福西崇史ふくにし・たかし
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm。1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第91回のテーマは、プレミアリーグの優勝争いについて。勝ち点1差の間にアーセナル、リバプール、マンチェスター・シティが並び、近年稀に見る大接戦となっているプレミアリーグ。3クラブの現状と、優勝争いの行方について福西崇史が解説する。
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プレミアリーグも残り10節を切り、いよいよシーズンも佳境を迎えます。そのなかで優勝争いは現在首位のアーセナル(勝ち点64)、2位のリバプール(勝ち点64)、3位のマンチェスター・シティ(勝ち点63)の3クラブに絞られたと思います。
勝ち点1差のなかに3クラブがいるという近年稀に見る接戦となり、どこが優勝するかは現時点ではまったく予想がつかないという非常に面白いシーズンとなっています。
得失点差で首位に立つアーセナルは、リーグで現在8連勝と絶好調。8試合で33得点と圧倒的な攻撃力を発揮しています。昨季も優勝争いに絡んだアーセナルですが、今季のチームはより戦い方の幅が広がり、対応力が上がったと思います。
そのチームの進化に大きく影響しているのが、今季加入したデクラン・ライスとカイ・ハヴァーツの存在でしょう。
まず守備範囲が広く、ボール奪取能力の高いライスが入ったことによって守備が非常に安定しました。それをベースにジョルジーニョやマルティン・ウーデゴールの守備の負担を減らし、より攻撃面で良さを引き出すことができています。
ハヴァーツはシーズンの序盤こそフィットに時間がかかりましたが、点を取り出してから自信も取り戻して欠かせない存在になっていきました。インサイドハーフやトップに入って、昨季のアーセナルにはなかった前線の高さをもたらして、ターゲットができたことで攻撃の選択肢を広げていると思います。
チームはほとんど20代前半から中盤の選手で構成され、非常に若さという勢いがあり、それに加えて経験も備えてきました。その若さと経験の融合のバランスが一番良いのがアーセナルだと思います。
勝ち点で並ぶ2位のリバプールは怪我人の多さに苦しみながらも選手層の厚さで乗り切っています。アカデミーから10代の若い選手も積極的に起用しながらチームとしての戦い方が崩れることがなく、あのサッカースタイルの深い浸透度を感じました。
そのなかでもチームの背骨として支えているのが、フィルジル・ファン・ダイクとイブラヒマ・コナテというリーグ屈指のセンターバックコンビです。危ない場面でも2人がいることでギリギリ凌げている部分もあると思います。
その2人の前で遠藤航がフィルター役となって助け、今では欠かせない戦力になっていることは日本人として誇らしく、嬉しいことです。守備だけでなく、斜めの鋭いパスやワンタッチパスの判断が上がって、最初は苦戦していた攻撃面でも貢献できるようになり、プレーに余裕が出てきたと思います。
守備においてもリバプールのやり方に慣れてきたことで、周りの状況に応じて奪いにいくタイミングが掴めてきました。それによって、思い切って寄せて奪うという遠藤の良さをより発揮できるようになり、先日のマンチェスター・シティ戦でもケビン・デ・ブライネを見事に封じました。
ユルゲン・クロップ監督が今季限りで退任することを発表して、チームは非常にモチベーションが高い状態だと思います。そのモチベーションの高さによってリバプールが抜きん出る可能性も十分にあると思います。
3連覇中のマンチェスター・シティは、今季も相変わらず強い。すべてにおいてレベルが高く、穴を見つけるのが難しいほどです。毎年、選手を適度に入れ替えながらさまざまなタイプの選手を揃えて、チームとしての安定感は群を抜いています。
そのなかでも今季とくに印象的なのはフィル・フォーデンです。ウイングの位置ではドリブルでの打開は止められないし、公式戦で17点とストライカー並みに得点も重ね、アシストも10を記録しています。ベルナルド・シウバがまるで脇役のようになっています。
今季加入のドクもすぐに主力となりましたが、加入直後はコンビネーションにやや若さを感じました。ただ、それもしばらくするとチームのなかでいい使われ方をするようになって、持ち前のキレキレなドリブルがより脅威になっています。
デ・ブライネが長期離脱でいなかったことは、本来であれば非常に厳しいことですが、シティはそれでもなお優勝争いに居続けられるほど、チームのベースが非常に強いことを見せつけてきました。
そして復帰してすぐに王様のような活躍はさすがとしか言いようがありません。ほかの怪我人も戻ってきて、層の厚さ、武器の多さはアーセナルやリバプールと比べてもシティが随一だと思います。
この3クラブはどこが優勝しても納得の強さがあると思いますが、強いて優位だなと思うクラブを挙げるとすればシティだと思います。リーグ終盤においての経験値、選手層はもちろんですが、やはりアーリング・ハーランドの存在は大きいと思います。
リバプールにはモハメド・サラーやダルウィン・ヌニェスがいて、アーセナルにはブカヨ・サカやガブリエウ・ジェズスがいますが、ストライカーとしてはハーランドが別格だと思います。苦しいところでも点を取ってくれる存在がいることは、このタイトルレースにおいて大きなアドバンテージになると思います。
それでもどこが優勝するかは正直わかりません。3月31日に行われる第30節のシティ対アーセナルは、優勝を占う上で重要な一戦です。若くて野心があり、20年ぶりの優勝を狙うアーセナルか、クロップ最後でモチベーションの高いリバプールか、シティが4連覇という偉業達成か。どんな結末を迎えるのか、最後まで楽しみです。
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm。1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している