不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第78回のテーマは、W杯アジア2次予選について。先日8日(水)に招集メンバーが発表され、いよいよ2026年のW杯予選がスタート。ミャンマー、シリアとの試合に臨む日本代表の注目ポイントを福西崇史が解説する。
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先週末のリーグ戦を終えて代表マッチウィークに入り、日本代表は「FIFAワールドカップ26アジア2次予選兼AFCアジアカップサウジアラビア2027予選」に臨み、16日(木)にミャンマー、21日(火)にシリアと対戦します。
11月8日(水)に今回の代表メンバーが発表されましたが、伊藤敦樹、川辺駿、前田大然、古橋亨梧が怪我で不参加となり、渡辺剛、佐野海舟、細谷真大が追加招集となりました。多少の入れ替わりはありましたが、9月の欧州遠征、10月の国内シリーズのメンバーを中心に順当な選出だと思います。
今回の2試合は本番ではありますが、結果を出すことは大前提として代表チームの強化も同時に図っていく必要があります。欧州各国リーグも10試合以上を消化してコンディションにやや不安のある選手が出てきて、今回はそうした選手は呼ばなくていいのではないかという声もあると思います。
もちろん、そうした選手を呼ばずに国内組中心で戦っても勝てるかもしれません。けれど、チームを作り上げていくためには、一緒にトレーニングや試合ができる貴重な機会、時間を大事にしなければいけません。
今回呼ばれた選手たちが2試合ともフル出場することはないと思いますが、トレーニングも含めて戦術的な落とし込み、これまでやってきたことの精度を上げる。それがこの期間で取り組んでいくことになると思います。
また、各選手の所属クラブと日々コンタクトは取っているとは思いますが、実際に選手たちのコンディションをチェックできる機会というのも代表チームにとっては大事なことなので、今呼べるベストなメンバーの選出というのは必要なことだと思います。
そんな中でも追加招集の佐野や細谷をはじめ、毎熊晟矢、大迫敬介、前川黛也らJリーグ組も多く選ばれているのは良い傾向だと思います。とくに追加招集ではありますが、初選出の佐野は今季大きく評価を上げ、その活躍が代表のチャンスに繋がったことは他の国内選手にとって大きなモチベーションになると思います。
今回対戦するミャンマーとシリアは、どちらも日本にとっては格下になります。2試合とも相手が守備を固め、それを日本がこじ開けるという展開になるでしょう。選手たちはもちろん本番という意識で試合に臨みますが、ドイツ戦のような緊張感を持つことは難しいと思います。
その中で気を抜かず、どれだけプラン通りに試合ができるか。緊張感の欠如というのは、怪我に繋がったり、調子を落としたりということに繋がるので、どれだけ緊張感を意識的に持ちつつ、内容にこだわれるかが求められることになります。
内容のところでは、相手が守備を固める中でどうこじ開けていくか。ポイントになるのは最後のクオリティとリズムの変化だと思います。
日本の強みである両サイドのコンビネーションでどれだけ崩せるか。そこが崩せてきたら今度は中央が空いて、トップ下やトップの選手のコンビネーションが生かせるようになってきます。
どこで優位を取り、どこにスペースを明け、どう突いていくか。今回の試合は日本がボールを持って何度もチャレンジできるので、そこの精度を高めていってほしいと思います。最終予選やW杯本番など、相手が強くなるほどチャンスは少なくなり、1度の決定機を仕留めなければ勝てない世界になっていきます。
上のラウンドや高いレベルを意識しながら一つひとつのプレーの精度にこだわって、研ぎ澄ましていってほしいですね。
そういったチームとしてはもちろん、個人としてもアピールする大事な場です。久保建英や堂安律など、トップクラスの力がありながら定位置を奪えていない選手に森保監督がどうチャンスを与え、彼らがそれにどう応えるのかも見どころだと思います。W杯2次予選で日本がどんなスタートを切るのか、ぜひ注目してください。