お正月の日本を驚かせたのが石川県の能登半島地震でした。多くの方が犠牲になり、今のなお避難所で苦しい生活を余儀なくされている方がたくさんいらっしゃいます。心からお悔やみを申し上げるとともに、みなさまが1日も早く普通の生活を取り戻せることを祈っております。

震災やコロナ禍など天災や災禍に見舞われた時、真っ先に自粛をするのが、芸能やエンタメなどに類するものです。社会インフラが不安定な中で、それ以上に優先すべきものがあるのは、当たり前のことかもしれません。

その一方で、被災した方たちが娯楽を望んでいないかといえば、果たしてそうでしょうか。今はまだそんなことまで考えられないとは思いますが、いずれ、笑顔になりたいと思える日がくるのではないかと推察しますし、そうあってほしいと思います。

今回は野球に限ってお話をさせていただきますが、野球が開催されなくても、私たちは生きていけます(選手や関係者のことはいったん横に置かせてください)。

多くの人が被害に苦しんでいる時に、物資の補給やインフラの復旧より優先して開催するものでは決してないでしょう。生命や生活の維持よりも大切なものはありません。

一方で、震災で大きな被害を受けた、阪神淡路大震災の時のオリックス、東日本大震災の時の楽天のように、被災したチームが同じように被災された方々に大きな勇気を与えた例を私たちは知っています。

困難に直面したという意味では、2019年にエンゼルスのタイラー・スカッグス投手が、遠征先のホテルで急死した時のことを思い出します。悲しみにくれるエンゼルスの選手たち。当時在籍していた大谷翔平選手も兄貴分として慕った選手で、亡くなったときはチームだけでなく、球界全体が鎮痛なムードに包まれました。

その後に行なわれた本拠地での追悼試合で、エンゼルスの投手陣は継投ノーヒットノーランを達成します。決して強豪とは言えないエンゼルスの投手陣がそんな偉業を成し遂げたことに、誰もが驚くと同時に、「誰かのために」という思いが力を与えることが本当にあるのだと思ったものです。

寒い日が続きます。昨日より今日が、今日より明日が少しでも安らかでありますように。 寒い日が続きます。昨日より今日が、今日より明日が少しでも安らかでありますように。

繰り返しになりますが、野球がなくても私たちは物理的に生きていけるでしょう。それでも、野球がないと心が豊かにはなりません。

当たり前のように日常にあったけど、失って初めて気がつくことはたくさんあります。そんな時に気づくのは、「スポーツは心の栄養なのだ」ということ。今はまだ被害の大きさに呆然とするばかりでしょうが、被災地のみなさんがそう感じる日が早く来るといいと思います。

スポーツができるというのは復興の象徴でもあります。戦後のプロレスやプロ野球のように、暗い記憶から明るい未来へ向かう大きな力になります。今回の被害に遭われた方の心中を察することしかできませんが、私たちは募金などで応援をしています。

プロ野球には北陸シリーズもありあすから、それが開催されることを今から祈っています。いつか、野球が能登半島を始め、日本中に力を与えてほしいと思います。

1日でも早く、開幕を楽しい気持ちで迎えられるような日が来ますように。日本が被災地に思いを馳せていることを忘れないでほしいと思います。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週金曜日朝更新!