オリックスからポスティング移籍でメジャー挑戦を表明していた山本由伸までも、12年総額3億2500万ドル(約472億円)で射止めた オリックスからポスティング移籍でメジャー挑戦を表明していた山本由伸までも、12年総額3億2500万ドル(約472億円)で射止めた

日本を代表する2選手が同チームに。これは応援するしかない! というわけで、まだあまり知られていないドジャースのチーム状況をまとめてみました。

■MLB屈指の豪華打線! 一方で投手陣に課題

MLBのストーブリーグ最大の目玉となっていた大谷翔平と10年7億ドル(約1017億円)という破格の金額で契約したロサンゼルス・ドジャース。さらにオリックスからポスティング移籍でメジャー挑戦を表明していた山本由伸までも、12年総額3億2500万ドル(約472億円)で射止めた。

第5回WBCを制した侍ジャパンの中心メンバーである2人が加入したことで、ドジャースへの注目が一段と高まっている。

ドジャースの球団としての歴史は1884年にさかのぼる。球団創設当初はニューヨークに本拠地を置いていたが、1958年に現在のロサンゼルスに移転。ニューヨーク時代はワールドシリーズに進出してもなかなか勝てなかったが、移転後は6回の世界一を達成するなど、MLB屈指の名門球団となった。

日本人にとってもなじみの深い球団で、かつては野茂英雄や石井一久、黒田博樹、前田健太らが在籍したことで知られている。

チームの人気もすさまじく、23年シーズンの観客動員数383万7079人はメジャートップ。コロナ禍の影響により無観客で短縮シーズンだった20年を除き、観客動員数は10年連続トップを誇る。

戦力面でも充実しており、ウィル・スミス(捕手)、フレディ・フリーマン(一塁手)、マックス・マンシー(三塁手)、ムーキー・ベッツ(外野手)らメジャーを代表する選手がそろっていて、大谷、山本が加わる2024年のドジャースはまさしく"ドリームチーム"となった。

そんなスター軍団を率いるのが、デーブ・ロバーツ監督だ。母が日本人で沖縄県出身。現役時代は俊足巧打の外野手として知られ、レッドソックス時代の04年にはヤンキースとのア・リーグ優勝決定シリーズで流れを変える二盗を成功させたことで一躍脚光を浴びた。

チームを率いるのは、就任以来、昨年までの8シーズンで地区優勝7回を誇る名将デーブ・ロバーツ監督 チームを率いるのは、就任以来、昨年までの8シーズンで地区優勝7回を誇る名将デーブ・ロバーツ監督

09年に現役を引退し、ドジャースの監督に就任したのは16年から。その年にナ・リーグ最優秀監督に選出されるなど、指導者としての才能は即開花。就任以来、昨年までの8シーズンで地区優勝7回、在任中はすべてプレーオフに進出し、20年にはワールドシリーズ制覇を果たした。

ロバーツ監督について、長年メジャーを取材する米国人ジャーナリストのブラッド・レフトン氏は次のように語る。

「コミュニケーション能力に長(た)けており、常に選手のことを第一に考えている。選手にとってはすごくやりやすい監督だと思う」

そこで注目なのが大谷の起用法。ブラッド氏が続ける。

「今年1年は右ヒジ手術後のリハビリ期間のため投げることはできないので、DHとして打者に専念することになるでしょう。打順については、昨年ドジャースは1番にベッツ、2番にフリーマンを据えてうまく機能しました。

なので、1、2番は変えずに大谷を3番に置くと思いますが、大谷の2番、フリーマンの3番も考えられます。いずれにしてもベッツ、フリーマン、大谷の3人はMVP獲得の経験があり、4番に座るであろうスミスも高い攻撃力を誇るので、メジャー30球団の中でも屈指の破壊力を誇る打線になるでしょう」

また、ロバーツ監督が「左翼・大谷」のプランもあると明言していたが、ブラッド氏は次のように語る。

「右ヒジの回復具合にもよりますが、現実的には考えづらい。主力を休ませるために大谷に代わってDHで起用することはあるでしょうが、だからといって大谷を守備に就かせることはないと思います」

一方の山本についてはどうか。ブラッド氏は「まだメジャーで一球も投げていないので断定はできないですが」と前置きした上で、こう語る。

「ドジャースは昨シーズンのチーム防御率が4.06と投手陣に課題がありました。オフに昨年タンパベイ・レイズで10勝を挙げたタイラー・グラスノーをトレードで獲得し、彼と山本が先発陣の中心になるのは間違いありません。

ここに昨年11勝のボビー・ミラーをはじめ、ウォーカー・ビューラー、エメット・シーハンらが先発ローテーションを担うことになります。山本を筆頭に彼らが期待どおりの活躍をしてくれれば、メジャーでも屈指の先発陣が形成されるでしょう」

ドジャースの不動の1番打者ムーキー・ベッツ外野手。他チームでMVP獲得経験も。走攻守共に能力が高い ドジャースの不動の1番打者ムーキー・ベッツ外野手。他チームでMVP獲得経験も。走攻守共に能力が高い

スター選手が並ぶ攻撃陣に、様変わりした投手陣。12年連続のポストシーズン出場はもちろん、目指すは20年以来となるワールドシリーズ制覇のみだ。だが、これだけの戦力をそろえたとしても道のりは平坦(へいたん)ではない。

圧倒的な強さでレギュラーシーズンを制しても、ポストシーズンであっさり負ける......。メジャーではよくある光景だ。事実、昨年のドジャースも100勝62敗でナ・リーグ西地区を制したが、ディビジョン・シリーズでアリゾナ・ダイヤモンドバックスに敗れ、あっけなくシーズンを終えた。

「ポストシーズンは長丁場のシーズンと違い、短期決戦です。特に主力の好不調は結果に大きく影響します。いくら補強していい選手を獲(と)ったとしても、ポストシーズンの時期に好調を維持できるかわかりません。ワールドシリーズを制するには実力はもちろんですが、勢いや運も必要になってきます」

そう語るブラッド氏はさらにドジャースの不安要素についてこう指摘する。

「先ほども述べましたが、山本もメジャーで通用するかどうかは現時点で読めない。そして、ビューラーはトミー・ジョン手術から復帰する最初のシーズンで球数は制限されるでしょうし、ミラーも昨年メジャーデビューしたばかりの投手です。

また、長年ドジャースのエースを務めたクレイトン・カーショーはFAで再契約するかは不透明で、契約したとしても左肩の手術で夏までは投げられない」

このように投手陣が未知数な面もあるが、大谷や山本ならドジャースを悲願の世界一へきっと導いてくれるはず!

チームは3月20日に韓国で、ダルビッシュ有、松井裕樹が所属するパドレスと開幕戦を迎える。要注目だ。