プロ野球の外国人助っ人に対するイメージが変わったのはいつの日のことでしょう。はるか昔の外国人選手のイメージを聞くと、「守備は怠慢だけど、打撃は当たれば飛ぶ」といったイメージがあったファンが多いようです。
しかし現在では、ほとんどの外国人選手が内野ゴロでも1塁まで全力疾走します。これはある意味で、日本に来る助っ人たちが一流選手ばかりである証拠と言えます。
というのも、海の向こうのメジャーリーガーたちも常に全力でプレーすることを求められているからです。怠慢なプレーは、すなわち自分の身分を脅かす愚かな行為です。
かつてはメジャーと日本のプロ野球のレベルに差があり、手を抜いてもある程度通用する外国人選手もいたのかもしれません。しかし、日本の野球が世界でもトップレベルであることが証明された現在では、「手を抜く」という行為がなくなったと考えていいでしょう。
4月30日の巨人戦では、我がヤクルトのドミンゴ・サンタナ選手が2安打3打点と、MVP級の活躍を見せてくれました。その2日前の試合で、自らのまずい守備から失点を許したことを反省し、守備の練習にも一生懸命取り組んでいたそうで、首脳陣はサンタナ選手にとてもいい印象を抱いているようです。4番の村上宗隆選手が警戒され、四球などで塁に出た後にサンタナ選手が5番に控えているのは、まさに脅威でしかありません。
村上選手を挟み、3番に座るのがホセ・オスナ選手です。メジャー時代は高めのボールが得意で、"当たれば飛ぶ"ハイボールヒッターでした。ただ、低めが苦手で、日本の野球に対応できるか疑問符がついたそうです。しかしプロ野球に順応し、どんな球も打ち返す巧打者になりました。
オスナ選手とサンタナ選手は、入団の初年度(2021年)から大車輪の活躍を見せ、チームの2年連続リーグ優勝に大きく貢献しています。
サンタナ選手はマリナーズ時代、イチロー選手とチームメイトでした。2019年3月に日本で行なわれたメジャーの開幕戦で、サンタナ選手のライトに飛び込む満塁ホームランを目の当たりにしたことを思い出します。
サンタナ選手とオスナ選手は、なぜ日本に来たのか。メジャーには「ルール5ドラフト」という制度があって、簡単に言えば「マイナーリーグの選手を対象にした現役ドラフト」なのですが、チームが有望な若手をプロテクトするために、年齢が上の選手を放出することがあります。ふたりはメジャーでも実績がある選手だったのですが、そういった事情もあって活躍の場を日本に移したのでした。
「オスナ、村上、サンタナ」と続くヤクルトのクリーンナップは脅威以外の何物でもありませんが、なぜオスナ選手とサンタナ選手は日本野球にこれほどフィットしたのでしょう。ファン目線からの憶測でしかありませんが、ふたりが同時に来日したことも大きいのではないでしょうか。
個人的には「陽気なサンタナ選手」「真面目なオスナ選手」というイメージがあるのですが、ふたり仲良くスターバックスのカップを手に、神宮球場に向かって歩く姿を何度か見かけたことがあります。とても仲がよさそうに談笑していたのが印象的でした。気が合う仲間がいたからこそ日本でも不便がなく、切磋琢磨しながらすばらしい成績を残していると考えると納得がいくのです。
ヤクルトが、こんな"優良助っ人"を同時に獲得できたことは奇跡としか言いようがありません。来日当時のふたりの推定年俸は8000万~1億円ほどとリーズナブルで、それでいてどんな試合でも全力を尽くすふたりには、今日も足を向けて寝ることができませんね。
来日4年目のシーズンを送るふたりは、すでにヤクルト史に残る偉大な助っ人です。今の願いは、1年でも長くヤクルトで活躍してもらうこと。考えたくもありませんが、日本で活躍できることがわかったふたりを"お金持ち球団"に持っていかれないように、今日もヤクルトを飲んで、小さな応援を続けたいと思っています。
みなさんの好きな助っ人外国人選手も教えてくださいね。それでは。
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン