ミャンマー戦をフカボリ! ミャンマー戦をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第79回のテーマは、W杯2次予選について。いよいよ始まったW杯予選に臨んだ日本代表はミャンマー、シリアに2連勝スタート。実力差があった中で日本代表がどんな内容を示して勝利したのか福西崇史が解説する。

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先週から日本代表が「FIFAワールドカップ26アジア2次予選 兼 AFCアジアカップサウジアラビア2027予選」に臨み、16日(木)のミャンマー戦に5-0、21日(火)のシリア戦も5-0と2連勝のスタートとなりました。

先に行われたミャンマー戦では戦前の予想通り、相手が極端に引いて守って最終ラインに7人が並ぶ時間帯も多くありました。序盤はやや戦いづらさを感じたものの、5-0は及第点の結果だったと思います。

一方的に攻め続けたため、守備においての問題点はありませんでしたが、攻撃面でよかったのは、引いて守る相手の裏を取って崩せていたことだと思います。

それぞれの得点を見ていくと、前半11分の先制点では上田綺世が斜めに裏へ走り込んだところへ、南野拓実が巧みな浮き球のパスを合わせて難しいヘディングのシュートを決めました。28分の2点目は田中碧が中盤の中央でボールを受け、相手を引きつけてできたギャップに鎌田大地が走り込み、田中がスルーパスを通してミドルシュート。

前半アディショナルタイム4分の3点目は、右サイドのペナルティエリア角あたりでボールを持った堂安律が、顔を上げた瞬間に中央の上田がダイアゴナルに走り込み、堂安がノールック気味にスルーパスを通して決まりました。

後半に入って50分の4点目は、南野がライン間の狭いスペースで町田浩樹から縦パスを受け、半身になった瞬間に中央の上田がセンターバック(CB)の間を縫って裏へ抜け出し、南野がスペースに置くような柔らかな浮き球を出して冷静に決めました。

そして最後の86分の5点目は、相手のCBが前に吊り出されてできたギャップを堂安が見逃さずに走り込み、それを見ていた守田英正が鮮やかな浮き球のパスを通して、堂安が冷静に沈めました。

どの得点もパスの受け手の裏を取る動き出しとタイミングが良く、出し手のパスのクオリティも非常に高かったと思います。引いて守られてもサイドに起点を作って、斜めの動きで裏を取ったり、引きつけて中を開けたりと、数的優位を作る工夫が多く見られてよかったと思います。

とくに印象に残った選手は鎌田です。あれだけ引いて守られると、スペースと時間は非常に限られるものです。その中でいかにワンタッチ目のコントロールでボールを動かすかが大事なってきます。そこを一番やっていたのが鎌田でした。

ライン間やラインの手前でボールを受け、素早く動かすこと、相手のタイミングを外しながらボールを動かすことで、少しずつ相手の陣形にズレを生じさせるプレーは鎌田が得意とするところで、この試合でも非常に効いていたと思います。

もう一人はハットトリックを記録した上田です。もっとも得意とする裏を取る動きの質は見事で、あれだけ守備ラインを低く設定され、スペースもほとんどない中でも裏を取り続けていたのはさすがの一言。そのチャンスをしっかりと決め切る決定力の高さを示してくれたと思います。

あえて注文をつけるとしたらもっと周りの選手が、上田をポストプレーで使う選択肢を持っていてもよかったと思います。そうすることで、より相手の守備ラインを動かし、裏を取るタイミングが生まれていたと思います。

力の差がある相手だからできて当然という見方もあるかもしれませんが、そういう相手に対しても雑にならず、高い集中力を保ってやるべきことを高いレベルでやるのは意外と難しいことです。それをしっかりとやり切れたことはよかったと思います。

控え組が中心のメンバーで臨みましたが、チームの底上げのための良い機会になったと思います。初招集組の佐野海舟も後半から出場し、周りとの連携がほぼない中でミスも少なく、非常に積極的なプレーを見せていたと思います。

シリア戦は残念ながら折り合いがつかず、日本での中継がありませんでしたが、主力組を中心に5-0としっかりと結果を出しました。とくにアクシデントもなく、W杯2次予選の良いスタートを切れ、来年1月に開幕するアジア杯へも弾みがつく2試合になったと思います。

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