馬場皐輔(阪神タイガース) 2017年のドラフト1位・馬場。中継ぎとして起用され、2021年には44試合に登板した馬場皐輔(阪神タイガース) 2017年のドラフト1位・馬場。中継ぎとして起用され、2021年には44試合に登板した

昨年、初開催されて話題を呼んだ現役ドラフトが今年も12月8日に実施される。来季、新天地で輝きを放つのはいったい誰なのか? 各球団に眠る〝ポテンシャルが高いけどくすぶっている選手〟を一挙紹介!

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■現役ドラフトの肝は新天地とのマッチ度

今季、〝現役ドラフト1期生〟として注目を集め、結果を出した阪神の大竹耕太郎(28歳)と中日の細川成也(25歳)。来季、彼らに続く選手は誰なのか? 選手選考と寸評を担当してくれたのは、『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏だ。

「成功するために大事なのは、とにかく新天地にマッチすること。大竹は球速重視のソフトバンクではハマらなかったけど、配球が巧みな阪神にはマッチした。細川は中日で感覚が近い和田一浩打撃コーチと出会い、打撃フォームを見直せたことが大きかった」

そんな〝運命的な移籍〟を果たす選手は何人いるのか? 球団別に可能性のある選手を見ていこう。(以下、選手名後の年齢表記は12月4日時点)。

~セ・リーグ編~

【阪神タイガース】

阪神で「もし対象選手ならばぜひ獲とりたい」と語るのは馬場皐輔(28歳)だ。

「もともと変化球のレベルは高く、今年は球も速くなりました。ただ、阪神の充実投手陣の中では埋もれがち。出すにも獲るにも程良いラインです」

野手なら井上広大(22歳)。

「ドラフト2位で高卒4年目なので、現役ドラフトの可能性は低いかもしれませんが、いいモノを持っているのにあと一歩殻を破りきれていない。同じ若手の右打者で、11月に支配下登録された野口恭佑を岡田彰布監督が『秋季キャンプMVP』に挙げるなど、井上もうかうかできない状況です」

そして、馬場と井上に次いで可能性がありそうなのは投手の浜地真澄(25歳)だ。

「圧倒的な決め球はないですが、質の良いストレートと制球力、卓越した野球脳で打者を打ち取るリリーバー。昨年は防御率1点台でしたが、今季は制球・球質がいまひとつ。

来季は右肩コンディション不良からの復調が期待されるが、似たタイプの石黒佑弥をドラフトで指名し、競争は激化。現役ドラフトの可能性も高まっています」

さらに、「もしかすると......」と言及したのが投手の秋山拓巳(32歳)。

「来季推定年俸が50%減で4400万円に。もちろん、年齢はネックで、球も全盛期より遅くなっていますが、卓越した投球技術と経験を生かせば、まだまだ再起できるはずです」

【広島東洋カープ】

広島で「もし対象選手ならば欲しい」として名前を挙げたのは中村奨成(24歳)だ。

「打球速度が速く、当たれば飛ぶ。ポテンシャルは十分です。素行問題もあっただけに心機一転やり直す可能性も。〝控え捕手兼右の代打〟で巨人あたりは欲しいはず」

中村奨成(広島東洋カープ) 2017年のドラフト1位・中村。鳴り物入りで入団したが、1軍では結果を残せていない中村奨成(広島東洋カープ) 2017年のドラフト1位・中村。鳴り物入りで入団したが、1軍では結果を残せていない

同じく2番手捕手枠で注目なのが石原貴規(25歳)だ。

「今季1軍出場ゼロだが、2年目は1軍で十分やれる守備力があった。矢野燿大(中日→阪神)や野口寿浩(ヤクルト→日本ハム)のように新天地で出番が増えるケースもあります」

そのほか、投手では塹江敦哉(26歳)や中村祐太(28歳)、野手では林 晃汰(23歳)に注目する。

「一昨年、本塁打10本を打ったパワーの持ち主も、ここ2年は出番がほぼなく、他球団からしたら、ぜひ欲しい選手。ただ、西川龍馬がFA移籍しただけに左打者は安易に出さない可能性が高いです」

【横浜DeNAベイスターズ】

細川成也の〝流出〟を許したDeNA。同じように他球団で輝きそうなのは京山将弥(25歳)だ。

「高校時代から投球術が優れていたのに、それをうまく生かしてスケールアップできているわけではありません。もっとやれるはずです」

このほか、出番の少ない左腕の坂本裕哉(26歳)や櫻井周斗(24歳)らをピックアップ。また、ドラフトで度会隆輝、井上絢登という期待の打者を指名した点から、神里和毅(29歳)、蝦名達夫(26歳)らにも注目する。

「蝦名は当たれば飛ぶけど、コンタクト能力に課題がある選手。細川が中日で和田コーチと出会ったように、いい指導者に出会えれば......」

【読売ジャイアンツ】

巨人でまず名前が挙がったのは髙橋優貴(26歳)と平内龍太(25歳)のドラ1コンビ。

「両投手とも四球を嫌うベンチの顔色をうかがっておびえてしまい、本来の思いきった投球が影を潜めている。環境が変わるといいのでは。とはいえ、ドラ1はなかなか出さないでしょうね」

髙橋優貴(読売ジャイアンツ) 2021年にはリーグ最多26試合に先発し、11勝を挙げた髙橋。今季はプロ入り後初の0勝髙橋優貴(読売ジャイアンツ) 2021年にはリーグ最多26試合に先発し、11勝を挙げた髙橋。今季はプロ入り後初の0勝

そんな中、現実的にありそうなのが畠 世周(29歳)だ。

「右肘のクリーニング手術を受け、今季は1軍登板ゼロ。ケガさえ癒えていれば、中継ぎで戦力になります」

また、ユーティリティ系として北村拓己(28歳)、松原聖弥(28歳)、若林晃弘(30歳)、重信慎之介(30歳)にも注目する。

「相手が嫌がることもできる〝巨人軍〟の優秀な控え選手。特に北村は希少なユーティリティプレーヤーなので、なかなか出せないかも」

【東京ヤクルトスワローズ】

ヤクルトでは「出す可能性は低い」としつつ、梅野雄吾(24歳)の名を挙げた。

「中継ぎの柱として5年間で209試合に登板。ただ、今季は5試合のみの登板でした。勤続疲労かもしれませんが、まだ若いので球威を生かしてまた輝けるはずです」

梅野雄吾(東京ヤクルトスワローズ) 2019年には68試合に登板した梅野。勤続疲労か、今季はわずか5試合の登板にとどまった梅野雄吾(東京ヤクルトスワローズ) 2019年には68試合に登板した梅野。勤続疲労か、今季はわずか5試合の登板にとどまった

このほか、実績組では原 樹理(30歳)。ほかに尾仲祐哉(28歳)、長谷川宙輝(25歳)、金久保優斗(24歳)らを挙げ、野手では太田賢吾(26歳)が気になるという。

「左打者としてはセンスがあり、低めを打つ技術もある。ただ、長岡秀樹や丸山和郁、今年のファーム本塁打王の澤井廉らとかぶっているので候補になる可能性はあります」

【中日ドラゴンズ】

セ・リーグ最後はこのオフ活発な補強を見せる中日。まず名前が挙がったのは、今季1軍登板9試合のドラフト1位右腕、鈴木博志(26歳)だ。

「〝投手版・細川〟といった感じで、球威があり、カッターはいいのに制球難が悩み。考え方や技術を教えられる指導者と出会えれば、一気に化ける可能性も。森 博人(25歳)は逆にパワーはないけど、まとまりのある投手。中継ぎの一角に入る力はあります」

このほか、野手では石垣雅海(25歳)らにも可能性があるとみている。

~パ・リーグ編~

【オリックス・バファローズ】

3連覇中のオリックスからは、野手で複数ポジションが守れる山足達也(30歳)、そして充実の投手陣から数人の候補を挙げてくれた。

「ハイレベルな投手陣の1軍枠から漏れるラインの投手が現役ドラフトの候補になる」として、漆原大晟(27歳)、村西良太(26歳)らを挙げたが、最注目は本田仁海(24歳)だという。

「本田はフィジカルがさほど強くないのに、最速158キロを誇ります。つまり、投げ方はいいんです。でも、球質はまだ改善の余地がある。阪神など、この点を改善できる球団に移籍すれば、飛躍の可能性はあります」

本田仁海(オリックス・バファローズ) 昨年はリリーフとして42試合に登板し、日本一に貢献した本田。今季は防御率6点台本田仁海(オリックス・バファローズ) 昨年はリリーフとして42試合に登板し、日本一に貢献した本田。今季は防御率6点台

【千葉ロッテマリーンズ】

投手陣をやりくりして2位につけたロッテ。まず注目したのは、今季3試合の登板に終わった八木 彬(26歳)だ。

「ストレートが150キロでビシッときてフォークもスライダーもグワンと曲がる投手。2年前はほれぼれする投球だったので、あの姿が戻れば」

また、投手では出番の少ない佐々木千隼(29歳)、二木康太(28歳)、野手では平沢大河(25歳)、ベテランの可能性もあるなら井上晴哉(34歳)の名前を挙げた。

「右打ちの一塁手は西武や広島など補強ポイントにしている球団もあるだけに、検討の余地はある。平沢も環境を変えてみるのもありでしょう」

【福岡ソフトバンクホークス】

昨年、大竹耕太郎を出したソフトバンク。出番の少ない選手層の厚さは言わずもがな。まず注目は、左腕の笠谷俊介(26歳)だ。

「細かい制球力はありませんが、球は強く、今季わずか8試合登板ながら防御率1点台。ほかにも、ポテンシャルのある杉山一樹(25歳)、実績のある甲斐野 央(27歳)らは可能性は低いですが、もし名前があればぜひ欲しい選手。尾形崇斗(24歳)も力ずくの投球から脱却できれば、活躍の可能性はありそうです」

笠谷俊介(福岡ソフトバンクホークス) 制球に難はあるが、球は速い笠谷。今季わずか8試合登板ながら、防御率は1点台を記録笠谷俊介(福岡ソフトバンクホークス) 制球に難はあるが、球は速い笠谷。今季わずか8試合登板ながら、防御率は1点台を記録

一方、野手で「可能性は低いけどすぐ欲しい」という選手が谷川原健太(26歳)だ。

「鉄砲肩で、捕手としても外野手としても魅力的です。ソフトバンクは甲斐拓也の固定起用が長く続いたため出番に飢えた捕手が多く、海野隆司(26歳)もそのひとり。監督交代で序列が変わる可能性もありますが、どうなるか」

また、今オフは巨人からウォーカーを獲得。さらに山川穂高のFA加入が有力視されるため、右打者に余剰人員が生じる可能性を指摘する。

「可能性はほぼないけど、野村 勇(27歳)が候補にいれば、いの一番で獲るべき。リチャード(24歳)もポテンシャルはあるだけに〝第二の細川〟になれる素材です」

リチャード(福岡ソフトバンクホークス) 今季、前人未到となるウエスタン・リーグ4年連続ホームラン王に輝いたリチャードリチャード(福岡ソフトバンクホークス) 今季、前人未到となるウエスタン・リーグ4年連続ホームラン王に輝いたリチャード

【東北楽天ゴールデンイーグルス】

投手でまず名前が出たのは藤平尚真(25歳)だ。

「ドラフト1位入団なので可能性は低いですが、入団以降の伸び悩みと比べて今年は良くなりました。もしリストにいれば欲しい投手です」

藤平尚真(東北楽天ゴールデンイーグルス) 2016年のドラフト1位・藤平。今季は5年ぶりに2桁登板を果たすも、防御率は4点台藤平尚真(東北楽天ゴールデンイーグルス) 2016年のドラフト1位・藤平。今季は5年ぶりに2桁登板を果たすも、防御率は4点台

〝和製ランディ・ジョンソン〟の異名を持つ弓削隼人(29歳)も気になる存在だ。

「193㎝の大型左腕です。カットボールが良く、ポテンシャルはあると思います」

野手で注目は、スイッチヒッターの田中和基(29歳)。

「2年目に18本塁打を打って期待されましたが、伸び悩んでいるうちに辰己涼介の台頭で出番が減少。現役ドラフトの趣旨に合致します」

【埼玉西武ライオンズ】

打力のチームから、すっかり投手力のチームへと変貌を遂げた西武。層が厚くなった投手陣から、まず名前が挙がったのは宮川 哲(28歳)だ。

「宮川は130キロくらいのパワーカーブはいいので、その球を生かせれば面白いです」

一方、野手では呉念庭(30歳)、岡田雅利(34歳)らベテラン勢の名前を挙げる。

「呉念庭は数年前なら阪神あたりとトレードすれば面白い存在でした。今も技術のある左打者として獲得はありです。岡田は今季、ケガで出番ゼロ。その間に4年目の柘植世那と2年目の古賀悠斗が森友哉の抜けた穴を埋め、さらに来季は炭谷銀仁朗も戻ってくる。出番がないのならば、名前が挙がるかもしれません」

【北海道日本ハムファイターズ】

日本ハムの投手陣には、右も左も気になる存在がいる。右腕では生田目 翼(28歳)と田中瑛斗(24歳)の名前が挙がった。

「生田目はもともとポテンシャルがあり、カットボールはいいものを持っているので、自身の球質を理解した投球を意識できれば。田中は球種が豊富で投球センスがあるので、もう少しパワーをつけて決め球を備えたら面白い存在」

左腕では、長谷川威展(24歳)と堀 瑞輝(25歳)。

「どちらも左の変則サイドでスライダーを投げる中継ぎタイプ。ソフトバンクから阪神に移り、輝きを見せた渡邉雄大と同タイプなので、環境が変わることでチャンスが生まれるかもしれません」

一方、野手では万波中正の陰に隠れて出番を減らした今川優馬(26歳)のほか、捕手では清水優心(27歳)の名前が挙がった。

「清水は今季、インプレー中にミットを外すポカがあり、首脳陣の信頼をなくしてしまった。日本ハムはこの1年でアリエル・マルティネス、郡司裕也、伏見寅威が加わり、ドラフトでも大学代表正捕手の進藤勇也を指名。現役ドラフトの有力対象になりそう」

この中に再起の機会をつかむ選手はいるのか? 現役ドラフトから目が離せない。

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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