失礼ながら、われわれの認識では当初は「保険の保険」みたいな存在だった。
A 井端監督も一度はオファーを断っているんですよね。
B 中日の立浪監督がもし退任したら、その後任を狙っていたのは間違いない。だから侍ジャパンのほうのオファーの受諾が、立浪監督の続投決定後までずれ込んで、あれだけ発表が遅れた。
C それにしても、ポスト栗山のオファーはいろんな人に断られまくったみたいですね。
デスク ぶっちゃけた話、最大の理由は報酬の安さだよね。代表監督は年俸制で、1年で1億円といわれている。普通に考えたら大金だけど、候補として名前が挙がった人たちが講演やら何やらで稼いでいる金額を考えると、決して十分なオファーではない。
A それでいてスポンサー関係のイベントや大会関係のプロモーションにはしょっちゅう駆り出されるし、けっこう拘束が多いんですよね。
B しかも、完璧なストーリーで幕を閉じた今春の栗山ジャパンと必ず比較される運命にある。そりゃ、敬遠されるのも無理はないよ。
C それで困ったNPB(日本野球機構)は、従来の長期契約制を見直さざるをえなくなったと。
デスク 井端監督の任期は来年11月の国際大会「プレミア12」まで。その後は続投もありえるし、交代となればNPB12球団の現役監督以外、誰もが候補になりえる。
A そうはいっても、今の時点で考えると、井端続投か原監督就任の2択じゃないですか。井端さんが来オフ、ポスト立浪のオファーを受ければ原監督で決まり。そうじゃなければ、プレミア12の結果次第かもしれないですけど。
B そこで決まった監督はおそらく2026年春のWBCまでやるだろうね。15年ぶりの原ジャパンか......。
C 「66歳、野球人として最後のご奉公!」とか言いながら張り切る姿が思い浮かびます(笑)。ただ、28年のロサンゼルス五輪で野球競技復活の可能性もあるし、今こそ代表監督をきちんと選んで継続的に強化していくべきなんですけどね、本当は。
デスク まあとにかく、日本シリーズが終わる頃には、報道でいろんな人事話が出てくるはず。われわれはそれまで仕込みを頑張りましょう。