欧州移籍を期待する選手をフカボリ!欧州移籍を期待する選手をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第77回のテーマは、海外移籍を期待するJリーグ選手について。欧州リーグで活躍する日本人選手が増加する中で、これから欧州移籍を期待する、あるいは移籍するべき選手たち5人を福西崇史が選出した。

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まず1人目はセレッソ大阪のDF毎熊晟矢(まいくま・せいや)。今年9月の欧州遠征で日本代表に初選出され、トルコ戦で代表デビューを飾りました。C大阪で見せているようなアグレッシブなプレーを代表チームでも披露できたと思います。

運動量と攻撃能力は代表の中でも十分通用することは証明しました。一方で選手としてさらにワンランク上に登るためには、守備力が課題だと思います。

守備面を向上させるにはJリーグよりも強度が高く、強力なアタッカーが多い欧州で経験を積むことが一番手っ取り早い方法だと思います。レベルの高いアタッカーとの一対一の勝負を通して、スピード感や間合い、駆け引きを学び、攻撃だけではなく、守備においてもアグレッシブなプレーを身につけることが必要だと思います。

代表では菅原由勢(すがわら・ゆきなり)とポジションを争うわけですが、代表でのプレーを見ると彼のほうが欧州でのスピード感や強度に慣れているのは間違いない。オランダの下のクラブやベルギーなど出られるクラブへ移籍するのが良いと思います。

2人目はサガン鳥栖のMF西川潤。彼の左足のテクニックのレベル、センスはそうそういるものではないと思います。ただ、21歳とまだ若手ではあるけれど、プロの試合にデビューしてからすでに4年目。あれだけのポテンシャルがありながら未だにレギュラーを確保することができていません。

彼が選手として一皮向けるために、海外の厳しい環境に身を置いて揉まれることは一つの選択肢だと思います。メンタルの部分、ハングリーさを養いつつ、あのテクニックを海外に持っていくことで、生かし方を見出せるかもしれない。

海外に行ったからといってうまくいかずに帰ってくるケースは多々ありますが、それでも行ってみなければわからない。化ける可能性はいくらでもあるし、小笠原満男みたいに高い守備能力を身につけて日本に帰ってくる場合もある。テクニックのレベルは十分なので、それを生かすための術を海外に行って身につけて、一皮剥けて欲しい選手です。

3人目はFC東京のMF松木玖生。20歳にしてフィジカルはすでに出来上がっていて、Jリーグの中でも特筆に値します。それに加えて負けん気の強さ、メンタリティ、キャプテンシーは類稀なものがあり、非常に海外向きで本田圭佑に似たタイプの選手だと思います。

そこからもう一皮剥けて自分の武器を見出すために、海外のよりレベルの高いリーグへ行く必要があると思います。例えば本田圭佑がオランダに渡ってよりゴールを狙うスタイルに変わっていったように、外国人という立場で結果を求められることで自分の強みに磨きをかけて生き抜く必要があります。

また、守備面もより強度の高い環境の中で向上しなければ、トップレベルでは戦えないと思います。本人はもとから海外へ目を向けていると思いますが、武器を見つけて、守備を学び、ビッグクラブへステップアップするために、できるだけ早く欧州へ移籍するべき選手だと思います。

4人目は浦和レッズのMF伊藤敦樹。彼は日本人には珍しい大型のボランチで、攻守にわたって高さは強みになるし、攻撃センスがあってボールをさばくこともできる。Jリーグでは十分にキャリアを積んだので、ステップアップするとしたら海外への移籍しかないと思います。

ボランチの位置から前に出て行ったときの攻撃センスはあるだけに、低い位置でボールをさばいてゲームを作る能力が上がればよりスケールの大きい選手になれるはず。個人的にはロドリのような選手を目指してほしいですね。

代表で遠藤航や守田英正とポジションを争うのは相当ハードルが高いと思います。それでも彼らにはない高さというのは大きな武器です。現状では遠藤はリヴァプール、守田はスポルティングとビッグクラブでプレーしていて、経験値の差は大きなものがあります。少しでもその差を埋めるためにも欧州へ渡ってほしい選手です。

5人目はジュビロ磐田のFW後藤啓介。彼の持っている191cmというサイズ、身体能力、負けん気の強さ、得点感覚、そのポテンシャルは一流で将来日本を背負えるだけの逸材です。

今はJリーグでプレーするようになって大人と戦った時の壁を感じていて、大人のサッカーを学んでいるところですが、伸び代だらけの今の段階から欧州でプレーする選択肢もアリだと思います。

現状ではまだ体が細すぎるし、DFとの駆け引きでも優位を取られてしまうことが多々あって、ポテンシャルだけでサッカーをやっている状態です。ただ、そこはまだ18歳なので、フィジカルも駆け引きもプレー経験を積むことで自然とついてくるものです。

日本人の大型FWが欧州で成功したケースはまだなく、彼はその成功例となれるだけの選手だと思うので、ぜひ日本のハーランドになってほしいと思います。

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