昨季後半戦は防御率1.36と圧巻のピッチングを披露した赤星。今季は中継ぎとして開幕を迎えた 昨季後半戦は防御率1.36と圧巻のピッチングを披露した赤星。今季は中継ぎとして開幕を迎えた
春季キャンプからオープン戦まで、約2ヵ月の準備期間を経て、待ちに待ったプロ野球の新シーズンがついに開幕。優勝を目指して戦う各球団の最新事情や気になるトピックを野球評論家のお股ニキ氏と共に総ざらいしよう! 今回は読売ジャイアンツ、東京ヤクルトスワローズ、中日ドラゴンズの3球団だ。

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【読売ジャイアンツ】常勝軍団復活を目指す"阿部野球"の神髄とは!?

阿部慎之助新監督の下で臨む今季、お股ニキ氏は「長期政権だった原辰徳前監督時代の"萎縮"が払拭できるはず」と予想する。

「結果を求められるあまり、昨季までの巨人は萎縮したプレーが多かった。ただ、阿部新監督になったことで、投手陣の場合、『逃げて四球を出すくらいなら、思い切ってど真ん中ぐらいの気持ちで投げよう』という前向きな姿勢の浸透を感じます」

また、トレード移籍などオフの動きが活発だった巨人。お股ニキ氏も「アダム・ウォーカーという犠牲は払ったものの、弱点のブルペンを整備できたのは大きい」と語る。しかし、だからこそ、起用法では気になる点もあるという。

「昨季後半戦に防御率1.36で12球団1位の投球を見せた赤星優志がリリーフスタート。ソフトバンクから獲得した高橋礼も好調ですが、先発だと左打者を並べられたりするので、牧田和久(元西武ほか)のようにリリーフ待機が適任。役割が逆な気がします」

野手に目を転じれば、門脇誠のショート定着により、坂本勇人(はやと)を三塁、岡本和真を一塁に固定できるようになり、バランスも向上。さらに新人選手の台頭も期待できそうだ。

「オープン戦打率4割のドラフト3位、佐々木俊輔はキャンプでひと目見ていい選手だとわかりました。また、4位の泉口(いずぐち)友汰は吉川尚輝の尻を叩く存在として適任。投手陣も菅野智之の復活が期待でき、充実の顔ぶれ。阪神の対抗馬として最有力だと思います」

【東京ヤクルトスワローズ】"タイムリー欠乏症"も......ヤクルト打線はつながるのか!?

オープン戦では46イニング連続で適時打が出ず、"タイムリー欠乏症"と揶揄(やゆ)されたヤクルト。

しかし、お股ニキ氏は打線の軸である村上宗隆の状態について、「決して悪くない」と評価する。

「今季は見る限り復活しているので、昨季のようなスランプはないはず。.301、38本は期待できそうな打ち方です」

その村上と共にお股ニキ氏がキーマンに挙げるのが、昨季51試合の出場に終わった塩見泰隆だ。

「塩見が50試合しか出られないのか、120試合以上出られるのかによって、チームの順位は大きく変わります。ケガしがちなので、センターではなくレフトで負担を減らすことも考慮したいが、外国人やオフに補強した西川遥輝(はるき)にベテランの青木宣親(のりちか)らがいて難しいです」

ヤクルトのキーマン、塩見。出場試合数によってチームの順位が大きく変わる存在だという ヤクルトのキーマン、塩見。出場試合数によってチームの順位が大きく変わる存在だという
塩見の状態も注目だが、同様に故障しがちなのがヤクルト投手陣だ。

「本来、開幕投手は小川泰弘に任せたかったが、肘の違和感で出遅れ。そもそも、この20年ほどのヤクルト開幕投手は8割が小川か石川雅規。つまり、このふたり以外の先発投手が台頭していないのが問題です」

それでも、「ケガさえなければ強い」というのがヤクルトの特色だという。

「5位、6位を争ったかと思えば、主力のケガが少なければリーグ連覇もしてしまう。波が激しい分、勢いに乗ると手がつけられず、他球団からすると厄介な存在だと思います」

今年の"ヤクルトガチャ"の目はどう出るのだろうか。

【中日ドラゴンズ】オープン戦優勝! 今年こそ12年ぶりCS進出なるか!?

ソフトバンクと同率ながらも、「21年ぶりのオープン戦優勝」という結果を残した中日。2年連続最下位からの脱却、そして12年ぶりのCS進出はあるのか?

「オープン戦のチーム防御率は1.97。以前から言っているように投手陣は本当にいいんです。エース候補の髙橋宏斗は山本由伸(ドジャース)の影響を受けすぎて逆にフォームを崩してしまう誤算はありつつも、大野雄大は戻ってくるし、柳裕也と涌井秀章の状態も良さそう。そして、なんといっても、昨季32セーブ、防御率0.39の絶対的守護神、ライデル・マルティネスがいる。彼はMLBでも抑えができるレベルで、後ろは万全です」

オープン戦でバンテリンドームの5階席に放り込んだ細川。「20本以上は打つ」(お股ニキ氏) オープン戦でバンテリンドームの5階席に放り込んだ細川。「20本以上は打つ」(お股ニキ氏)
打線では巨人から加入した中田翔が大きなトピックだが、打線の軸となるのは、昨季、現役ドラフトで加入してブレイクを果たした細川成也だ。オープン戦では一時、出塁率、長打率、OPSで12球団1位(最終的には打率、本塁打も含めてすべて2位)につけるなど、今季も好調のようだ。

「阪神とのオープン戦ではバンテリンドームの5階席に特大弾を放り込んで度肝を抜きました。あれだけ飛ばせるパワーがあるのはすごい。今年も20本以上は打つでしょう。中田も加わって、間違いなく打線に厚みが出ました。その中田にも10本以上は期待したい。30歳になった高橋周平の状態も久しぶりにいいです。中日は昨季がひどかった(12球団ワーストのチーム本塁打数71本)だけに、今季は上がり目しかないですね」

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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