ソフトバンクの高卒9年目の左腕、笠谷は通算7勝9敗1ホールド。制球に難はあるが球威があるため、環境の変化で開花の可能性も ソフトバンクの高卒9年目の左腕、笠谷は通算7勝9敗1ホールド。制球に難はあるが球威があるため、環境の変化で開花の可能性も

プロ野球のストーブリーグで注目のイベントのひとつ、「現役ドラフト」(12月8日開催予定)。昨年から導入されて12人の選手が移籍し、阪神・大竹耕太郎(元ソフトバンク)や中日・細川成也(元DeNA)が活躍したが、今年もチャンスをつかむ選手は現れるのか。

現役時代にソフトバンクで5年連続開幕投手を務め、沢村賞など数々のタイトルを獲得した攝津 正(せっつ・ただし)氏に、現役ドラフトでチャンスが広がりそうな選手を挙げてもらった。

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――昨年の第1回の現役ドラフトで、攝津さんの古巣・ソフトバンクから阪神に移籍した大竹投手は、12勝2敗と大活躍でした。ここまでの活躍を予想していましたか?

攝津 正(以下、攝津 大竹投手は球団のカラーというか、方向性が合わずに1軍で投げるチャンスをほとんどもらえていませんでしたが、十分にやれると思っていました。2軍ではいいピッチングを見せていましたし、先発ローテーションで回れる力は持っていましたから。

――今年の現役ドラフトに出たら、チャンスが広がりそうな選手はいますか?

攝津 私の古巣だからというわけではないですが、ソフトバンクにはそういった選手が多そうですね。笠谷俊介投手(26歳)もそのひとりです。

今年はリリーフで8試合の登板にとどまりましたが、数年前は先発でも投げて3、4イニングぐらいはビシッと抑えていました。球の力も落ちていませんし、十分にやれると思います。

――先発と中継ぎ、どちらが向いていると思いますか?

攝津 両方こなせると思いますが、コントロールが少し不安でランナーを置いた状態では登板させにくいので、先発かなと。フォアボールでランナーを出すことはあるでしょうが、5、6イニングは計算できると思います。なので、先発の左ピッチャーが不足している球団だと活躍の場が広がりそうです。

――ソフトバンクは選手層が厚く、球威のあるピッチャーでも出場機会に恵まれていない選手が多い印象です。

攝津 今年、1軍の登板がなかった杉山一樹投手(25歳)もそうですね。やはりコントロールが課題ですが、長身から投げ下ろす真っすぐに力があります。能力は間違いないのですが故障がちだったので、モチベーションを上げるのが難しかったのかもしれません。そういう意味では、ほかの球団でゼロからスタートするのもアリなのかなと。

――2年前には160キロをマークしましたね。

攝津 球の速さと強さが抜群ですし、1イニング限定でランナーがいない状況で出してあげれば、いい働きをすると思います。球威はあるけど故障がちといえば、ソフトバンクから日本ハムに移籍した田中正義投手もそうでした。

彼の場合は、FAでソフトバンクに移籍した近藤健介選手の人的補償として日本ハムが獲得しましたが、クローザーとしてブレイクしましたし、環境を変えて成功した選手のいい例です。

――ソフトバンクの野手だと、リチャード選手(24歳)はいかがですか?

攝津 長打力は誰もが認めるところですが、ポテンシャルを発揮できずにくすぶっています。今シーズンは22試合出場で打率.115、本塁打はゼロ。与えられた少ないチャンスをものにできませんでした。

12球団を見渡すと右バッターの内野手が不足している球団が多いように思いますし、現役ドラフトに出るとすれば、ファーストやサードが空いている球団は間違いなく獲(と)りたい選手でしょうね。まだ若いのも魅力です。

――他球団で活躍の場が広がりそうな野手はいますか?

攝津 楽天の田中和基選手(29歳)です。18年にパ・リーグの新人王を獲りましたが、走・攻・守、三拍子そろった選手で両打ちなのも魅力です。ただ、楽天には俊足巧打の似たようなバッターが多いので、役割がかぶってしまうんです。

ここ数年は守備のうまさや足の速さを生かして守備固めや代走で起用されていますが、本来の打撃力が戻れば控えに甘んじる選手ではない。プロ入り当初は左右両方の打席でホームランを打っていましたしね。もし現役ドラフトで出るとすれば、外野が手薄な球団は欲しがるはずです。

――プロ入り当初に一時的に活躍しながら、不振にあえいでいる選手は多いですね。

攝津 ロッテの佐々木千隼投手(29歳)も、ルーキーのときのピッチングを見て「すごくいいな」と思っていたのですが、その後は故障もあったりして先発ローテーションに入れていません。2年前はリリーフで活躍(8勝1敗26ホールド)していましたが、それ以降は1軍の登板がほとんどないですよね。

――先発とリリーフ、どちらが活躍できそうですか?

攝津 結果を残しているという点ではリリーフですね。ロッテはリリーフ陣の顔ぶれが毎年変わる印象があるので、ロッテでもチャンスはあると思いますが、ほかの球団でも活躍できる可能性がある。スリークオーター気味の変則タイプですし、現役ドラフトに出れば人気でしょう。

――セ・リーグでいうと、リリーフ陣の層が厚い阪神にも他球団で活躍できそうなピッチャーが多そうですね。

攝津 阪神の馬場皐輔投手(28歳)が他球団に行けば、勝ちパターンのリリーフで活躍できるんじゃないかと。

阪神はリリーフ陣の層が厚くて登板機会が少なかったのですが、今シーズンの成績も悪くないです(19試合登板、2勝1敗3ホールド、防御率2.45)。真っすぐにある程度の球威があって球種も多いですし、他球団なら登板数がグッと増えるかもしれません。

ここで挙げた選手のほかにも、大竹投手や中日の細川選手のように、現役ドラフトを機に他球団で成功する選手が増えてほしいですね。