2位じゃダメ。優勝あるのみ。そう言うと「セルジオは厳しすぎる」と言われる。でも、選手たち自身もそう思って大会に参加していると思う。W杯ベスト8以上を目指す以上、アジアで負けるわけにはいかない、とね。
アジア杯(カタール)が開幕した。日本代表のメンバーを見ると、常連組では鎌田、田中碧、古橋らが選外になったものの、それ以外はほぼベストメンバーを招集できた。
韓国、サウジアラビア、イランなど手ごわい相手もいるし、決して勝って当たり前と言えるような大会ではない。でも、ノルマはあくまで優勝だ。
ここ数年はいつも言っていることだけど、日本の守備は計算できる。特にセンターバック、ボランチはタレントが揃っていて頼もしい。
とはいえ、守るだけでは優勝できない。カギを握るのはやはり攻撃的なポジションの選手になる。森保監督は5人の交代枠をフル活用するし、多くの選手がチャンスをもらえるはず。その全員に期待したいね。大会を通してヒーローが出てくるかどうか。個人的にはワントップの細谷のブレイクを期待したい。
今の日本代表は海外組がメンバーの大半を占め、大会前にシーズン途中に所属クラブを長期離脱することに対して複雑な胸中を明かした選手もいる。
例えば久保は決勝まで勝ち進んだ場合、チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメントの大一番、パリ・サンジェルマンとの第1戦への出場が絶望的になる。また、遠藤は名門リバプールでレギュラーの座をつかみつつあるのに、振り出しに戻るかもしれない。
これは難しい問題だよね。選手たちの気持ちは理解できる。
日本代表のユニフォームを着て国際大会を戦うのは最高のステータス。でも、生活を支える給料を支払ってくれるのは所属クラブ。また、CLともなれば、注目度も高く、すばらしい雰囲気の中で試合が行なわれる。4年に1度しかないW杯やアジア杯よりも、毎年あるCLの舞台に、より魅力を感じる選手が出てきたとしてもおかしなことじゃない。
大会の開催時期を欧州のカレンダーに合わせるべきという声もあるようだけど、気候の問題もあるし、ひと口にアジアと言っても、エリアも広大で、文化も考え方も国によって全然違う。アジアサッカー連盟における各国の力関係も絡み合って、簡単な話ではないだろう。
ただ、この問題をポジティブに考えるなら、日本のレベルが上がったからこその新たな悩みだね。CLに出るような名門クラブから「代表に行かないでほしい」と思われるのは、それだけ認められているということ。今の日本にはそういう選手が何人もいるわけで、ある意味、うれしい悲鳴だ。
同じ悩みはライバルの韓国も抱えているだろう。ソン・フンミン、ファン・ヒチャン、キム・ミンジェらはいずれも欧州のレベルの高いリーグ、チームにあって欠かせない選手だからね。
いずれにしても、難しい状況の中でアジア杯に参加する選手には頑張ってほしいし、優勝を手土産にして所属クラブに戻ってくれればと思う。
日本が順当に勝ち上がれば、決勝では韓国との対戦になる可能性が高い。お互いベストメンバーでの対戦は久しぶり。CLに負けず劣らずバチバチの戦いになるのは間違いない。そして勝てば日本中が盛り上がる。そんなフィナーレを期待したい。