岡本和真(読売ジャイアンツ/内野手) 「今年4月の岡本は鈴木誠也(カブス)の日本時代の全盛期を超えています」(お股ニキ氏) 岡本和真(読売ジャイアンツ/内野手) 「今年4月の岡本は鈴木誠也(カブス)の日本時代の全盛期を超えています」(お股ニキ氏)

前回配信した投手編に続き、今回は野手編をお届け! 今季目覚ましい進化を遂げた野手について、野球評論家、お股ニキ氏が徹底的に分析。過去に何人も「大化け」した選手を言い当ててきた"目利き"は、どんな選手を挙げるのだろうか?

※成績は4月22日時点。

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■MLBでも通用する別格の和製大砲

昨季は、3割打者がセ・パ両リーグで合計5人と過去最少に終わり、「投高打低」の傾向が強まっているプロ野球。「今季は打球が飛ばない」ともささやかれているが、そんな打者受難の時代でも、実力をいかんなく発揮できる猛者は誰なのか?

昨季と比べて、進化やレベルアップ、さらには劇的復活した選手について、現役選手からの支持も厚い『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏に分析してもらおう。前回の投手編に続き、今回は野手のブレイク候補をお届けする。

今季の打者を語る上で、岡本和真(巨人)を外すわけにはいかない。一時は、長打率や得点圏打率、OPSなど打撃9部門でリーグ1位につけるなど、見事な開幕ダッシュ。お股ニキ氏も「すでに球界を代表するバッターですが、昨季からの進化という点で〝大化け〟と言ってもいいのでは」と語る。

「いつも春先に強い岡本ですが、今季はこれまで以上に別格感があります。私は以前から、岡本がMLBに挑戦したらどのぐらい打つか、と聞かれたら、『打率.274、34本塁打くらいは打つ』と答えてきましたが、今年4月の岡本は鈴木誠也(カブス)の日本時代の全盛期を超えています。MLBで通用する日本人野手ナンバーワンだと思います」

大絶賛の岡本に続き、お股ニキ氏が名前を挙げたのは、両リーグ断トツの8盗塁を決めている周東佑京(ソフトバンク)だ。今季は足での活躍だけでなく、打率も一時は3割5分超えで、その後もリーグ上位をキープ。昨季の打率.241と比べ、飛躍の幅は非常に大きい。

「〝大化け〟という言葉が一番当てはまるのは周東ですね。ただ、私は周東が打てない時期も『バッティングもいいから1番で使うべき』と提言していました。とにかく身体能力が素晴らしいんです。

また、守備範囲も桁違いなので、『センターで見たい』と昨季からずっと言い続けてきましたが、今季は開幕からセンターで固定されており、案の定、素晴らしいプレーを見せています。名作野球ゲーム『ファミスタ』でおなじみの〝ピノ〟みたいな守備範囲ですよ」

続いてお股ニキ氏はDeNAのキャッチャー、山本祐大の名を挙げる。昨季は最多勝に輝いた東克樹と共に最優秀バッテリー賞を受賞。3月の欧州代表との強化試合で侍ジャパンのメンバーに初選出された25歳だ。

「独立リーグの滋賀ユナイテッドBCからドラフト9位で入団し、ここまで駆け上がってきたのがまずすごい。守備、打撃、配球、頭脳、ゲームコントロールと、すべてが素晴らしく、私は昨季の東の活躍も、山本が引き出したものだと思っています」

捕手ではもうひとり、まだまだ発展途上ながら注目の選手として、日本ハムの開幕マスクを務めた高卒6年目の23歳、田宮裕涼も挙げてくれた。開幕1週間の時点で打率5割超の固め打ち。その後も打率3割台をきっちりキープするなど、バッティングを売りにする新進気鋭のキャッチャーだ。

「当て感があり、バットコントロールが優れているので、打率が残せています。反対方向にチョコンと当てるバッティングだけでなく、強い打球も打てるようになればさらに良くなる。ただ、配球面ではまだ球数を要してしまっているので、経験を積んで伸ばしていってほしいです」

森下翔太(阪神タイガース/外野手) 「低めのボールをうまく拾える。結果、得点圏でのホームラン、打点が増えます」(お股ニキ氏) 森下翔太(阪神タイガース/外野手) 「低めのボールをうまく拾える。結果、得点圏でのホームラン、打点が増えます」(お股ニキ氏)

スラッガー系では、阪神2年目の森下翔太、広島の中堅、堂林翔太の〝W翔太〟の名前が挙がる。

「今季は両リーグ共にホームラン数が激減するなど、飛ばないボールの影響も明らかなのですが、そのような状況をものともせず、ボールを飛ばす能力を持っているのが堂林です。この感覚は彼特有のものですね。

一方の森下は打率が低い割に、とにかくチャンスに強い。相手ピッチャーはピンチの場面で、得点圏のランナーをかえすまいと、ストレートや変化球を低めに投げることが多いのですが、森下はその低めのボールをうまく拾える打ち方をしているんです。結果として、得点圏でのホームラン、打点が増えます」

実際、森下の打率は2割台前半からなかなか上向かないが、本塁打数、打点数は常にリーグ上位。同点打や決勝打などの殊勲打も多い。

堂林翔太(広島東洋カープ/内野手) 「ホームラン数が激減している状況をものともせず、飛ばす能力を持っている」(お股ニキ氏) 堂林翔太(広島東洋カープ/内野手) 「ホームラン数が激減している状況をものともせず、飛ばす能力を持っている」(お股ニキ氏)

そのほか若手やルーキーで注目の大化け候補としてお股ニキ氏が挙げたのは、巨人の若手2選手、開幕スタメンを飾った新人の佐々木俊輔と、2年目の萩尾匡也だ。

まずはオープン戦で打率4割を記録し、イチロー(元マリナーズほか)のような打撃をするため、〝ササロー〟とも称される佐々木について。

「私自身、巨人の春季キャンプを取材していて、思わず目に留まったのが佐々木でした。まったくノーマークの選手だったため、そのバッティングフォームを見て、『門脇 誠かな?』と勘違いしたほどです。

ファウルの仕方、とらえたときの右中間へのライナー、打球と足の瞬発力、そして、フルスイングなのにボテボテのゴロを打って内野安打にしてしまうところが確かにイチローに似ています。ブレイクとまではいかないものの、かなりいい選手なのは間違いないです」

萩尾匡也(読売ジャイアンツ/外野手) 「谷佳知的な打ち方でもあり、実戦的な選手。守備と走塁に課題はあるものの、佐々木同様に期待度は高い」(お股ニキ氏) 萩尾匡也(読売ジャイアンツ/外野手) 「谷佳知的な打ち方でもあり、実戦的な選手。守備と走塁に課題はあるものの、佐々木同様に期待度は高い」(お股ニキ氏)

一方の萩尾は、慶応義塾大学時代に東京六大学で三冠王を獲得。ドラフト時にもお股ニキ氏が高く評価していた選手だ。

「谷 佳知(元巨人ほか)的な打ち方でもあり、実戦的な選手。投手が投げるスラッターなどの半速球を引っかけながらも飛ばすことができる。まだ線は細く、守備と走塁に課題はあるものの、佐々木同様に期待度は高い選手です」

■飛ばないボールでも対応できる巨漢と技

続いて外国人選手の大化け候補を見ていこう。

まずお股ニキ氏が挙げたのは、オリックスの2年目、レアンドロ・セデーニョ。もともとは育成契約でオリックスに入団し、昨年5月に支配下契約。昨季は9本塁打に終わったが、2年目の今季は早くも5本塁打を記録するなど、パ・リーグの本塁打ランキングで堂々の1位。打率、打点も上位につけている。

「ストレートを仕留める力が素晴らしいのに加え、194㎝で118㎏とすさまじい巨体です。これくらいの巨漢でないと、今季のボールはなかなか飛ばない、という見方もできます。

実は昨季も瞬間的にはけっこう打っていたバッターで、この調子が続くのか、どこかのタイミングでブレーキがかかるのか、しっかり見定めたいところです」

外国人選手ではもうひとり、ヤクルトの4年目、ドミンゴ・サンタナの名前も挙がった。

「ボールがここまで飛ばないシーズンでなければ、反対方向に本塁打を量産するネフタリ・ソト(ロッテ)の全盛期のような姿もありえた、と思うほどいい状態です。本塁打にならないにしても、丁寧にコンタクトしているので打率が残せます」

実際、サンタナは今季1号が出るまでに70打席を要したが、打率に関しては同僚の村上宗隆と並んでリーグ1位。これまでも安定していた打棒がさらに爆発するのか注目だ。

■順位にも影響する復活組の活躍

最後に、昨季の不調や不遇を覆す〝復活系〟の注目選手を見ていこう。

当然、気になるのはFAでソフトバンクに移籍した山川穂高だ。昨年5月以降、1軍公式戦ではバットを振っていなかったブランクもどこ吹く風。打率は2割台前半ではあるが、4月13日の古巣・西武戦では「プロ野球史上ふたり目の2打席連続満塁弾」を放つなど、打点は独走状態だ。本塁打数でもリーグ2位につけている。

「ブランクに対して不安視もされていましたが、昨秋のフェニックスリーグでの状態を見て、ソフトバンクも『大丈夫』と判断したはず。開幕直後はさすがに力みもありましたが、西武戦でついに爆発。開幕前の時点で『打率3割、40本塁打』と予想していましたが、それだけの能力は間違いなくあります」

ソフトバンクには、ほかにも復活の期待がかかるバッターがいる。巨人から移籍してきたアダム・ウォーカーだ。オープン戦では本塁打王(5本)と華々しく活躍したものの、開幕後はなかなか当たりが出ていない。そんなウォーカーをお股ニキ氏はどう見るか?

「巨人時代から打撃とフィジカルは高く評価していました。DH起用で守備の不安がなくなるのだから、本塁打は相当増えるはず。

気になるのは打順です。変化球にもろい面もあるので、後ろのバッターが甲斐拓也や海野隆司になる7番ではなく、6番・DHにしたほうがストレート勝負も増え、30発以上も期待できるでしょう。

また、足も相当速いので、試合終盤でお決まりのように代走を出すのではなく、打席数を増やしてほしいですね」

もうひとり、ソフトバンクからは32歳の中堅、今宮健太の名前も挙がった。

「今季は調子がいいです。彼のように瞬発力と技術のある選手のほうが、今年のボールには対応できます。問題は体が1年間持つかどうか」

同じタイプとしてヤクルトの5年目、長岡秀樹の名前も挙がった。一昨年はゴールデン・グラブ賞を受賞するなどブレイクしたが、昨季は打率.227。本塁打数も一昨年の9本から3本に減少していた。

「以前から『ポテンシャルを評価される吉川尚輝(巨人)よりもさらに上の打撃』と評価していましたが、昨季は苦しみました。ただ、今季の打ち方は本当にいい。今年のボールでも打率3割、10本塁打くらい打てるバッティングをしています」

そして、復活組のトリを飾るのは巨人から中日に移籍した中田 翔だ。

「打撃自体は、昨季も一昨年もけっこう良かったんです。ただ、巨人軍の過剰な結果主義、併殺打への恐怖から、強振して併殺するよりも、当てにいったライトフライで安堵の表情を浮かべることが増え、スイングを崩していきました。その精神的呪縛が中日移籍で解かれれば、いい方向に働くかもしれません」

確かに、下半身の張りで開幕早々に数試合欠場したにもかかわらず、リーグ5位、チーム最多の10打点を記録。元パ・リーグ打点王の打棒をしっかり発揮している。得点力不足に悩む中日にとって、これほどうれしい補強はない。

「何かと批判されがちな立浪和義監督ですが、昨季ブレイクした細川成也に続き、中田も自らの鶴の一声で獲得して復活。さらに、今季は高橋周平も30歳にしてようやく充実の状態。彼ら復活組でクリーンナップをつくった手腕は評価すべきです」

その高橋が負傷離脱するまでは中日が首位をキープ。まさに、復活系野手の活躍次第で順位が変わることが証明されたともいえる。

まだ開幕して1ヵ月余り。野手の本領が発揮されるのはこれからだ!

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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