補強はしたけど十分ではない。神戸の連覇は決して簡単じゃない。Jリーグの優勝争いは今季も混戦になりそうだ。
開幕節の前週に行われた富士フイルム・スーパー杯で、昨季のJリーグ王者神戸が天皇杯王者の川崎に0-1で敗れた。
締切の都合で開幕節の試合は見られていないんだけど、今季の神戸には期待よりも不安のほうが少し大きい。
昨季の神戸は独走優勝ではなく、ケガ人が相次ぐなど苦しい時期もあった。そして今季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)もあり過密日程となることから、各ポジションに堅実な補強をした。そこは評価できる。
ただ、スーパー杯では攻撃面の課題、"大迫頼み"が露呈した。昨季の優勝の原動力は、得点王&MVPに輝いた大迫と、それを支えた武藤の元日本代表FWコンビ。絶妙な距離感、関係性でお互いへのアシストも多かった。
その一角の武藤が欠場したスーパー杯では、前線で大迫が孤立した。ボールは収まるものの、サポートが少なく、いい攻撃の形を作れない。前線の両サイドには売り出し中の佐々木と外国人のジェアン・パトリッキが起用されたけど、あまり機能していなかった。
武藤が戻れば改善するとは思う。ただ、彼らふたりにかかる負担は大きく、長いシーズンをフル稼働させるのは難しい。その意味で、今からでもFWの補強が必要だと思う。余っている外国人枠を有効活用したいところだ。
一方の川崎は、4日前のACLとのターンオーバーで大黒柱の家長らが欠場したものの、良いスタートを切った。
とはいえ、昨季から大幅にメンバーの入れ替わった今季のチームは未知数。まだベストメンバーもわからない。また、スーパー杯の3日後にはACLでも敗退した。
左サイドのマルシーニョは切れのある動きを見せていたし、家長同様にスーパー杯に出場しなかった新外国人FWエリソンも面白い存在。彼はブラジルでは目立った実績がないけど、左利きで、体格が良いのにスピードがあって戦車みたい。かつてJリーグでプレーしたフッキを思い出させるね。家長も加えたその3人がどういう攻撃を見せるか。嚙み合えば爆発するかもしれないという期待感はある。
ただ、そうなったとしても、いきなり黄金時代復活というのは難しい。優勝した当時(2017年、18年、20年、21年)の川崎は本当にタレントぞろいだった。当時と今の選手の顔ぶれを比べれば、鬼木監督に同じ質のサッカーを求めるのは酷。ファンも長い目で見たほうがいい。
さて、今年は年明けのアジア杯で日本代表がつまずいたので、Jリーグが明るい話題を提供しないとね。
特に4月には厳しい戦いが予想されるパリ五輪最終予選がある。昨季は大迫がJリーグを引っ張ってくれたけど、今季は五輪世代の若手に暴れてほしい。
個人的に期待しているのは、FW細谷(柏)とMF松木(FC東京)かな。このコラムでは何度も言っているように、細谷には点取り屋としての期待が大きい。ただ、アジア杯では出場機会も少なく、ほとんど何もできなかった。その悔しさを晴らしてほしい。
また、この世代の顔になっている松木も、FC東京では外国人選手に遠慮しているように見える。チームがうまくいっていないというハンデがあるにしても、これまでのプレーは物足りない。
左右両足が使えて、ボール際に強くて、リーダーシップもある。本来なら細谷同様にもうA代表に選ばれていてほしい選手。今季はピッチ上でもっともっと自分を出してほしいね。