ドラマチックな展開で目が離せなかったよ。16季ぶりのJ1復帰を決めた東京Vには心からおめでとうと言いたい。
J1昇格プレーオフ決勝は後半アディショナルタイムに東京Vが清水に追いつき、1-1のドローでJ1昇格を決めた。引き分けの場合、リーグ戦上位を勝者とするルールが(東京Vは3位、清水が4位)、試合展開を大きく左右したね。
勝たなければいけない清水は試合開始から攻め続け、引き分けでもいい東京Vはしっかりと守っていたけど、後半18分に主将の森田のハンドでPKを献上し、リードを許す。そこから試合が動いた。
今度は清水が守り、東京Vが攻める。それも東京Vは焦ってロングボールを放り込むのではなく、自分たちのボールをつなぐサッカーをしつこく続けた。「負けているのにつないでいる場合か」とイライラしたサポーターも多かったと思う。
それでも粘ってつないで最後にPKを獲得。主将の森田をはじめ若い選手が多いチームなのによく持ち直したよ。次々と交代選手を投入した城福監督の采配も的確だった。
一方で、清水は悔いの残る試合運びをした。先制点を奪うまでは良かったけど、その後、完全に守りに入り、別のチームになってしまった。残り時間を考えると早すぎたね。カウンターを狙う意識も低く、後半38分には中盤でポイントになっていた乾も下げてしまった。
結局、攻め続けられることで余裕がなくなり、不用意なスライディングタックルでPKを献上。タレント豊富で攻撃力が持ち味のチームなだけに、先制点を奪った後にもう1点取りに行くくらいの姿勢でちょうど良かった。もったいないね。
この試合、5万3000人のお客さんが入った国立競技場の雰囲気も素晴らしかった。特にホームとはいえ、東京Vのサポーターがあんなにたくさん詰めかけるとは驚いた。さすが名門。隠れファンがたくさんいるということ。そして選挙の事務所と同じで、勝てばにぎわう。
個人的にも、東京Vのつなぐスタイルが、形を変えながらも脈々と受け継がれていることが感慨深かった。前身の読売クラブはプロ化する前の日本サッカーにあって唯一のクラブチーム。僕より1ヵ月早く来日した与那城ジョージや、日本代表でも活躍したラモス瑠偉など、ブラジル人選手の影響を受けたスタイルは異色だった。何しろ実業団チームが練習でタイヤを引っ張っていた時代だからね。余談だけど、僕もサッカー教室を始める前、監督のオファーを受けたことがある。
そして、Jリーグが誕生し、V川崎時代に黄金期を築き、その遺産が今回の盛り上がりにつながった。
だからこそ来季の戦いは重要になるよね。再びJ1に定着できるかどうか。そのためには枠が余っている外国人、特に点取り屋が欲しい。
予算的に苦しいのは承知だけど、「ヴェルディ」はスポンサーにとってもメリットを見込めるブランドだということは、このプレーオフで見せられた。J1 に上がるからといって極端にスタイルを変えたりせず、東京Vらしさを貫くのはもちろん、まずはこのシーズンオフに営業が頑張って新規スポンサーを獲得しないといけないね。ここからが本当の頑張りどころだ。