お股ニキおまたにき
野球評論家、ピッチングデザイナー。さまざまなデータ分析と膨大な量の試合を見る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してSNSで活動。その理論を取り入れる選手が急増し、オンラインサロンに40人以上のプロ選手が加入。プロ、アマ問わず、千賀滉大、藤浪晋太郎(共にメッツ)に次いでMLBや甲子園を目指す投手の個人指導を行なう。
公式X【@omatacom】
2月にもかかわらず夏日が続いた、南国・沖縄。セ・リーグの覇権を争う"東西の名門球団"の春季キャンプを現地視察した週プレ本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏が投打の仕上がり具合、復活を期すエースの状態、注目を集める若き新戦力などを詳報する。【"セ・リーグ優勝候補"阪神・巨人沖縄キャンプリポート②】
阿部慎之助新監督の下、沖縄セルラースタジアム那覇(那覇市営奥武山[おうのやま]野球場)で第2次キャンプを張った巨人。今季は"打倒阪神"を掲げ、心機一転、新体制でのスタートとなるが、2年連続でBクラスに沈んだ昨季は、とにかくリリーフ陣が弱点だった。
先発陣はエースに成長した戸郷翔征(しょうせい)、後半戦で活躍した赤星優志、シーズン通して実力を発揮した山﨑(やまさき)伊織、終盤に状態を上げた菅野智之、外国人のフォスター・グリフィンやヨアンデル・メンデスら人材は豊富だったが、リリーフ陣を整備できず、勝てる試合を落とし、接戦で勝ち切れなかった。
セ・リーグを連覇した2020年頃にはリリーフ陣は整備されていたが、無計画な運用で不必要な登板を重ね、中川皓太や畠世周(せいしゅう)らが故障。また、サイドハンドに偏重した編成も課題となっていた。
力のある中継ぎが少ないため、そもそも1イニングを持たせることができず、良い投手から先に投入せざるをえなくなり、リリーフ陣がさらに疲弊する......という悪循環を昨季も断ち切れなかった。
その課題を克服すべく、このオフの積極補強でリリーフの頭数をそろえた。トレードで泉圭輔と高橋礼(共にソフトバンク)、近藤大亮(たいすけ/オリックス)を獲得。さらに阪神を退団したカイル・ケラーと契約し、同じく阪神から現役ドラフトで馬場皐輔を補強した。
今回、キャンプでブルペンを見学して、先発もリリーフも陣容が整ってきていることを実感できた。赤星は滑らかなフォームで投げており、まるで"阪神の投手"のよう。中川も力のある球で復活を期待させた。泉も本来の力を発揮できれば十分やれるはず。高橋も高めに伸びるようなストレートを投げていた。
外国人もグリフィンだけでなく、メンデスもかなり良い。アルベルト・バルドナードも体がキレてきたら面白い。ケラーも力強く、カーブだけでなく、スプリットもしっかり投げていた。
もともと巨人は狭い東京ドームが本拠地ながら、高い投手力を誇ってきたチームだが、今季は"投手王国再建"の一年になるかもしれない。多くの投手は、球速が出て、高めへ強い球が行くフォームになっており、大勢が1年目のときのようにしっかりしてくれれば、おそらく昨季のようなことにはならないだろう。
若手投手陣で特に目を引いたのが、ルーキーの又木鉄平と、育成の京本眞だった。
又木は力感のないフォームから力のある球筋で、今永昇太(カブス)やチェン・ウェイン(元中日ほか)のようなイメージ。昨季の阪神・桐敷のように投げられたら面白い。
京本も球に力があった。フォークとスプリットを投げ分けることができ、球種も豊富。リリーフ時代の千賀滉大(メッツ)のような投球を目標としていけば、1軍で活躍できる可能性が高いだろう。
昨季、育成から支配下登録された松井颯(はやて)も、高めのストレートなど球自体は相当力があった。ほかにも、2年目の田中千晴や船迫大雅(ふなばさま・ひろまさ)への期待も大きい。特に田中は三振が奪える投手で、今季さらに力がついてきたので楽しみだ。
一方、ドラフト1位の西舘勇陽(ゆうひ)だが、大学時代の絶好調のときのようなボールはまだ投げられていなかった。徐々に調子を上げていき、夏頃にデビューできればよさそうだ。
巨人は野手も充実している。昨季、12球団最多本塁打の重量打線は今季も健在だ。
主軸の岡本和真、大城卓三は順調に見えたし、サードに専念する坂本勇人も昨季好調だったスイングを継続。一発が出る打ち方なので、今季は30発以上、自己最多40本の更新も期待したい。
昨季1軍に定着した秋広優人はバッティングフォームに試行錯誤している段階で、まだ少し時間がかかりそうだ。ポテンシャルは素晴らしいだけに、経験を積んで野球自体ももう少し勉強してほしい。
そして、昨季、巨人に新風を吹き込んだ門脇誠。ショートの世代交代を実現し、走塁が課題のチームに好影響を与えた。昨季後半から打撃も鋭くなり、今季は打率3割、本塁打10本ほど狙えそうだ。キャンプの時点では、守備は昨季ほどキレてはいなかったが、徐々に上げていくだろう。
また、中田翔や中島宏之などのベテラン野手を放出するなど、新陳代謝が促進したのも今季の巨人野手陣の特徴だ。新加入となった選手たちはいずれも動きが良い。
ルーキーの泉口友汰はかつての田中俊太(元巨人ほか)のようなイメージでベンチ入りできそうだし、佐々木俊輔は少し肩が入りすぎではあるが、バットのヘッドを走らせて振り抜けていたので、ミートできれば飛ぶだろう。
新外国人のルーグネッド・オドーアもスイングは鋭かった。インコース攻めに対応できれば、外野とセカンドを適度に守っていけるだろう。
ここ数年苦しんでいた松原聖弥も、阿部監督の指導で本来の打撃を取り戻しつつあるように感じた。巨人が誇る重量打線に、彼らのような小技やスピードが加わると、野手のバランスも良くなり、阪神に対抗していけそうだ。
今回、私が沖縄に来た最大の目的は、大ファンでもある菅野との対談だ。昨季の課題や手応え、現在の取り組み、奥深い投球術、制球力の秘訣などを語ってくれた。(編集部注:対談は後日、『週刊プレイボーイ』に掲載予定)
菅野は昨季後半からフォームを修正し、球速もアップ。さらに、高めに浮き上がるような軌道にもなった。代名詞のスライダーをはじめ、変化球のキレを取り戻せば、2桁勝利も、菅野自身が目標に掲げる15勝も可能だろう。
もともと持っているものが違うし、頭の良さやクレバーさは群を抜いている。30代前半でいったん落ちたものの、30代後半に第2次全盛期を迎えたサイ・ヤング賞投手、ジャスティン・バーランダー(アストロズ)のように復活してほしい。生まれ変わった"ニュー菅野"を見るのが今から待ちきれない。
野球評論家、ピッチングデザイナー。さまざまなデータ分析と膨大な量の試合を見る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してSNSで活動。その理論を取り入れる選手が急増し、オンラインサロンに40人以上のプロ選手が加入。プロ、アマ問わず、千賀滉大、藤浪晋太郎(共にメッツ)に次いでMLBや甲子園を目指す投手の個人指導を行なう。
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