サントリーに加入した南アフリカのコルビは、身長172㎝と小柄ながら、スピードを生かしてトライを量産する世界的なWTBだ サントリーに加入した南アフリカのコルビは、身長172㎝と小柄ながら、スピードを生かしてトライを量産する世界的なWTBだ

12月9日、3年目を迎えるラグビーの「NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24」が開幕する。今季は、9月から10月にかけてフランスで開催されたラグビーワールドカップ(W杯)を戦った日本代表34人のうち、33人がディビジョン1に所属し、優勝を争う。

一方で、同W杯で躍動した世界のスター選手27人も日本でプレーすることになった。

その一例として、リーグワン初優勝を狙う東京サントリーサンゴリアスには、南アフリカ代表をW杯連覇に導いたWTBチェスリン・コルビと、W杯準優勝のニュージーランド(NZ)代表〝オールブラックス〟で主将を務めたFLサム・ケインというビッグネームが新加入。

東芝に入ったNZ代表のSOモウンガは、スーパーラグビーで7連覇も経験。パス、ラン、キックと三拍子そろった攻撃の司令塔だ 東芝に入ったNZ代表のSOモウンガは、スーパーラグビーで7連覇も経験。パス、ラン、キックと三拍子そろった攻撃の司令塔だ

さらにNZ代表では、スーパーラグビーのクルセイダーズで7連覇に貢献したSOリッチー・モウンガが東芝ブレイブルーパスに、ともに代表キャップが100を超える〝ベテランハーフ団〟SHアーロン・スミスとSOボーデン・バレットがトヨタヴェルブリッツに加入する。

さらに、ブロンドの長髪が日本でもおなじみになった南アフリカ代表の司令塔、SHファフ・デクラークは昨季から横浜キヤノンイーグルスでプレーするなど、W杯決勝で歓喜の瞬間を味わった南アフリカ代表の選手たちも顔をそろえる。

そのほか、ウェールズやオーストラリアなど強豪国の代表選手もいるが、彼らはなぜ日本でプレーすることを好むのか。

W杯連覇を果たした南アフリカのSHデクラークは、昨季からキヤノンでプレー。チームを史上最高の3位に導きベスト15に選ばれた W杯連覇を果たした南アフリカのSHデクラークは、昨季からキヤノンでプレー。チームを史上最高の3位に導きベスト15に選ばれた

前提として、世界のラグビーシーンにおけるリーグワンの価値は高い。リーグ関係者が「日本人が思っている以上に、世界的に価値がある」と言い、協会関係者も「リーグワンは魅力的な移籍市場のひとつになっている」と話すように、すでに確固たる地位を築いている。

日本でプレーする世界のトップ選手のサラリーは、リーグワンになってからやや高騰しているとも聞くが、最も高額な選手の年俸でも約1億7000万円と推測されている。単純に金額だけで見れば、フランスやイングランドでプレーしたほうが報酬は高額かもしれない。

ただ、日本は他国に比べて治安が良く、家族とプライベートな時間を多く取れるという点がかなり魅力的に映るようだ。かつてサントリーでもプレーしたバレットには、現在ふたりの娘がいるが、「日本は安全に暮らせる点に惹(ひ)かれた」と話していた。 

また、リーグワンは現時点でカップ戦がないため、欧州に比べて試合数が少なく、移動時間や距離は比較的に短い。さらに日本のラグビーは、フィジカルやスピード面のレベルが年々上がっているとはいえ、スーパーリーグなどに比べると中堅からベテランの選手にとっては肉体的負担が少ない。

そんな中でコンディションをキープできるのも、人気の要因になっている。

そうした理由から、リーグワン以前のトップリーグ時代から、多くの外国人選手が来日してきた。2023年の「世界最優秀選手賞」を受賞したNZ代表のNO8アーディ・サヴェアがコベルコ神戸スティーラーズに加入したが、これまで実に8人の世界最優秀選手が日本のクラブに在籍。

同じ神戸のNZ代表LOブロディ・レタリック(14年に受賞)、トヨタのバレット(16、17年に受賞)もそのひとりだ。

トヨタに加入したNZ代表SOのバレット(写真)をはじめ、過去の世界最優秀選手賞の受賞者も、日本でプレーする機会が増えている トヨタに加入したNZ代表SOのバレット(写真)をはじめ、過去の世界最優秀選手賞の受賞者も、日本でプレーする機会が増えている

ここまで述べてきたように、日本でプレーする選手には南アフリカ代表、NZ代表の選手が多くなっているが、それにも理由がある。

まず南アフリカ代表は19年から制限がなくなり、他国でプレーしていても代表になることができるようになった。そのため海外でプレーする選手が多く、中でも日本が一番人気となっている。

一方、国によってさまざまな例外はあるが、NZやオーストラリア、イングランド、ウェールズなどでは、原則的に自国のクラブでプレーしなければ代表になれない。つまり海外でプレーすることは、代表チームには招集されないということを意味する。

特にNZでは協会と契約しなければオールブラックスに入れないため、今季、新たに日本のクラブに加わるNZ代表8人のうち6人はNZ協会と契約を交わしていない。ベテラン選手の中には代表を引退してから来日した選手もいる。

ただし、主将のケイン、世界最優秀選手のNO8サヴェアは、「サバティカル(sabbatical)」での来日となった。「サバティカル」とは、もともと研究休暇や長期契約者向けの長期休暇という意味で使われる。

これはNZ協会がオールブラックスのトップ選手の海外流出を止めるために、リフレッシュや金銭的な理由で1年ほど海外でのプレーを認める制度だ。NZ代表の中には、この制度を使って来日する選手も多い。

19年に日本でW杯が開かれ、食文化や観光地が知られたこともあり、ウェールズ代表や元イングランド代表選手など、欧州の選手も多く来日するようになってきた。ラーメンやすき焼き、焼き肉など食に惹かれる選手もいるという。

年々リーグ全体のレベルが上がり、金銭面、家族サービスやプライベートな時間が多く取れる環境面など、リーグワンが世界のトップ選手から愛される状況は続きそうだ。今季も日本代表選手だけでなく、各国代表が数多く在籍しているリーグワンで、世界トップレベルのラグビーを楽しんでほしい。