オグマナオトおぐま・なおと
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
メジャー挑戦組&国内FA組ともに、投手が目玉のこのオフ。主力投手流出の可能性もある各球団の来季戦力はいかに?
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このオフはオリックスの山本由伸、DeNAの今永昇太、楽天の松井裕樹らWBC優勝メンバーを筆頭にメジャー挑戦するのではないかという投手が多い。ほかの国内FA組の動向も含め、移籍市場が各球団にどんな影響を与えそうか。
まず野球評論家のお股ニキ氏が指摘するのは、過去、主力投手がメジャー挑戦を果たした後に古巣球団がどうなったか、という点について。
「ダルビッシュ有が抜けた2012年の日本ハム、前田健太が抜けた2016年の広島、山口俊が抜けた2020年の巨人、藤浪晋太郎が抜けた今季の阪神はいずれもリーグ優勝しているんです。先発投手がひとり抜けただけでチームが崩壊するわけでもない、という点は認識すべきです」
ただ、このオフの移籍市場では、一球団から複数投手が抜ける可能性も考えなければならない。
「日本ハムは上沢直之がメジャー挑戦を宣言しています。上沢だけなら前述の過去事例どおりになんとかなるかもしれませんが、同時に加藤貴之も国内FAで移籍するとなると、さすがに厳しい。
今季のパ・リーグで上沢は投球回数1位(170イニング)。2位に山本由伸を挟んで3位が加藤貴之(163.1イニング)。333イニング分がなくなってしまうのは相当な痛手ですよ」
そんな状況で最下位からの躍進を狙うには、若手投手陣の奮闘がマストだ。
「伊藤大海はもっとがんばらないといけないし、〝台湾の至宝〟といわれる18歳の孫易磊やドラフト1位の細野晴希(東洋大)の覚醒が不可欠。ただ、細野も球は強いけど四球が多そうなタイプ。
新庄剛志監督も四球を嫌いがちなので、首脳陣が意識改革できるかもカギになりそう。その場の思いつきのような守備位置変更も投手からするとしんどいです」
日本ハム同様、複数投手の移籍の噂はDeNAにもある。
「今永に加え、石田健大、バウアーのトリプル流出があったら大変です。今季最多勝の東克樹がいるとしても、彼ひとりでは埋められない。にもかかわらず、DeNAのドラフトは野手中心でした。残留の見込みがあるということなのか。
ただ、外野は外野で課題が多いので、1位で度会隆輝(ENEOS)、3位で二刀流の武田陸玖[りく](山形中央高)、6位で井上絢登(徳島インディゴソックス)を獲ったのは的確ではあります」
メジャー挑戦を狙う松井裕樹の楽天はどうか?
「抜ける穴は大きいですが、抑えであれば代わりの人材は誰か出てくるはず。むしろ問題は、楽天に入ると期待のルーキーも突き抜けきれないこと。早川隆久は相当期待されていたのに、初年度の9勝を超えられない。
今回1位で獲った古謝 樹(桐蔭横浜大)も、高校生右腕筆頭格といわれる2位の坂井陽翔(滝川二高)にしても、現段階で素晴らしい素質を持っていますが、この先どうなるか」
松井裕樹以外で移籍濃厚な抑え投手として名前が挙がるのは、ヤクルトの田口麗斗。もし移籍すると、連覇から5位に転落したヤクルトはますます苦しくなりそうだ。
「田口が抜けたら厳しいですが、それ以上に投手も野手も問題が多いです。髙津臣吾監督の『中10日ゆとり運用』はケガを未然に防ぎつつ成長を促すはずだったのに、結局故障したり、長い回を投げられなかったりする投手ばかりになってしまった。やはりプロの世界はある程度の厳しさが必要な気がします。
攻撃面では山田哲人のキレがなくなってきた現状で、キーマンは塩見泰隆なんですが、度重なるコンディション不良が懸念点。センターではなくレフトで起用して負担を減らし、打撃力を生かしたいです」
ポスティング移籍を希望しながら球団に容認されない西武の髙橋光成もいる。西武の場合、このオフの流出を防げばなんとかなる、という問題ではない。
「西武の場合、近い将来に髙橋に加え、今井達也、平良海馬という主力投手がトリプル流出する可能性もあります。だからこそ、今年は上位指名が全員投手、という投手ドラフトにしたんでしょう。中でも、武内夏暉(国学院大)を競合で指名できたのは大きい。2位の上田大河(大商大)もいい投手です」
ここまで投手の流出の可能性を見てきたが、野手のFA戦線はどうか? 注目は広島の西川龍馬だ。
「西川は代えが利かない選手なので、投手のようにひとり抜けてもなんとかなる、というレベルではありません。広島にとって非常に重大な問題です。
もともと左打者を育てるのはうまい球団でしたが、末包昇大や堂林翔太ら右打者が良くなってきたし、投手陣もようやくホークアイを導入してデータ活用がより本格的になってきた。西川が残留できれば、もともと選手の目利きはいいだけに、来季も上位争いを期待できます」
12月には昨年話題を集めた「現役ドラフト」がまた行なわれるなど、まだまだチーム編成は流動的。ストーブリーグが熱くなるのはまさにこれからだ。
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。