円安もなんのその。プロ野球各球団は今季、総勢47人の新外国人選手を獲得した。しかも実績だけでなく、技術的に見ても日本で力を発揮しそうな"当たり助っ人"候補が例年以上に多い! マジで優勝争いのカギを握りそうな彼らの実力を、プロの評論家やスコアラーがガチンコ査定します!
■左右のスラッガーに好選手がそろった
今季、各球団に新たに所属する外国人選手は47人(育成契約や国内移籍、復帰も含む)。おそらく過去最多だ。キャンプ、オープン戦と分析のために各地を回るパ・リーグ某球団の先乗りスコアラー(次の対戦カードの相手チームを分析する役職)が言う。
「今年は多くの球団に高評価をつけられる選手がいます」
まず野手陣、活躍が期待できそうなAランク(5段階評価の一番上)の顔ぶれから。
実績ナンバーワンの巨人・オドーアは開幕直前に電撃退団してしまったが、各球団で打撃部門の指導者を歴任したプロ野球評論家の伊勢孝夫氏は、外国人打者が日本球界で活躍するための条件を、「ひとつは変化球への技術的対応力。もうひとつは、打撃フォームを修正する柔軟な思考」だと指摘。パ球団のスラッガー、西武・アギラー、日本ハム・レイエスを高く評価しているという。
「ふたりの共通点は、パワーがあってもむやみに引っ張らない賢さ。ボールを引きつけ、センターから右方向に向けてバットを出せる。これは選球眼がいいからできるテクニックで、日本の投手の変化球攻めにも対応できます。慣れてきたらかなり活躍しそうなタイプですね」(伊勢氏)
メジャー10年で114発のアギラーは身長190㎝、体重は両リーグ最重量の125㎏だが、一塁守備も上々。現役ナンバーワン遊撃手のチームメイト、源田壮亮も「グラブの角度、柔らかいハンドリングが勉強になる」とベタ褒めだ。
さらにチーム関係者からは、「トス打撃の練習が終われば、裏方さんと一緒にボール拾いをする腰の低いメジャーリーガーです(笑)」との声も。
レイエスも196㎝、120㎏の大型選手。メジャー時代は対大谷翔平(現ドジャース)が8打数4安打、対前田健太(現タイガース)が4本塁打と、日本人投手からよく打っており、「日本ハムがDeNAとの獲得競争に勝った」(セ某球団スコアラー)のだとか。
また、アメリカ時代から日本食が好きで、「食べた日に本塁打を打つことも多く、縁起を担いで毎週1回は食べていた」(本人談)というから、生活面でも心配なさそうだ。
一方、Bランクには渋い実力派がいる。広島のレイノルズはクセのないスイングで、変化球にも対応できている。
「バットコントロールが良くて三振が少なく、穴も少ない。ただ、広島は外国人選手に4番としての活躍を期待しているはずで、長打力は物足りない気もしますが」(伊勢氏)
さらに伊勢氏は"大穴"として、日本ハムのスティーブンソンを挙げた。
「1、2番か7番あたりを打つ左の中距離打者で線は細い。ただ頭の良さを感じます」
例えば第1打席に変化球で凡退すると、2打席目にはその球種を狙ってヒットにするなど"野球ID"の高さを感じさせるという。ちなみに昨季は3Aで打率3割1分7厘、そして44盗塁と足もある。
「下馬評は高くないし、本塁打を量産するタイプでもないですが、面白い存在だなと印象に残っています」(伊勢氏)
■先発もリリーフも右投手が豊作
投手のAランクは、まず阪神のゲラ。2018年にパドレスで遊撃手としてメジャーデビューした後、投手に転向した異色の経歴だ。野手出身だけにフィールディングはお手のもので、辛口の岡田彰布監督も「牽制うまいな。バント処理とか全然問題ないよ。注文つけるとこない」と絶賛。
野球評論家の野村弘樹氏はこう解説する。
「とにかくボールが高めに浮かないのが魅力で、ストレートはもちろんツーシーム、カットボールなど変化球も低めに集める。当初は7回あたりを任せる構想だったようですが、抑えも十分に務まります」
岡田監督も、「後ろ(抑え)で十分投げられると思う。昔みたいに固定じゃないから」と、"日替わり守護神"プランを明かしている。
ちなみに昨年のWBCにはパナマ代表として出場。趣味は自転車で1日50㎞走る日もあったといい、下半身の安定はそのたまものか?
Aランクにはほかにも、野村氏が高く評価する投手たちがずらり。DeNAの先発右腕ジャクソンは、帽子から元気にはみ出す長髪とボリューム満点のヒゲが印象的だ。「ちゃんと毎日洗ってるよ。水洗いで」とは本人談。
「ストレートが見た目以上に速く、かつ強い。チェンジアップも良く、特に右打者相手に効果的ですね」(野村氏)
広島のハッチは最速157キロ右腕。メジャーではリリーフだったが、今季は先発で期待されている。趣味は山登り。
「チェンジアップ、カットボールはカウント球にも決め球にもなる変化球。剛球という感じではないけれど、先発ローテーションを守って堅実に勝ち星を積み上げるタイプに感じられます」(野村氏)
ハッチに関しては日本ハム、そして韓国球団との獲得競争もあったようだ。「課題と見られていたクイックも修正済み。目立つ欠点がなくなりました」(セ某球団先乗りスコアラー)というから要チェック。
巨人との競争の末にオリックスが獲得したというマチャドは、WBCベネズエラ代表でメジャー通算137登板の経験豊富なリリーフ右腕。速球は平均球速155キロで、145キロ前後のチェンジアップもあり、緩急でゴロに打ち取るタイプだ。
「安定感がありますよね。中嶋聡監督は7回か8回を任せる構想のようですが、うってつけです」(野村氏)
そしてもうひとり野村氏が「不気味な存在」として名を挙げるのが、西武のアブレイユ。昨季はヤンキースで45登板の右のリリーバーだ。
「まだそれほど話題になってはいませんが、昨季は最速163キロを計測したとか。右打者の内角に食い込むシンカーが良く、制球力もあって低めに集められる。西武は中継ぎ陣がそろってきたので、もしアブレイユを抑えに使えるようなら、パ・リーグの勢力図に異変があるかも」(野村氏)
また野村氏は、日本で活躍する投手の条件をこう語る。
「第1に、やはりコントロール。少々速くても、日本の打者はボール球にはなかなか手を出さないし、逆に驚くほどの球速がなくとも、キッチリ制球できればなかなかヒットにはできない。第2は変化球の精度。球種はなんでもいいので、軸になる変化球がひとつあれば、あとはキャッチャーがリードしてくれます(笑)」
■実力は証明済みの国内移籍組
近年の例にもれず、外国人選手の国内移籍も活発だ。クビになって他球団が獲る場合もあれば、契約切れにつけ込んで"強奪"する場合もあるが、日本でのプレー経験があれば、首脳陣としてもある程度計算が立つ。昨季パ・リーグ本塁打王になったロッテのポランコも、その前年に巨人をクビになった選手だ。
似たようなパターンが期待されるのが、DeNAからロッテに移ったソト。
「3月に入ってから来日し、オープン戦終盤で初出場していきなり本塁打。これは日本の投手の攻め方をわかっているからです。気になるのは、パ・リーグのパワー系の投手たちにどこまで対応できるかですね」(セ某球団先乗りスコアラー)
そのロッテからオリックスに移ったのは、先発右腕のカスティーヨ。
「与四死球率がすごく低いのが魅力。スタミナに不安がありますが、登板間隔を開けて"投げては抹消"を繰り返してゆったり使えば、6回くらいまでなら十分に抑えられる能力はあります」(パ某球団先乗りスコアラー)
楽天のポンセは、昨季まで日本ハムに2年間在籍。22年にはノーヒットノーランを達成した剛腕だが、昨季は故障もあって10登板にとどまり、契約がまとまらず退団した。
「故障がちで、年間150イニングも投げられるとは思えない。ただポテンシャルは高く、特にソフトバンク戦に強かったのが印象的ですね」(パ某球団先乗りスコアラー)
今季はほかにも注目選手が多数。チームを優勝に導くのは誰だ?
*評価は上から順に[A・B・C・D・E]の5段階。支配下登録は「戦力度」、育成は「将来性」を評価
*年齢は今季開幕時点 *年俸は推定 *特別な表記のないコメントは同じリーグの球団に所属する先乗りスコアラーの寸評