前回に100回を迎えたこの連載。ということで、今回は必然的に101回を迎えます。101という数字は、海外ではある意味があるんです。「わんちゃん」でも「プロポーズ」でもないその大きな意味とは?

その前にあらためて、みなさまこの連載にお付き合いいただき本当にありがとうございます。100回もできたこともすごいことですし、それはスタッフさんや読んでいただいているみなさんのおかげです。

101は、英語で「ワン・オー・ワン」と読むことができます。アメリカでは、授業に例えるならば一回目のレッスン、「初級編」といった意味もあります。つまり「学びたて」ということです。

「新しい未来に踏み出す」といった意味もあり、英語のハウツー本などでは101という数字がよく使われているとか。101という数字がタイトルに入っている本は入門書、ということです。

連載100回目を終え、101回目を迎えるにあたって思ったのは、「まだまだ初心を忘れてはいけない」ということでした。

ふと、この世界に入った当時のことを思い出します。以前もお話ししましたが、もともとこの業界に入ったのは、バスの中でスカウトされたのがきっかけで、私が強く望んだ結果ではありませんでした。

当時は学生でしたが、将来やりたいことなども決まっていませんでした。この仕事をすることになっても、「ここでトップになる」といった強い思いはまったくありませんでしたね。

ただ、野球は昔から好きでしたから、「この世界にいれば、いずれ自分の好きなことが仕事になるかもしれない」という可能性だけは感じていました。いつか、野球の仕事ができたらいい。それが当時のモチベーションでした。

テレビ番組にはいろいろ出させていただき、番組で行ったロケの経験は大きな財産になりました。"プレーヤー"として番組が何を求めているのかを現地で知ることで、どう振る舞ったら番組のためになるかを学ぶことができました。

暖かくなってきましたね。球春の足音が日に日に大きくなってきている気がします! 暖かくなってきましたね。球春の足音が日に日に大きくなってきている気がします!

それまでレポーターという役割が多かった私は、『ワースポ×MLB』(NHK BS)という運命的な番組に出会い、スタジオで番組を回すキャスターという立場になりました。でも、意外と不安は少なかったんです。現場でのロケの経験がたくさんあったからこそ、スタジオに立った時に「キャスターは何を求められているのか」が、直感的にある程度はわかったんだと思います。

『ワースポ×MLB』のキャスターに決まった後、番組がOJT(職場の実務を通して行なう教育訓練)のような目的で、週に一度、私のための出番を作ってくれました。それが、私にとっての101だったのでしょう。

最初の放送は、まさかの100分の生放送! でも、スタッフさんたちや共演者さんのお力添えもあり、それを乗り越えたことは大きな自信になりました。

ちなみに、今でも親交が続いている黒木知宏さん(元ロッテ)とは、同じ時期に番組に出演するようになった、いわば"同期入団"。黒木さんに会うたび、戦友のような親しみを感じるとともに、今でも勇気をもらっています。

プロ野球も、1月下旬に新人合同自主トレがありましたね。現在、第一線で活躍するプロの選手であっても、101があったはずです。お仕事でご一緒している宮本慎也さん(元ヤクルト)にも、もちろん新人の時代がありました。名球会入りを果たし、日本代表の主将も務めた名手でさえ、新人合同自主トレは「とても緊張した」と言います。

宮本さんは、「それは、お客さんに見られる注目度が違うからだろう」と振り返っていました。当時は体も細く、守備ではプロでも生きていけるだろうけど、打撃では厳しいかもしれない。そう冷静に自己分析していたそうです。

この先にプロでの活躍を目指す新人たちは、どんな101を迎えたのでしょうか。102、103と、どんどんステップアップしているのでしょう。

気は早いですが、4月から新しい生活が始まる方も多いと思います。みなさまの101が実り多きものになるよう、心からお祈りして筆を置きたいと思います。今週は、ずいぶん真面目な原稿でしたね。

それではまた来週。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週金曜日朝更新!