「注目度アップを狙って、次の会見では2002年日韓W杯時と同じマスクをつけて登壇してもいいんじゃない?(笑)」 「注目度アップを狙って、次の会見では2002年日韓W杯時と同じマスクをつけて登壇してもいいんじゃない?(笑)」

日本サッカー協会のトップが8年ぶりに交代。田嶋幸三会長(66歳)が退き、新会長には元日本代表の宮本恒靖専務理事(47歳)が就任した。

退任する田嶋さんとは古い付き合いで、1990年代に僕が協会の強化委員をやっていた時には一緒に働いた仲。会長就任以降も、僕が彼や協会に対してフランクな物言いをしても、ちゃんと受け止めてくれた人だ。先日電話で話をした際には、「しばらくゆっくりしたい」と言っていた。まずは長い間お疲れさまと言いたい。

とはいえ、この8年間の評価となると難しい。まず、前提として田嶋さんにとっては時代的にアンラッキー。歴代の会長よりも難しい状況だったと思う。不景気に加えて、何よりコロナの影響が大きかったからね。

日本代表がまともに試合をできず、収入が激減。それでも巨費を投じてトレーニング施設(千葉市)を新設し、協会の収支は赤字に転落。その穴埋めのため、都内の一等地にある自社ビルを手放すことになった。(元会長の)川淵三郎さんもガッカリしていたよね。

ハード面への投資は決して悪いことだとは思わないし、そもそも財政の悪化の責任がすべて彼にあるわけじゃない。それでも一般の会社のトップであれば、世間にもっと厳しい評価をされていただろう。

肝心の代表チームの強化についても、一昨年のカタールW杯でドイツ、スペインに勝ったけど、結局、ベスト8には進めなかった。

強化スタッフの人事に関して「なるほど」というものも少なく、代表人気の低下も指摘される中、海外組をはじめとした選手個人の頑張りでなんとか持ちこたえてきた印象だ。そのほか自国開催の東京五輪でもメダルを逃し、なでしこも世界で勝てなくなった。

また、指導者のライセンス制度、選手の登録制度などについての問題提起がされたときには、「そのとおり」と聞く耳を持つけど、実際に何かを変えるまでには時間がかかったり、腰が重かったりもした。

悪くはなかったけど、"こなす"仕事が多かったかな。

さて、宮本新会長はまだ47歳と若い。知名度も高い。彼にはやってほしいことがたくさんあるよ。

財政再建はもちろん大事だし、サッカー人気回復もそう。例えば、ヒデ(中田英寿)や(中村)俊輔、先頃現役を引退した(小野)伸二など、自身が現役時代に一緒にプレーした人気者たちを巻き込んでくれれば面白くなるよね。

また、年齢の近いJリーグの野々村芳和チェアマン(51歳)とも良い協力関係を築いてほしい。海外経験や語学力を生かして、FIFA(国際サッカー連盟)やAFC(アジアサッカー連盟)における日本の発言力を取り戻すことにも期待したいね。

とにかく、宮本新会長には日本サッカーの新しい顔として積極的に表に出てほしい。

昨年の会長立候補時には協会の理事会向けにマニフェストを発表しているものの、その内容は世の中にまるで伝わっていない。先日の就任会見も残念ながら、あまり話題に上らなかったね。でも、今後も「俺はこれをやるんだ」とわかりやすくアピールしていくしかない。

注目度アップのため、次は2002年日韓W杯時と同じマスクを着けて登壇してもいいんじゃない? それはクールな俺のキャラクターじゃないとか言っている場合じゃないよ。まあ、それは冗談にしても、思い切り頑張ってほしいね。

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