練習試合を含む対外試合で15試合連続安打(3月19日現在)を記録するなど、開幕前から本領を発揮しているDeNAのドラ1ルーキーを直撃取材。初めての沖縄キャンプの手応え、プロ野球選手としての一番の売り、理想のバッター像、カラオケの十八番など、キラリと輝く"ハマの一番星"を大解剖!
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■疲れた状態でいかに精度を高められるか
――初めての沖縄キャンプはいかがでしたか?
度会 自分としてはもっとやれると思いましたし、物足りないところもたくさんありました。オープン戦はまだ続きますし、開幕までにしっかりアピールしていきたいです。
キャンプで特に意識していたのは、体が疲れてきてからどれだけ頑張れるか、疲れた状態でどれだけ試合をこなせるか、ということ。1年間フルに戦うためには絶対に必要なことなので、意識して取り組んできました。
――具体的には、どのような取り組みをしてきましたか?
度会 キャンプでは日を追うごとに練習の負荷も上がり、強度も高くなっていったので、体にはどんどん疲れがたまっていきました。ただ、その状態でも、打撃なら1打席、守備や走塁ならワンプレーにどれだけ集中できるか、どれだけ結果を残せるか、ということを意識しましたね。
キャンプではバットをかなり振り込みましたけど、意識していたのは、疲れている状態でいかにミスショットを減らせるかということ。守備では確実性を高めて送球することを意識しました。何事も疲れた状態でいかに精度を高められるか、ということを心がけてやっています。
――その意識は社会人時代からあったんですか?
度会 社会人時代も意識していましたけど、プロになって初めてのキャンプでは特に意識的にやりました。プロは社会人野球とは試合の数も形も違いますから。
――キャンプに入る前はどんな心境でしたか? ワクワクした気持ちが強かったのか、ドキドキもしていたのか。
度会 やはり、周りの方から期待してもらっている分、「頑張らないとダメだな」という気持ちもすごくありましたし、「やっとプロ野球ライフが始まる!」というワクワクした気持ちも強かったです。もちろん、ドキドキもしていたと思いますけど、楽しみな気持ちが一番でしたね。
――ちなみに、沖縄にはどんな印象がありましたか? お父さん(元ヤクルト・度会博文さん)の現役時代にキャンプを見た思い出があったり?
度会 父親のキャンプはさすがに幼すぎて覚えていないですね。普通に観光旅行で来たときの印象が強いです。それこそ、昨年来ましたよ。
――え、ドラフト後ですか?
度会 そうです、そうです。社会人野球を引退して少ししてから、4泊5日くらいで。パラセーリングしたり、シュノーケリングしたり、シーサーを作ったり、美ら海水族館に行ったり。国際通りに行って肉ずしを食べたんですけど、めちゃくちゃおいしくて。そこから今まで以上に肉ずしが大好きになりました!
あと、なぜか急にもつ鍋が食べたくなっちゃって(笑)。探して見つけたお店がめちゃくちゃおいしかったです!
――キャンプの前にプライベートで来ていたんですね。
度会 また数ヵ月後に仕事で来ましたけどね(笑)。昨年の旅行がすごく楽しかったので、とにかくいいイメージのまま沖縄入りできました。
■千葉県出身の系譜? 究極の巧打者へ!
――度会選手にとって理想の打撃とは? 参考にしているバッターはいますか?
度会 理想はやはり、打率も残せて長打力もあるバッターですね。柳田悠岐選手(ソフトバンク)や山田哲人選手(ヤクルト)、吉田正尚選手(レッドソックス)のような、打率も残せてホームランも打てる、なおかつチャンスにも強い完璧なバッターを目指しています。いずれはそういう選手になれるように頑張りたいです。
――高橋由伸さん(元巨人)にバッティングフォームや間の取り方が似ているともよくいわれていますが、意識はしていますか?
度会 由伸さんには、社会人時代に打撃を教えてもらったこともありますし、父親と同世代の素晴らしいバッターなので、現役時代はそのプレーをたくさん見ていました。子供のときには、3つ上の兄とバッティングフォームをものまねして、それを父親に見てもらっていましたよ。
――お父さんは目が肥えているから、採点も厳しいんじゃないですか?
度会 そうですね(笑)。チームは違いますけど、対戦相手として戦っていましたから。そういう素晴らしいバッターの先輩に似ていると言ってもらえて、うれしいです。
――昨年の入団会見では、「目標は高く、史上初の打率4割を打てる打者になりたい」と語っていました。度会選手らしいポジティブな発言で強く印象に残っていますが、やはりホームランや打点よりも打率や安打数が最優先ですか?
度会 もちろん、「目標は高く」という意味で「4割」と言ったんですけど、打率も残した上で、"ヒットの延長がホームランになるようなバッター"が理想ですね。
――練習試合やオープン戦では、ストライクゾーンのボールを積極的に振って長打を狙いつつ、追い込まれてからはしっかりと軽打を狙うなど、状況に応じたバッティングで結果を残しています。このような打撃スタイルは開幕後も継続していくのでしょうか?
度会 もちろん、追い込まれてからのイメージは変わらないです。開幕後も、ツーストライクからのアプローチにはこだわっていきたいです。
――ちなみに、度会選手と同じ千葉県出身のプロ野球選手は、掛布雅之さん(元阪神)、高橋由伸さん、福浦和也さん(元ロッテ)、阿部慎之助さん(元巨人)、丸佳浩選手(巨人)、近藤健介選手(ソフトバンク)など、バットコントロールが巧みな左バッターが多いんですよね。
度会 本当ですね! 小笠原道大さん(元日本ハムほか)もそうですよね。
――まさに度会選手が語っていた"ヒットの延長がホームランになるようなバッター"ばかり。度会選手もこの系譜に名を連ねると思いますが、いかがでしょうか?
度会 そうそうたる顔ぶれですが、僕もそうなれるように頑張ります!
――ちなみに、千葉県出身の選手にアベレージヒッターが多いのはなぜだと思います?
度会 そうですね......。千葉は自然が豊かですけど、都会的なところもありますよね。そうやってアベレージ(平均)を保っているので、野球でもアベレージ(打率)を保てるんじゃないですかね(笑)。
■プロ野球選手として一番の売りは"元気"
――守備については「伸びしろだらけ」という自己評価で、キャンプで精力的に取り組む姿が印象的でした。中継プレー(外野から内野への送球)に関して、球団OBでもある谷繁元信さんから指摘を受けていましたよね。
度会 はい、拝見しました。貴重なご意見をいただけて光栄です。あのときはボールが雨に濡れていて手が滑ってしまい、ボールが浮いてしまったんですが、そういう状況でも落ち着いて送球することが大事だなと改めて実感しました。送球が高く浮いてしまうとランナーも進塁しやすくなりますし、打者走者も走りやすくなってしまうので、そういうところはかなり意識しながらプレーしています。
――度会選手自身が思う"プロ野球選手としての一番の売り"はなんですか?
度会 僕は"元気"だと思っています。自分が打って活躍できたらそれが一番ですけど、"声"でチームに貢献することもできると思うんですよね。
社会人時代に強く実感したんですけど、ベンチにいるチームメイトが打席に立つ自分を鼓舞してくれると、ものすごく力になるんですよ。
自分がいいプレーをしたときに仲間がホメてくれたり、たたえてくれたりすると力が湧いてくるし、パワーをより発揮できる。「ただの声だろ」と思われちゃうかもしれないけど、プレーしている本人から言わせてもらうと、本当に力をもらえるんですよ。
――なるほど、強烈な実体験があったんですね。
度会 自分がそう感じるからこそ、チームメイトにも積極的に声がけをしたいし、ポジティブな雰囲気をつくれたらうれしいですね。ベイスターズファンの声援も大好きですし、ハマスタの雰囲気も大好きなので、感謝を胸に全力でプレーしていきたいです!
――昨年11月の「横浜DeNAベイスターズ ファンフェスティバル2023」で歌って球場を盛り上げるなど、ファンをとりこにするエンターテイナーぶりが話題です。そのような行動の根底には、「プロ野球は見ている人を幸せにできるスポーツ」という考え方があるんですよね。
度会 そうですね。打つことはもちろん、守備、走塁、声出し、すべてで見ている人たちを幸せにしたいです。プロ野球選手になってまだ間もないですが、これだけ多くのファンの方々に応援していただけて、とってもうれしいです。
プロ野球はファンの方々ありきのスポーツだからこそ、皆さんをものすごく大事にしたいですし、僕自身がパワーをたくさんもらっているので、少しでも楽しませたり、勇気や笑顔を与えたりできるような選手になりたいです!
■カラオケで歌う"度会メドレー"
――最後に、歌について。度会選手はカラオケが好きで、清水翔太 feat.仲宗根泉(HY)の『366日』、坂本九さんの『見上げてごらん夜の星を』で100点を取ったこともあるとか。もしも度会選手とカラオケに行くとしたら、"度会メドレー"はどんな曲になりますか?
度会 いいですね~! 僕、たぶん、プロ野球界で五本の指に入るくらいカラオケが大好きなんで。うまいわけじゃないですよ、好きなだけですからね(笑)。
カラオケで歌う曲はスマホに全部メモしているんですけど......まずはやっぱり『366日』ですかね。機種によっては高得点が出ますから。
――度会選手の十八番ですね。聴いてみたいです!
度会 続いて、斉藤和義さんの『歌うたいのバラッド』も高得点を狙えます。桑田佳祐さんの『明日晴れるかな』も点が高く出ますね。あと、GReeeeNの『キセキ』。ドラマ『ROOKIES』(TBS)でも使われていましたし、歌詞もいいんですよ~。
――ちなみに、往年のプロ野球選手で歌手デビューしている方も多いですが、度会選手もゆくゆくは歌手デビューしてみたいと思いますか?
度会 もう、めちゃくちゃ夢です! もちろん、野球で活躍してからの話ですけど......。歌手デビューしている先輩たちは超一流のプロ野球選手ですし、順番が逆にならないように、僕もしっかり活躍した後に、歌に挑戦してみたいですね。ゆくゆくは『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出るのが夢です!
――『Mステ』ですか!? めちゃくちゃ見たいです!
度会 『Mステ』ってすごくカッコいいじゃないですか? さすがに歌手として出演したプロ野球選手はいないと思うので、ぜひ出てみたいんですよ。いずれは歌も自分で作りたくて、実は暇なときに作詞もしているんです(笑)。
――もしかして、もうタイトルも決まっているとか?
度会 いや、そこまではまだ(笑)。「日常の出来事を歌詞にしたら、どうなるんだろう?」と思ってメモしています。いつかミュージシャンの方に演奏してもらって、自分で書いた歌詞の曲を歌えたら最高です!
――ハマスタでライブしている姿が目に浮かびます!
度会 めっちゃ歌いたくなってきました(笑)。夢を実現するためにも、今シーズンしっかり活躍します!
●度会隆輝(Ryuki WATARAI)
2002年生まれ、千葉県出身。183㎝、83㎏。横浜高校入学直後からベンチ入りすると、1年夏の神奈川県大会では代打としての5打数5安打を含む9打数7安打と活躍し、甲子園でも初打席初安打を記録。高校通算24本塁打、公式戦通算打率.419。社会人野球の名門、ENEOS入社後、1年目からレギュラーとして活躍。2年目の都市対抗では、4本塁打・打率.429を記録し、橋戸賞・若獅子賞・打撃賞の三冠を達成。昨年のドラフトで1位指名を受け、横浜DeNAベイスターズに入団。父は元東京ヤクルトスワローズの内野手・度会博文さん