オールドファンにはたまらなかっただろう。興行としては成功だ。
Jリーグ開幕節に東京Vと横浜FMが国立競技場で対戦した。そう、1993年5月に行なわれたJリーグの開幕戦と同じカードだ。
あれから31年が経ち、お互いにチーム名も変わり(当時はV川崎と横浜M)、東京Vは長らくJ1の舞台から遠ざかっていた。J1復帰は実に16年ぶり。それを記念してJリーグがこの舞台を用意したわけだ。
本来なら東京VにはJリーグ30周年の昨年にJ1 にいてほしかった。また、今年やるなら開幕節ではなく5月でもよかった。この試合に限らず、開幕節は昨季のリーグ戦上位のチームにホームでやらせてあげるべきだと思うからだ。
ただ、今回はお客さんもたくさん入ったし(約5万3000人)、話題性もあった。その意味では例外的にアリかな。
また、あれだけ盛り上がれば、選手も張り切るし、いいプレーを見せるもの。実際、試合は白熱した好ゲームになった。キャスティングを比べれば、どう考えても横浜FMが有利。それでも若手の多い東京Vは皆よく走って、いいプレーを見せていた。先制点のFKも素晴らしかった。
最終的に横浜FMが意地を見せて逆転勝ちしたけど、見応えがあった。翌日、思わず東京Vの城福監督に「惜しかったね」と電話してしまったよ。
振り返れば、両チームによる31年前の開幕戦は、僕にとって今でも一番印象に残っているJリーグの試合だ。あれを超える興奮はない。
当時はまだマスメディアの仕事をしていなかったので、友人に頼んでチケットを手に入れてバックスタンドで観戦。キックオフの時間よりだいぶ前に最寄り駅に着くと、チケットを求めるダフ屋がたくさんいて、すでにチアホーンの音も聞こえてきて、自然と早歩きになった。
国立競技場に着いてからも驚きの連続。スタンドはレプリカのユニフォームを着たお客さんで満員。大きな旗を振って、応援歌を歌い、「ここは日本か⁉」と思ったほど。試合前の演出も迫力があって、「プロになるとこんなにも変わるのか」と実感した。
試合内容もよかった。何しろ両チームには当時の日本代表の主力がズラリとそろっていたからね。それでいてチームカラーは対照的で、もともとプロ同然だったV川崎はプレーも選手の見た目も派手。一方の横浜Mはまだまだサラリーマンっぽい雰囲気の選手が多かった。そんな両チームが当時最高の試合を見せてくれた。
V川崎のマイヤーの先制点は今でも語り草。誇張なしで日本国民に大きなインパクトを与えたと思う。
ちなみにV川崎の選手は一時期、芸能人のように夜の街に繰り出していて、フロントから「練習に遅刻する選手が多くて困っている」と相談を受けたこともあった。練習時間を午後ではなく朝に変えれば遅い時間まで遊べなくなるとアドバイスをしたっけね。
話がそれたけど、今回の盛り上がりを見て、あらためて両チームは日本サッカーにおけるブランドだと感じた。予算的に苦しい東京Vが昔のようなチームを作るのは大変だと思うけど、なんとか来季以降もJ1に定着して、毎年当たり前にこの対戦を見せてくれることを期待したい。
来年は前座でOBチームを対戦させても面白そう。そうそうたるメンバーがそろうと思うよ。