不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第81回のテーマは、2023年J1リーグのベストイレブンについて。今季のJ1において、とくに印象に残った選手を中心に、福西崇史がベストイレブンを選出した。
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FW:大迫勇也、武藤嘉紀(ヴィッセル神戸)、アンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)
MF:山口蛍、齊藤未月(ヴィッセル神戸)、満田誠(サンフレッチェ広島)
DF:酒井高徳(ヴィッセル神戸)、佐々木翔(サンフレッチェ広島)アレクサンダー・ショルツ、マリウス・ホイブラーテン(浦和レッズ)
GK:西川周作(浦和レッズ)
FWには神戸から大迫勇也、武藤嘉紀、横浜FMからアンデルソン・ロペスの3人を選出。今季の大迫は、誰の目からみてもMVPで間違いない活躍を披露しました。得点もさることながら攻撃の起点、前からのプレスなど、前線からチームを牽引しました。
その大迫の活躍を支えたのが、武藤の働きでした。彼の突破力によって、大迫に多くのチャンスを作り出したし、前線からの守備の追い込みは神戸の強度の高いサッカーを支えていました。大迫は22得点でキャリアハイを記録し、得点王にもなりましたが、武藤の活躍あっての数字だったと思います。
同じく22得点で得点王に並んだアンデルソン・ロペスは、ゴールを取るというところではJの中でトップクラスに長けていることを証明したと思います。ただ、彼一人でなんでもできたわけではなく、大迫と同様にそれ以外のところをエウベルやヤン・マテウスが大いに助けてくれたと思います。
MFは神戸から齊藤未月と山口蛍の2人、広島から満田誠を選びました。神戸が今季のスタイルに変更してから二人の守備で貢献度は非常に高いものがありました。齋藤の中盤で潰しがきく強度の高いプレスは相手を大いに苦しめていたし、山口はそれに加えて経験によってチームに落ち着きをもたらしていました。
広島の満田は第12節の怪我によって離脱してからチームが大いに苦しみ、復帰すると復調していったのを見てわかるように、彼の攻守においての貢献度は極めて高かったと思います。とくに彼が入ることで攻撃の推進力がぐっと上がり、局面を打開する上で大きな役割を担っていました。日本代表でもぜひまた見てみたい選手です。
DFは神戸から酒井高徳、広島から佐々木翔、浦和からマリウス・ホイブラーテン、アレクサンダー・ショルツの4人を選出。
酒井と佐々木の2人は、カバーリングや対人守備など守備のうまさ、攻撃では次の人への気遣いができて、豊富な経験値によって攻守でチームを後方から支える存在感がありました。
ホイブラーテンとショルツの2人は盤石で、今季を象徴するCBコンビだったと思います。カバーリングや前へ出ての強さ、インターセプト能力、対空戦の強さ。攻撃においても繋ぎの部分は上手いし、前へ飛び出していって攻撃にプラスアルファを加えられ、高さでも脅威になったと思います。
GKは浦和の西川は、セービングもフィードも抜群で、後方から後ろを支えるという点で圧倒的な存在感だったと思います。37歳という年齢で、衰えるどころかさらに凄みが増して、より安定感のあるセービングを披露していました。
浦和は27失点で今季リーグ最小でしたが、ホイブラーテン、ショルツ、西川の3人による最終ラインはベストユニットだと思います。その中でも西川が一番の要で、他に候補がいないくらい今季ナンバーワンのGKでした。
今季のJ1はヴィッセル神戸の初優勝で幕を閉じ、その神戸に代表されるように、全体的に守備の強固なチームが躍進したことは一つのトレンドだったと思います。そうした中で神戸や浦和など、個人的に印象に残った11人を各セクションから選ぶ形になりました。