東京ヴェルディのJ1昇格をフカボリ! 東京ヴェルディのJ1昇格をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第83回のテーマは、16年ぶりにJ1昇格を決めた東京ヴェルディについて。J1プレーオフ決勝で清水エスパルスに引き分け、2008年以来のJ1の舞台へ返り咲いた東京Vの今季をOBでもある福西崇史が振り返る。

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東京ヴェルディが清水エスパルスとのJ1昇格プレーオフ決勝の結果によって、16年ぶりのJ1復帰を果たしました。僕が所属した2008年にJ2へ降格し、J1はそれ以来。落としてしまった複雑な思いや戻ってきてほしいという願い、希望など、さまざまなものが僕の中にもありました。それがようやく叶ってうれしい気持ちでいっぱいです。選手たちへの称賛、そして関係者の皆さんに「おめでとう」という言葉を送りたいですね。

この15年という長い間、クラブにはさまざまな変化がありました。とくに経営難に苦しみ、その煽りを僕も少なからず受けたし、もうクラブが潰れるとも言われていました。

そんな中で経験値のある年俸の高い選手が離れ、アカデミー育ちの有望な選手たちが、これからというところでチームを出ざるを得なくなりました。それはたとえ選手としては残りたくても出ていかなければいけなかった。サポーターにとって悲しい別れがたくさんあったと思います。

経営規模はなかなか大きくならない中で強化部長が代わり、大卒選手を多く獲得して、少ない予算規模でできる範囲の強化、試行錯誤を繰り返してきました。

城福浩監督が昨季から指揮を執り、チームのベース作りができたと思います。今季は強固な守備が際立っていました。チーム全体でやるべきことが整理され、選手たちはそれをサボらず、ハードワークし続けました。

そこにMF中原輝やFW染野唯月など、レンタルで攻撃のタレントを獲得し、攻撃に変化とクオリティを加えました。そうして簡単には崩れない安定したチームを作り上げた結果、リーグで3位となり、J1プレーオフ決勝で引き分けでの昇格につながりました。

その決勝は本当に我慢の試合だったと思います。タレント豊富な清水を相手に、少し受け身にならざるを得ない展開ではありましたが、それはシーズンを彼らがやってきたことでもありました。それが功を奏して、我慢し続けられたと思います。

PKを与えた場面は不運でもあったと思いますが、終了間際のPKによってよく苦境をはね除けたと思います。会場にはたくさんのレジェンドなOBの方々が足を運んでいましたが、昇格が決まった時はOBの一人である僕にとっても感慨深く、特別な瞬間でした。

決勝はもちろんですが、シーズンを通して印象深く残っている選手は森田晃樹です。23歳という若さでキャプテンとしてチームをよく牽引してきました。アカデミーで育ってクラブの悔しい時期をずっと見てきて、同じアカデミー育ちの選手が次々にいなくなるのも見てきた。そんな中で自分がやらなければという責任感は人一倍持っていたと思います。

決勝では自身のハンドでPKを献上し、先制された時は生きた心地のしない表情で心配もしましたが、そうした経験の浅さ、重圧を乗り越えてよく戦ったと思います。

ドラマチックな結果で終わった今季ですが、来季は本当に厳しい戦いが待っています。J1に残るためには、今季よりも攻守両面でスケールアップが必要なのは間違いない。とくにどのように点を取るのかは、昇格クラブが直面する大きな課題です。今季も得点数は上位のFC町田ゼルビアやジュビロ岩田に大きく劣りました。

それはクラブもよくわかっていることだと思いますが、予算的に多くの選択肢があるわけではないのも事実。今季のチームをベースにどのように強化していくのかは気になるところです。

東京Vに加え、ジュビロ磐田という自分がお世話になった2つのクラブがJ1昇格を決めました。磐田はプロとしてスタートしたクラブで、東京Vはプロとして現役最後のクラブ。両クラブが来季もJ1で躍動してくれることを心から楽しみにしています。

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