戦闘機F-35は1機当たり7790万ドル(約112億円) 戦闘機F-35は1機当たり7790万ドル(約112億円)
2023年末、日本だけでなく世界を騒がせた大谷翔平の10年総額7億ドル(約1000億円)。すごくデカい数字であることはわかるけど、個人が持つ金額としていまいちピンとこない......。元陸上自衛隊幹部の照井資規氏、国際政治学者の前嶋和弘氏に軍事、アメリカ政治の面で比較してもらった。

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まずは、軍事から照井氏はこう語る。

■高額な管理費を入れて考えてもF-35戦闘機5機は買える!

ステルス統合打撃戦闘機F-35 LightningⅡ(第5世代)は1機当たり7790万ドル(約112億円)。1000億円あれば9機は買えそうですが、自動車に車検などの費用がかかるように、戦闘機を飛ばすには機体の本体価格に加えて運用コストがかかります。

F-35は超音速で飛び続けられますが、機体表面が高温になるため機体が伸び縮みし、表面の電波吸収塗料が剥がれ落ち、ステルス性能が低下します。着陸後は塗装を剥がして塗り直しになるなど、維持費が高額で1機当たり年間6億4000万円くらいかかるため、10年間乗り続けようとすれば、1機当たり176億円となり、燃料代なども含めればF-35は5機が妥当でしょう。

第4.5世代戦闘機Gripen(グリペン) Type Eも価格はF-35とほぼ同じですが、機体が小さく運用コストが安いので8機くらいは買えそう。

形も大きさも似ていて安価だといわれていた、韓国型超音速戦闘機KF-21は実際には1機当たり約97億6000万円なので買えて10機。最新型の戦闘機にあまり差はないので、10年乗り続けるとして5~9機というところでしょうか。

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ブータンより低予算の国はジブチ、サモア、ドミニカなど ブータンより低予算の国はジブチ、サモア、ドミニカなど
続いて、アメリカ政治の専門家である前嶋氏は以下のように話す。

■バイデン政権の目玉政策、次世代エネルギー開発を進めるエネルギー高等研究計画局の予算

世界で見ますと、南アジアに位置するブータン王国の2020年の収入が約7億1000万ドルで、支出が7億7700万ドル。ちなみにブータンは229の国と地域の中で181番目。大谷が10年で稼ぐのは、国家予算と同規模の額です。

アメリカ政治で見ますと、今、バイデン政権が力を入れている脱炭素政策の目玉で、次世代エネルギー開発を進める「エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)」の2023年度の予算要求額が7億ドルです。しかも、最終的には議会に減額されて4億7000万ドルになり、大谷に負け越しました。

アメリカはどんどんインフレがひどくなっているので、今の金額のまま10年後にもらうとなると、貨幣価値が低くなってしまいます。特に、バイデン政権は富裕層が支払う税金を上げる動きを強めていて、大損する可能性もある。

それを回避するために、わざと赤字の法人をつくって税金を払わないという手を取るスポーツ選手や著名人もいます。それこそ、トランプは「税金を払うやつは頭が悪い」と言っています。大谷が節税対策するのかにも注目かも。

●照井資規(Motoki TERUI) 

1995年に陸上自衛隊に入隊し、各種兵器・戦闘の研究機関「富士学校」と、災害・軍事医療と衛生の研究機関「衛生学校」の研究員を務める。2015年に最終階級2等陸尉で退官

●前嶋和弘(Kazuhiro MAESHIMA) 

上智大学総合グローバル学部総合グローバル学科教授(学部長)。アメリカ学会会長。専門は現代米政治・外交。著書に『キャンセルカルチャー:アメリカ、貶めあう社会』など