阪神の優勝で幕を閉じたプロ野球。テレビや新聞を賑わせているのは大谷翔平選手や山本由伸選手のドジャースへの移籍ですが、実はこの時期、選手たちは地道にトレーニングを続けているのです。本年最後の連載は、「オフシーズン」についてお話しさせてください。

5年間キャスターを担当させていただいた『ワースポ×MLB』(NHK BS1)は週5回の生放送で、シーズン中は野球選手と同じようなスケジュールで動いていました。そして11月にシーズンが終わると、キャンプインまでの間は束の間のオフ。オフシーズンになると、ホッとすると同時に、緊張が緩みすぎないように気をつけていました。

オフシーズンに心掛けていたのは、体調を崩さないことです。というのも、放送が終わって家に帰る頃にはすでに外は明るく、昼頃に床に着くこともありましたし、生活リズムもお肌もボロボロ(涙)。だからこそ、オフシーズンは、明るいうちからご飯を食べて(もちろんお酒も飲んで)、心身のバランスを整えることを意識していました。

オフ期間の選手たちはどう過ごしているのでしょうか。以前、五十嵐亮太さん夫妻にお声かけいただき、ヤクルトの石川雅規投手夫妻と食事をしたことがあったのですが、石川投手は「オフしかお酒を飲まない」と聞きました。ベテランと呼ばれる年齢になり、いつまで野球選手でいられるかわからない。だから、シーズン中は少しでもいいパフォーマンスを見せるために、決してお酒を飲まないんだとか。オフには少しだけ解禁するけれど、野球のことが頭から離れることはないそうです。

体が資本の野球選手たちは、オフシーズンでも体を整えることを常に意識しています。シーズン中の選手たちは、ナイターもあれば昼の試合もありますし、遠征もあります。ナイトゲーム終わりの食事はどうしても時間が遅くなり、翌日も試合がありますからお腹が減っていても暴飲暴食はできません。リズムを整えることの難しさは想像に難くありません。

だからこそ、オフシーズンはしっかり時間を管理して、心と体のケアを意識するようです。オフだからこそ、規則正しく過ごす。矛盾しているようですが、それがプロとして生きていくための心構えなのです。

みなさま、今年も一年、本当にお疲れさまでした。 みなさま、今年も一年、本当にお疲れさまでした。

オフシーズンとは、いわば「1年を通じて稼働するための準備期間」と言っていいかもしれません。タレントさんが休養することを「充電期間」と言ったりしますが、野球選手のオフは充電するだけなく、アップデートすることも必要です。2ヶ月何もしないで過ごした選手と、そうでない選手の仕上がりの差は歴然でしょう。

そういったこともあり、オフシーズンになると自主トレが話題になります。

広島の秋山翔吾選手の自主トレにお邪魔したことがあるのですが、複数球団の選手が切磋琢磨している様子が印象的でした。秋山選手は言語化能力が高く、持っているスキルやテクニックを惜しみなく他の選手たちに教えます。若手の選手にとっては非常に貴重な機会ですが、秋山選手も後輩から刺激をもらっているのかもしれません。

自主トレにはマスコミ公開日があり、私もその日に取材させていただきましたが、あえてマスコミに公開することで気を引き締めているのかな、と思いました。ベテラン選手はやはり自分を高める方法を知っていますね。そして、世間の人たちの興味が野球から離れてしまいそうな時期に話題を提供してくれる"サービス精神"も感じられます。

一流選手ほど、オフシーズンを充実させることを意識しているんじゃないかと感じます。ベテラン選手にとっては「体を維持すること」を心掛け、若手の選手たちは「体を作り上げる期間」と捉えているんじゃないかと。野球選手は1年を通して気が休まる時期がないんですね。

オフシーズンは次のシーズンで羽ばたくための序章。だからこそ試合では、野球に人生を捧げた人たちが輝く一瞬を目に焼きつけたいと思います。輝かしい未来に向けて、すべての選手の健康を祈り、今年は筆をおきたいと思います。

みなさま良いお年を!

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!