みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。
突然ですが、人はみな誰かの子供。幼い子供にとって親は尊敬すべき存在ですが、歳を重ねるごとにその思いは薄れてしまうこともあるかもしれません。ただ、もし自分の親が世間的に「偉大だ」と思われている人だったら、その子供はどう思うのでしょう。ということで今回は、「2世」についてお話しさせてください。
昨年の夏の甲子園で優勝した慶応高校で大きな注目を浴びたのが、清原勝児選手。言わずと知れた大打者・清原和博さんの二男です。代打として3試合に出場しましたが、打席に立つ姿を、球場にいた父・和博さんが優しい目で見守っていたのが印象的でした。
偉大な親とその息子。プロ野球の世界に限らず、2世は注目を浴びる宿命にあります。
DeNAのドラフト1位ルーキー・度会隆輝選手のお父さんは、ヤクルトで活躍した名選手の度会博文さん。隆輝選手が学生だった頃から、ファンは「ヤクルトに来てくれないかなぁ」と心の中で思っていたものです。
つい最近は、"ハマの番長"三浦大輔監督の長男・澪央斗(れおと)さんが、大学卒業とともに野球をやめて一般企業に就職する、というニュースを目にしました。高校時代は控え投手でしたが、「番長の息子」というだけでマスコミの注目を集めることも多く、「自分を記事にするくらいなら、ほかの選手を取り上げてくれ」と思っていたそうです。
幼い頃は尊敬する存在だったとしても、自分も野球を続けていくとなれば「高い壁」となります。それを乗り越えなくてはいけないプレッシャーが、2世にはつきものなんですね。
その昔、母親に言われたことを思い出します。
「人に教えるというのは、とても難しい」
音楽関係の仕事をしている母が子供相手にレッスンをしていると、自分が当たり前だと思っていたことができない子供もいるのだとか。もちろん、母親にない才能を持っている子供もたくさんいるわけで、「自分の当たり前は当たり前じゃないんだ、ということを子供に教えてもらった」と常々言っていました。
当然ですが、親と子供は違う人間です。才能も人それぞれ。その点、偉大な選手ほど、自分の子供に対していい意味で「過度な期待をしない」ような気がするんです。
もちろん「プロ野球選手になってほしい」「名選手になってほしい」と思っている方もいるかもしれませんが、「ずっと野球を好きでいてほしい」くらいの方もいるはず。実際、落合博満さんの長男・福嗣さんや、桑田真澄さんの二男・Mattさんなど、自分の道を突き進む方も多いです。
MLBでは「Jr.」と名のつく選手の中に、2世の選手が多くいます。アメリカはもっとフランクで、「誰かの息子だから」という見方はそこまで強くないように感じます(私がその選手たちのお父さんの現役時代を知らないことが多いからかもしれません)。
2世であるということは、誇るべきこと。でも、当の本人は苦しむこともある。そのプレッシャーを乗り越えただけで素晴らしいと思いますし、野球を続けているのを見ると、私はとても嬉しい気持ちになるのです。
人と比べられるのは、とても残酷なことです。私も仕事を始めてから、幾度となく比較されてきました。あの人のほうがうまい、頭がいい、知識がある......。でも、「比べられるたびにヘコんでいても仕方ないな」と思ったんです。誰かと比べることができない自分自身のアイデンティティを確立する。それでしか乗り越えられないのだと。
"二刀流"で結果を残し、「ベーブ・ルース2世」と言われた大谷翔平選手は、本家を追い越す勢いの活躍を見せています。もはや「大谷1世」ですよね。ということで私も、「山本萩子1世」として、もっと頑張らねばと思うのでした。それでは、また来週。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン